オンラインでオーダーメイド手帳を作成する「ネットde手帳工房」
1月に入り、新たな手帳を使い始めている方も多いのではないだろうか。最近は、ビジネス用のシンプルな手帳だけでなく、有名なキャラクターを用いた手帳や、デザイナーによるお洒落な柄の手帳までもが並べられ、手帳の種類は一昔前と比べると段違いに増えている。しかし、多くの手帳は特定の時期に大量に販売され、開始月も決まっているため、少しタイミングがずれると理想の手帳を手に入れることは難しく、タイミングによっては何ページも無駄になってしまうこともある。このような、「もったいない」を解決し、個人にあった手帳の提供をするのが、ネットde手帳工房だ。
ネットde手帳工房は、キヤノンITソリューションズ株式会社が提供するオーダーメイド型手帳販売サイトだ。いわゆる「カスタムオーダーEC」というカテゴリのサービス。ネット上で自分の好きなレイアウトにカスタマイズしたり、ページを自由に並び替えることができ、ライフスタイル別にサンプル選択が可能。200ページの中で自分に都合の良い月で始まるものを作ったり、1年に限らず、15ヵ月分のマンスリー手帳を作ることも可能。予め、誕生日や記念日を表示させることができるため、自分で手帳に書き込む手間を省くことができる。
今回はBtoBを主事業としているキヤノンITソリューションズがどのような経緯で「手帳」のみを商品としたECサイトを始めるに至り、どのようにサイトを構築したのかを紹介していく。
※ネットde手帳工房サイトに導入されているebisumartを提供する株式会社インターファクトリ―の協力を得て、キヤノンITソリューションズ株式会社にインタビューを実施した。
「ネットde手帳工房」でもったいないをなくす
▲キヤノンITソリューションズ株式会社 セルフデザインECビジネス推進グループ グループ長 小野忠氏
小野氏は、既存の手帳の流通にまつわる無駄をこう解説する。大体の手帳は1年間使うことを前提としている為、開始月は1月か4月のものが多い。また良質な紙が使われるものの、1年間利用されることを前提にした大量生産であるため、売れ残った商品の多くが廃棄されることになるという。その結果、季節物の商品として市場に流通し、個々の要望に応えることが難しい上、ユーザー側、製造側の双方にとって多くの「もったいない」が存在していると感じたという。
一方で、半数以上の人々が手帳に何かしらの不満点を抱えながらも利用しているという結果が出たという。多くの人が、自分の理想に最も近く、個々のライフスタイルや都合に合わせた手帳を手に入れることは難しいものの、我慢しながら現状の既製品を利用しているという状況が浮き彫りになった。
自分のライフスタイルに合わせてデザインして購入できる手帳を売り出せば助かるという人がいるのではないかという思いから、2年半の準備期間を経て、事業を開始した。
手帳市場はここ十年“好調”が続いている
ネットde手帳工房は、特に20代~40代女性をメインターゲットにしている。手帳自体はどのような世代の人からも一定の需要があるものだが、20代~40代女性はいまだに紙に書くことを習慣にしている人も多く、育児と仕事の両立といった多面的な忙しさを持つ世代だからだ。
手帳の良さは開いてすぐに使えることだ。PCやスマートフォンを出しにくい場においても比較的手元に置きやすく、すぐに開いて予定を書くことができる。最近は多くのタイムマネジメントアプリやスケジュールアプリがリリースされているが、デバイスの電源がなければ使い物にならない。また、クラウドで予定を一元管理することも可能なシステムも存在するが、ネットワークがなければ使うことができない。自由にネットワークを利用することができなかったり、電子機器を手元に取り出しにくい環境下においても、手帳ならばペンさえあれば即座に予定を書き込むことができることから、手帳はデジタルデバイスが普及した今でも一定の需要があるのだ。
実は市販の手帳市場はここ十年で著しく伸びている。1990年代までは手帳といえば学校や会社で「支給される物」として認識されていたが、2000年頃を境に「自分で選んで買う物」と消費者志向が変化し、色々なデザインの市販手帳が登場、その出荷量も大幅に伸びているのだ。また、書くという行為が脳に情報を刻み込むことができるという理由から、敢えて手書きできる手帳を選択する人も少なくない。手帳をメモ帳代わりに利用することもでき、手帳の使い方は使い手によって多岐にわたるのだ。
サイト制作は綿密なスケジュール管理で効率的に進行
ネットde手帳工房のサイト作りでは、クラウド型のECサイト構築システム「ebisumart」が利用されており、手帳の購入のためのECサイトと手帳のデザインのための機能を有機的に組み合わせている。ebisumartが選ばれた理由は、ネットde手帳工房のサイト構築に必要なデザインや機能の自由度の要件を十分に満たしていただけでなく、キヤノンITソリューションズ内で構築事例があったこと、そして過去にカスタムオーダーされたシステムと連携を行なった実績があり、今回のような特殊なサイト制作の経験があったことが挙げられる。
