単品・リピート通販のECサイトにおける理想的なユーザーフローとKPI

 

業務上必ずモニタリングしなければならない指標、いわゆる「KPI」。ECサイト運営の場合、売上高、来訪者数、客単価、コンバージョン率などが主要なKPIとして挙げられるだろう。しかしKPIは、様々な種類のお客様にどのように行動してもらって購入というゴールに辿り着いてもらうのか、という「ユーザーフロー」なしでは語ることは出来ない。ユーザーフローをしっかり定義し、そのフロー上にKPIを設定していくことで、KPIが悪化した場合に適切な改善施策を取ることが可能になってくるからだ。今回はECサイトの中でも最近増えてきている、単品・リピート通販サイトにおけるユーザーフローとKPIについて考えていく。

 

<参考>

【鉄則】ECサイト運用でアクセス解析から確実に売上アップに結びつけるための5つのポイント

 

※当記事はリピート通販に特化したカートASPサービス「リピスト」を提供するPRECS社から情報提供を受け、単品・リピート通販のユーザーフローやKPIの一部を解説した記事である。

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単品・リピート通販のECサイトにおけるユーザーフロー

 

単品通販のECサイトとは、商品数が非常に少なく、場合によっては1商品のみというような品揃えのECサイトのことを指す。そのような商品は大抵の場合、消耗品で継続的に利用することが多い、化粧品や健康食品などが多くなる。そのため、そのような商品を販売するケースでは「定期購入」(リピート購入・サブスクリプションコマース)形式で商品を販売することが多くなってきている。このような単品通販サイトではどのようなユーザーフローが考えられるだろうか。

単品通販の購入までの経路は総合通販とは大きく異り、流入経路のほぼすべてを広告が占める。また、数年前までは最初はサンプル品を申し込んでもらい、その後のステップメール等で定期コースに引き上げるという施策が主流だった。しかし最近では引上げ率の低下に伴い実施されることが少なくなってきている。現在は定期コースの初回に特典を付与し、最初から定期コースを販売する手法が主流となってきている。

しかしこの方法だと、最初からメインの商品を販売していることになる。そのため本当に1商品しか持たない純粋な単品通販のECサイトではそれ以外のアクションは存在せず、一度購入した顧客が再びショップを訪れる必要性はないといえる。このような純粋な単品通販のECサイトにおいては顧客がショップを再訪するのは、解約などの事業者側には望ましくない理由であることがほとんどとなっている。

このように流入経路のほぼすべてが広告であり、顧客のショップへの再訪を望まないというかなり特殊な仕組みを持っているため、純粋な単品通販のECサイトでの理想的な顧客の流れは「広告からLPへ流入→即座に購入→ショップへは戻らないというものになり、それ以降の顧客とのコミュニケーションは同梱物やステップメール、電話といったECサイト上ではない場所で行われる。

 

 

単品・リピート通販のECサイトにおける3つのKPIとその構成要素

 

このようなユーザーフローのため、単品・リピート通販におけるKPIは以下の3つに集約される。総合通販と比較して非常にシンプルで他の選択肢が存在しないと言ってもいいくらいだ。それぞれのKPIとその指標の成否の鍵を握る構成要素を見ていこう。

 

来訪者数

1つ目はサイトへの来訪者数だ。いうまでもなく売上を上げるためには多くのお客様にサイトに訪問してもらう必要がある。総合型のECサイトと異なり、単品・リピート通販サイトへの流入経路は広告がメインとなる。もちろん検索エンジンのオーガニックエリア経由やソーシャルメディア経由などの流入も完全な0ではないものの、単品・リピート通販サイトにおいては、多くを期待できる割合ではないケースが多い。背景には化粧品や健康食品などの単品・リピート通販サイトにFITする商材は、競争が熾烈でソーシャル上のエンゲージメントだけでは成果を挙げにくいことも一因にあるようだ。

このように広告流入がメインとなる単品・リピート通販の場合、「来訪者数」を上げるために必要な構成要素は、広告掲載面の確保量広告からのCTR、という広告的な側面のものがメインとなってくる。広告経由での流入が来訪者数のほとんどを占めることから、広告出稿は目標売上高と同額程度の出稿が目安となる。また広告からのCTRは広告の種類によってもバラツキはあるが、0.2%~2%程度が目安となるようだ。これらの値を維持しておけば、来訪者数も問題ないボリュームを確保できるだろう。

 

コンバージョン率

2つ目はコンバージョン率(CVR)だ。特に単品・リピート通販の場合は、そのユーザーフローからも分かるように、ほぼ一発勝負の色合いが強くなる。1度来訪してもらった顧客は二度とサイトへは戻ってこない、というくらいの覚悟を持ってコンバージョンさせる意気込みが必要になってくる。感覚的には総合通販の場合のコンバージョン率よりも重要度が格段に高くなる。

そのため、「コンバージョン率」を上げるために必要な構成要素はLP(ランディングページ)の質LPと広告とのマッチングというLP周りのものがメインとなってくる。目安としてはリピート通販のLPのコンバージョン率は2%程度といわれている。もちろん各広告媒体経由によっても値は様々だが、トータルでこのくらいの値は目指しておきたいところだ。

 

LTV

最後のKPIはLTV(Life Time Value)だ。LTVは一般的には企業やブランドにとって1人の顧客が生涯にわたってもたらしてくれる利益と定義されるが、単品通販のECサイトの場合、Life Time Sales的なニュアンスで用いることが多い。すなわち、1人の顧客がその単品通販サイトからどれだけの売上を期待できるか、というものだ。一度定期コースを購入した顧客がどれだけ長く継続してくれるか、という部分で非常に重要な指標といえる。

