オンラインでのブランディング施策の効果は、どのように可視化し、評価していくべきか | EC業界ニュース・まとめ・コラム「eコマースコンバージョンラボ」
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2018/01/10

オンラインでのブランディング施策の効果は、どのように可視化し、評価していくべきか

オンラインでのブランディング施策の効果は、どのように可視化し、評価していくべきか

 

一般的には、実店舗よりオンラインの方が各種データが精緻に残るため、成果確認は行いやすいとの認識が広がっている。しかし、オンラインで行うブランディング施策についてなかなか直接的な成果の確認が出来ず、予算化に手間取るなど施策自体が進まないケースも多い。実際には企業や商品のブランディングにおいてオンライン上の各種施策は非常に重要な施策なのは十分理解されているにも関わらずだ。そこで今回は壁にぶつかりやすいオンラインでのブランディング施策の効果を可視化し評価するための方法を考えていきたい。

 

※当記事はECサイトをブランディングするためのサービス「FRACTA NODE」を提供するフラクタ社から情報提供を受け、オンライン上でのブランディング施策を可視化するための方法論の一部を解説した記事である。

 

 

オンラインでのブランディング施策が可視化しにくい原因

 

ブランディングとは、継続的かつ長期的な施策であり、ブランドを市場で確立するための活動である。顧客が、「このブランドなら必ず良いものが見つかる」「このブランドなら間違いない」と感じるように、顧客にブランドに対する信頼と認知を高めていく活動となる。信頼関係を築きファンになることによって、顧客の自然な共感がオンライン上で表現され拡散されていくことになる。

このようなブランディング施策はECサイトにとって非常に重要なものである。いろいろな店舗を見ながら商品を手に取り比べることのできる実店舗と異なり、ネット上はたくさんの情報の中から取捨選択する必要があるため、選ばれるためには強いブランド力が求められるという側面もある。また、最近では実店舗で購入するための下調べとしてECサイトで検索する人も増えており、ECサイトの雰囲気がそのままブランドイメージへと繋がることもあり、売上に直接関わってくる大切な接点となってきている。

このようにオンライン上でのブランディング施策は重要なのだが、ブランディング施策の効果を可視化することは非常に困難だ。それは人がこのような良い体験や良い感情を持ったということを数値化することが難しいからだ。顧客が購買行動において体験したことや感じたことを、実店舗であれば店員が肌で感じとることができるが(もちろんその数値化も難しいが)、ECサイトではそうはいかない。顔が見えない顧客が、ブランディング施策に対しどのような反応をしているかは、非常に可視化しにくいのである。

 

 

オンラインでのブランディング施策の効果を可視化する3つのポイント

 

では、一体どうすればブランディング施策を可視化することができるのだろうか。可視化には3つのポイントがある。

 

どの数値を重視するかをはっきりさせること

1つ目は、どの数値を重視するかをはっきりさせることである。デジタル領域では、さまざまな数値を手に入れることができる。例えば、インターネットでの検索回数であったり、ECサイトの閲覧回数、SNSでのシェア率や、動画の再生回数など、非常にバリエーションが多い。このようにたくさんの情報を手に入れることはできるが、実際にどの数値を重視するかによって、施策も変わってきてしまう。

重視する数値はカスタマージャーニーマップを使うことである程度クリアにすることが可能だ。カスタマージャーニーマップは、顧客が購入に至るまでの流れを時系列に沿って表したもの。カスタマージャーニーマップを作り、顧客の思考や行動を理解することによって、自社のブランドにおいて、自社の商品において必要な数値というものを明らかにすることができる。例えば、店舗に訪れる前に事前にECサイトで商品を調べてからくる顧客が多いというカスタマージャーニーマップであった場合、ECサイトのコンテンツに実店舗の情報を多く載せる、といったものだ。このように、どの数値を重視すればよいかを考えることによって、ブランディング施策の効果を可視化し、ブランディング施策を見直すきっかけになる。

 