オーダーメイドの手帳をオンライン上で作成するというサービスは他社でも事例がなかったことから、参考になるサイトがなく、手帳作成時のユーザーインターフェース設計においては多くの難しさに直面したという。年賀状やチラシは、デザインを作ればそのまま印刷することができるが、手帳はデザインしたものに対して月のデータを差し込む必要があり、うるう年の計算などを含めると複雑な処理が必要なのだ。
ebisumartの豊富な機能の中からネットde手帳工房の今後の事業計画をヒアリングすることにより精査した結果として、ユーザーがカスタマイズした各種手帳パーツの情報を取得、連携を行いカート表示をするカスタムオーダーフローの構築を行なった。
また今回はデザインなどのクリエイティブ領域は別企業が担当したため、連携を取りながら開発を進める必要があった。デザインとカートからの決済フローという、別領域の構築を同時並行的に複数企業で対応するため、双方の担当者を交えて綿密な摺り合わせを行う必要がある。しかしebisumartは大規模案件の実績が多く複数のチームを跨いだ綿密なタスク・スケジュール管理を行い、構築をスムーズに進めていった。
手帳を「選ぶ」ものから「デザイン」するものに
現状、手帳は「売り場にあるものを選んで買う」のが主流だが、手帳を「自分のライフスタイルに合わせてデザインする」ことをスタンダードにしていきたいと小野氏は話す。市販の手帳では、自分にとって不必要なページが多いことから結局手帳を使わなくなったり、多くのページが白紙のままでありながらも、一年たてば新しいものに買い替えてしまうという経験をする人は多く、白紙が多いことで手帳を自らにとって不必要なものだと考えるようになってしまう人もいる。ネットde手帳工房は、数多くのテンプレートに加えて、自らがデザインしたイラストやフォーマットをページにプリントして差し込むことができる。自分のライフスタイルに合うように自由にカスタマイズすることで、使いやすくなるだけでなく、お客様は自分に必要なページだけの手帳を手に入れることができる。
▲手書きデザインページのサンプル
さらに、小野氏は自分のライフスタイルを見直すツールとして手帳が活用されるようにしたいと語る。ネットde手帳工房は、都内のカフェを中心に手帳デザイン体験会を開催している。そこでは、手帳を作る際に自分のライフスタイルを見つめることになる。これは市販の手帳を買うときにしない経験だろう。手帳を作る、ということ自体が自分のライフスタイルを見つめなおす機会となり、それに合わせた手帳作りを自分で行うことで、日々のスケジュール管理を容易に行うことができるようになるのだ。お客様はネットde手帳工房が行う手帳デザイン体験会で、現状に合った手帳作りから、理想の自分に近づく為の手帳作りまで、小野氏を含めた担当者が相談に乗りながら理想を形にしている。
ネットde手帳工房は、今までの手帳に対する認識をがらりと変える。単に手帳をカスタムオーダーするという枠にとどまらず、個々のライフスタイルが重視される今の時代の価値観にあったサービスだといえる。
また、現状提供されている手帳は、A5サイズ・200ページのみとなっている。今後ページ数や紙質、サイズなどを選択できるようにし、真に一人ひとりに100%フィットする手帳作りを目指していきたいと小野氏は熱く語っていた。
ネットde手帳工房も利用した、SaaS型ECプラットフォーム「ebisumart」
「ネットde手帳工房」という新しい手帳サービスを実現するために、キヤノンITソリューションズは様々な企業と協業体制を組み、事業を推進している。その中で受注管理や会員情報といったEC機能部分に導入したシステムが、株式会社インターファクトリーが提供するebisumartだ。累計450サイト以上のユーザーに導入・提供してきた実績を持っている。
あらゆる外部システムと柔軟な連携をすることができる拡張性を強みにもつebisumartは、手帳をオーダーカスタムするために外部システムと連携が必須な「ネットde手帳工房」への導入の決め手となった。どの情報を連携させるべきか、連携させずに運営できるかといった顧客にとって最適なご提案をし、無駄のない連携を実現させている。
システムのカスタマイズを行うことを前提に設計されているため、フルカスタマイズが可能だ。基幹システムや物流管理システム、モール管理システムなど、幅広いシステムとの連携ができる。ebisumartAPIを公開している為、EC関連事業者、パートナー企業などは広い範囲での機能開発が可能だ。ebisumartユーザーは使いたい機能を取捨選択して自由に組み合わせることができ、拡張性がある。
また、クラウド環境のECシステムであるため最新のシステムが提供される。週に1度のアップデートが行われており、ebisumart導入後は継続的に無料でアップデートされ、システムの入れ替えは不要だ。100%クラウド環境である為、突発的なアクセス数増加にも対応。ECコンシェルジュによるサイトやシステム運用のサポート体制も提供している。
※キヤノンITソリューションズの「ネットde手帳工房」は、ebisumartの受注・会員情報システムなどのECに関する機能を導入している。