そのため、「LTV」を上げるために必要な構成要素は、受注単価継続率定期コースが購入される割合となる。受注単価の目安はサンプル販売を行っているかどうかによって大きく変わってはくるが、サンプル販売を行っていないケースであれば主力商品の150~200%程度の受注は必須となってくる。また、継続期間は3カ月が最低ラインとなるため、最近では初回から3カ月プランでの契約をオファーし割引を提示するケースが増えてきているようだ。

 

 

売上に大きく影響を与える3つの構成要素

 

単品・リピート通販における3つのKPIとその構成要素、さらにはその目安となる数値について紹介したが、その中でも経験上、特に大きく売上に影響を及ぼす構成要素が3つある。ここではその構成要素のポイントを紹介していく。

 

LPと広告のマッチング

コンバージョン率を上げるために必要な要素であるLPと広告のマッチング。コンバージョン率をしっかり上げていくためには、異なる広告のターゲットに応じて複数のLPを準備する必要がある。広告のターゲットとはデモグラフィックなどではなく、主に顧客のマインドフロー上のステータスが重要となってくる。

単品通販に多い縦長のLPでは、ファーストビュー付近に最初のオファー(申込・購入・お問い合わせボタン等)が設置される。しかし、インタレストマッチなどの広いターゲティングの広告から集客されたユーザーがこの最初のオファーをクリックすることは非常に稀だ。これらのユーザーの多くは初回のサイト訪問で、商品に対する認知がほとんど形成されていないため、まだまだ購入の意思が低い段階のためだ。そのため、このような初回の訪問者向けの広告経由でのLPにおいて、ファーストビュー付近のオファーは意味を持たないといえる。しかし、多くのサイトがこのようなユーザーに対しても無関係に、ファーストビュー付近にオファーを設置し、貴重なファーストビューを無意味に消費してしまっているのが実情だ。

では逆にファーストビュー付近にオファーを設置するべきなのはどのような場合だろうか。最もわかりやすいのはリターゲティング広告経由でのユーザーに対してということになるだろう。この他に商品名による指名検索や、十分に商品の魅力が紹介されている記事広告経由でのユーザーに対してなどでも有効となってくる。すなわち認知が形成され、購入の意思が少しでも芽生えてきているユーザー向けに対してはファーストビュー付近のオファーは有効となる。これらのケースではワンタイムオファーや限定キャンペーンなどの実施も効果が高い。ある美容ドリンクの販売企業では、リターゲティング広告にのみワンタイムオファーを設置することでCVRを40%以上改善することができた。

 

継続率

LTVを上げるために必要な要素である継続率。純粋な単品通販では顧客のショップへの再訪を望まない、と述べたがこれは顧客との接点を0にする、という意味ではない。顧客とのコミュニケーションをWebサイト上で行う必要がないと理解してもらった方がいいだろう。単品通販における顧客とのコミュニケーションは、解約阻止とブランディングを目的として、主に同梱物やステップメール、DMなどで行うことが理想的となる。また、商品パッケージや配送時の外箱といったものもコミュニケーションの一環となるため、定期的に顧客に届ける商品一式には細心の注意を払っていく必要がある。そのような小さいけれども非常に重要な配慮を積み重ねていくことで継続率は改善していく。

 

定期コースが購入される割合

LTVを上げるために必要な要素である定期コースが購入される割合。単品通販のLPでは「定期コース」と「1回のみの購入」の2パターンのメニューを用意することが一般的となっている。しかし、「1回のみの購入」を選択した顧客のほとんどはリピーターにはならないという現実がある。そのため、いかにして最初から「定期コース」を選択してもらうかが重要になる。感覚的には定期コースの割合が70%以下の場合はオファー内容や表示形式に改善の余地があるといえるだろう。

定期比率を向上させるための最も簡単で効果の出やすい施策は、購入確認ページに表示されるアップセルだ。1回のみの購入をしようとしているユーザーにだけ、購入が完了する直前のページでアップセルコンテンツを表示するという施策で、ユーザーにとって有利なオファーになっていれば10~20%を定期に引き上げることができるだろう。

ある美容液を販売するサイトでは、セットと定期の組み合わせで5種類あったオファーを、単発と定期の2種類にまとめ、オファー内容をすっきりさせることでCVRを10%以上改善した。また、スキンケアサプリメントサイトでは、オープン時から1回のみ購入の購入完了直前ページにおいてアップセルコンテンツを実装。定期購入比率は約90%を維持している。

 

 

 

単品・リピート通販のKPIを理解し売上を上げていく

 

通常の総合通販型のECサイトと異なり、単品・リピート通販サイトのKPIは非常に選択肢も少なくシンプルである。しかし、ユーザーのトレンドなどによって何年か経つとユーザーフローが改善され、異なるKPIをモニタリングする必要がある可能性もある。そのため、単品・リピート通販サイトを運営している場合は、限られたKPIをしっかりモニタリングし、そこへ影響を及ぼす構成要素をしっかりコントロールし値の改善を常に目指していく必要がある。何となくここをこうした方がいい、というような施策は大抵あまり本質的ではないケースが多いだろう。また、単品・リピート通販サイトの新しいユーザーフローが導入されていないか、などの最新の動向にも常にアンテナを張っていくことも重要になってくるだろう。

総合通販と異なり、やることが非常に限られてくる部分もあるため、それぞれの施策にしっかり投資と人を集中させ、細かい品質のコントロールを行っていくことが成功の鍵となるのではないだろうか。