顧客の体験や感情を数値化

2つ目は、顧客の体験や感情を数値化することだ。とはいえ、人の体験や感情を数値化することは非常に難しい。しかし、体験や感情を数値化することによってブランディング施策の効果を可視化することができるということは確かである。そこで利用されているのが、「ブランドリフト計測」という方法である。ブランドリフト計測とは、ブランディング広告に触れた顧客と、触れていない顧客を比較し、認知度であったり、好感度、商品の購買意欲といったようなものを数値として表す計測である。最近では、YouTubeにおいて動画視聴者に対し短いアンケートが行われているのは、知っている人も多いだろう。これは、キャンペーン中に広告を表示していた視聴者と、表示していなかった視聴者を比較するアンケートであり、まさにこれがブランドリフト計測なのだ。しかし一方でブランドリフト計測を行わなくても、様々な仮説をもとに顧客の体験や感情を数値化する取り組みを行っていく企業が多い。この数値化という作業は、どのような手法で行うにせよ、企業が顧客にどのように求められているのかというものをしっかりと紐解くことで実現することが出来るようになる。

 

結果以外の指標を大切にする

3つ目は、売上という結果はもちろん大事だが、ブランディング施策ではそれ以外の指標も大切にしていくことが重要だ。データが限られるアナログ領域であれば、取得できる数値といえば売上くらいなもので、そのため売上が伸びれば施策成功、伸びなければ施策失敗と考えられてしまう傾向が強い。売上以外の情報を手に入れようと思っても、「来て下さったお客様には満足していただけました」といった曖昧な情報しか得ることができない。

しかし、デジタル領域においては売上が伸びなかったからといって、ブランディング施策が失敗だと言い切ることはできない。ブランディングというものは人の感情に影響を与えているため、様々な行動に変化を及ぼしていくからだ。そのためデジタル領域では、売上に変化はでていなくても、「ソーシャルメディアからの流入が増えた」「販売数は伸びなかったが顧客の滞在時間が増えたため、今後伸びる可能性が考えられる」といった予想を立てることができるのだ。売上以外の結果を見ることで、今後のブランディング施策を検討することができるようになるのは非常に大きい。

 

このように、オンラインにおけるブランディング施策の可視化は、ポイントを押さえて行うことで可能となる。しかし一方で少し矛盾する部分もあるが、デジタル領域はさまざまな数値を手に入れられるからといって、数値に左右されすぎないことだ。このブランディング施策を行ったからこのように数値が変動した、と決めつけてしまってはいけない。数値の変動はさまざまな要因が考えられるため、数値は成果を見る一つの材料、というくらいの気持ちで扱うことが大切である。

 

 

効果の可視化事例

 

ブランディング施策の可視化は、プロジェクトの成否を左右すると言ってもいいだろう。ここでは、ブランディング施策の効果の可視化により、プロジェクトが円滑に進み、成果を挙げることに成功した事例を見ていこう。

※宣伝会議発行、株式会社フラクタ著「ECサイト×ブランディング」のP174~198を参照し当セクションは作成しています。

 

ツインバード

ツインバード工業株式会社は主に家電機器や照明機器を製造、販売するメーカーだ。1951年に新潟県でメッキ加工の下請け業者として誕生し、家電メーカーへと変貌を遂げ、現在に至っている。「ツインバード」という社名には、「商品をお使いになるお客様と商品を創る私たちが常に一対の鳥でありたい」という気持ちが込められているという。

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ツインバード工業株式会社のオンライン施策では、ブランディング施策の効果の可視化にあたり、2つの考え方が重要な役割を持ったという。

1つ目は、各オンライン施策においてどの数値が重要かをはっきりさせたことである。ツインバード工業株式会社は、以前から顧客の声を製品開発に反映するということを行ってきており、それがツインバード「らしさ」であり、ツインバードの「強み」でもあった。そのため、顧客からの反応を一番の重要な値として定義し共有した。例えばFacebook施策においては、約3万5000人のフォロワーがいるFacebookページにおけるフォロワーのコメント数や内容、さらにはいいねなどの反応を重視。Facebook施策が売上にどの程度貢献したのか、などついつい多くの企業で上層部から指摘を受けるようなことは一切ないという。

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2つ目は、顧客の体験や感情を可能な限り数値化し、公表していくことを重要なことと考えている点だ。ツインバード工業株式会社は、「ツインバード日本橋ゲートオフィス」という体験型のショールームにおいて商品体験会やファンイベントを行っている。そのファンイベントにこれだけの人が来てくれたという体験、そして数値的なデータをまとめたレポートを、ECサイトでコンテンツとして公開している。こうすることによって、顧客に対しても社内に対しても、ブランディングの効果を訴求している。

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ツインバード工業株式会社は、ブランディングを考える以前も顧客との繋がりを非常に大切にしていた。そしてこのオンラインでのブランディング施策を実践する際に、その自社の強みに気づき、それをECサイトに反映、施策を可視化し再び対策を練るという流れにより、より明確にブランディングすることに成功したのだ。

 

春華堂

春華堂は、1887年に創業し、長年に渡って愛される老舗お菓子メーカーだ。静岡県浜松市の定番のお土産である「うなぎパイ」を製造、販売を行っていることで有名だ。「お菓子の新しい文化とスタイルを発信する、浜松スウィーツ・コミュニティ」ということをコンセプトとした商業施設、「nicoe」や、和菓子ブランドである「五穀屋」、新たなパイブランドである「coneri」など、さまざまなチャレンジを行っていることでも知られる。

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春華堂も、ブランディング施策の効果の可視化には、2つの考え方が重要な役割を持っていたという。

1つ目は、結果以外の指標を大切にする点である。春華堂は、店舗の売上が非常に大きいため、オンラインショップの売上は伸びているとは言えども、店舗にはかなわないものがある。そのため、メディア対応での他部署との連携数や、店舗スタッフによるSNS更新数という指標を重視している。こうすることによって、売上以外の成果をしっかり評価し、ブランディング施策を継続することが出来ている。

2つ目は、どの数値を重視するかをはっきりさせることである。先ほども述べたように、春華堂では店舗の売上が非常に大きい。そのため、ECサイトやデジタル領域の役割は、店舗での売上に貢献するという意味合いも強い。そのため春華堂では、店舗で利用できるポイントの貯まるアプリ「うなぎのばし」の配信も行っている。そして、このアプリのダウンロード数や、ポイント利用状況を重視することによって、オンライン施策がどのように店舗売上に貢献しているのかを可視化している。

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春華堂は、老舗メーカーということもあり、「春華堂らしさ」というものが既に存在していたという。しかし、春華堂の主力商品であるうなぎパイは、実はECサイトでの販売を行っていない。浜松市の定番土産という役割を持っていたり、非常に割れやすく配送が難しいという理由からである。そのため、うなぎパイをECサイトで販売していなくても、「春華堂らしさ」というブランドをECサイトで表現することが非常に重要であった。ブランディング施策の効果を可視化することによって、春華堂らしさを表現できているかを明確に理解することができたのだ。

 

 

オンラインでのブランディング施策の効果を可視化することの重要さ

 

各社の取り組みを見てみると、オンラインでのブランディング施策を行うにあたって、改めて自社の強みを紐解く作業をしっかり行っている。その過程で本当に大切なものや、顧客から求められているものに気が付くケースが多い。あくまでオンラインでのブランディング施策は、その結果を表現することに過ぎないともいえる。自社のブランドの強みをきちんと理解し、ブランドに愛着を持って接し、強みを理解することでよりよい良い施策を打ち出すことができるようになるだろう。

そして、オンラインでのブランディング施策の効果の可視化は、それらの施策を開始し継続するために非常に重要なものだ。上層部だけでなく、担当者も行っている施策が何のために行っているのかが見えなくなると施策の継続が難しくなってくるもの。ブランディングは、人の感情によるものであるため、非常に難しいが、きちんと効果を可視化することで、更なる施策への拡大も見えてくるだろう。さまざまな数値が手に入るデジタル領域だからこそ、何をどのような考え方に基づいて重要な値として可視化していくのかを明確にすることで、大きな成果を生み出すことができるのではないだろうか。