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2014/10/24

美容・化粧品通販大手の取り組み - DHC、ファンケル、ドクターシーラボに見る3つの商材特性

美容・化粧品通販大手の取り組み

 

従来の美容・化粧品通販大手各社は、幅広い商品ラインナップと多くのオールドメディアを使った接点でブランドイメージを構築し、売上を上げていた。しかし、ソーシャルメディアの浸透により、消費者が口コミから受ける影響に変化が見え始めた。幅広い商品ラインナップより、昨今ではある1つのエッジの効いた商品がバカ売れするような現象が多くなってきた。ソーシャルメディアを上手に活用することで、今までは勝機の少なかった小さな企業にもチャンスが生まれたのだ。そのような中、オンライン美容・化粧品大手各社はどのような取り組みを行っているのかを見ていく。

 

 

 

DHC

 

1972年の創業以来、化粧品や健康食品、医薬品、海洋深層水などの製造販売、翻訳・通訳事業、出版、教育事業、リゾート、アパレル事業など、幅広く事業を展開しているDHC

 

 

1983年から基礎化粧品の通信販売を開始した同社は、天然成分100%の美容液「DHCオリーブバージンオイル」と、同オイルを主成分とした「DHC薬用ディープクレンジングオイル」の爆発的ヒットにより、90年代半ばに化粧品メーカーとしての確固たる地位を築く。健康食品分野においても成長は著しく、参入後わずか7年で373品目を取り扱う最大手企業に成長。通販健康食品の売り上げナンバー1を達成する。1億7千万食を売り上げた成功率96.5%の「DHCプロテインダイエット」や、「フォースコリー」などのダイエットサポート商品のヒットも記憶に新しいだろう。

2014年7月時点で会員数1,199万人、200以上の国内直営店、1,137億7,900万円(2013年7月期)の売上高を誇るDHC。同社はこれまで通信販売を主体に成長してきた企業として知られるが、一方で今や当たり前となったコンビニエンスストアでの化粧品販売を開始したパイオニアでもある。ターゲットである若年層の購買に圧倒的な影響を持つコンビニというチャネルにフォーカスした戦略は、成功への大きな足がかりとなったのだ。当時DHC商品のブームによって「コンビニコスメ」という言葉まで誕生したが、DHCはのちにドラッグストアや大手スーパーへの販路拡大を図り、さらに多くの化粧品メーカーがコンビニ市場に参入したことで売上は徐々に低迷していく。そこで、化粧品やサプリメント以外の美や健康にこだわった通販商品を導入。コンビニにおける取り扱いアイテム数の拡大に成功した。

ECでの売上拡大にも力を入れており、今年9月には美容・健康情報サイト「オリーブチャンネル」を開設。美容や健康に関する正しい知識を身に付け、より美しく健康になってもらうための情報サイトとして、化粧品や健康食品などに含まれる成分の効果・効能や同社の研究成果、通常は見ることができない生産体制や施設の様子などを分かりやすく紹介している。また、著名人のインタビューを盛り込んだ季節ごとの特集や、お悩み掲示板、診断コンテンツ、体操の動画配信、健康レシピなど、さまざまなコンテンツを用意。今後は毎月第1・第3月曜日に更新していくとしている。

 

 

ファンケル

 

1980年の創業以来、一貫して無添加にこだわった化粧品を提供し続けているファンケルは、無添加素材を前面に出した先駆的な存在として他の自然派・無添加メーカーを牽引してきた。

 

 

「アメリカのように低価格で日常的に使用できる商材を提供したい」という創業者・池森賢二氏の想いから、健康食品がまだ高価だった1994年に高品質で低価格なサプリメントの販売を開始。日本人にとって、健康食品を一気に身近なものにした。さらに1996年からは、現巨人軍の監督である原辰徳氏をキャラクターに起用したり、意識的に「サプリメント」という言葉を使って健康食品につきまとう胡散臭さを払しょくするように努めた。

創業当初から通販で販路を拡大してきたファンケルの年間売上金額は約811億円で、現在はそのうち5割強がECサイトでの売上となっている。会員数は約330万人、メルマガ会員数は約93万人で、1ヶ月当たりのページビューは約1,000万PV。受注件数は約20万件を数える。

一方、通販のショールームとしての役割を念頭に置いて1994年に展開を始めた実店舗も、現在は全国に約170店舗を構えるまでに成長している。このようにファンケルでは、「日々の売り上げよりお客様に喜んでいただくことがすべての基準」を経営理念として「らしさ」を追求してきたが、2010年頃から業績が悪化。2010年3月期の売上高がピークの995億円でそこから下落する。それを受け、同社は2012年3月に大々的なリブランディングを実施。スキンケア商品を皮切りにラインアップを一新し、新たにブランディング訴求を目的とした総合サイトを開設した。

3年近くかけて戦略を練り生まれ変わりを図ったファンケルだったが、2013年3月期は創業以来初となる21億円の赤字を計上する。日中関係の悪化によって中国で不買運動が起きたり、化粧品事業が伸び悩んだことが主な要因だった。そして2013年4月、状況を見兼ねた創業者の池森氏が8年ぶりに現場へ復帰。復帰直後から、「カンパニー制への組織改編」「店舗スタッフのベースアップ」「持ち株会社体制への移行」「銀座旗艦店の改装」と矢継ぎ早に改革を進める。また、専門家集団を育成するため、全従業員を受講対象とした「ファンケル大学」と、幹部向けの「池森経営塾」を設置。これまで各部署が担っていた従業員の教育機能を集約し、理念教育や美容や健康に関する専門教育、さらには次世代経営者の育成まで行っている。

その一方で、研究開発体制も強化し、健康機能のある食品の開発を担う「食品研究所」、アンチエイジング化粧品分野の研究を行う「アドバンスドリサーチセンター」などを拡充した。さらに食品会社との共同研究で、より医薬品領域に近いドクターズサプリや、青汁や発芽玄米など健康機能のある食品領域に近い製品の開発も進めていくと発表。また流通分野の強化として、2016年を目処にドラッグストア、スーパーなどの店頭販売での卸の売り上げ比率を10%から30%台にまで引き上げると断言した。つい先日、セブン&アイ・ホールディングスとスキンケア化粧品を共同開発し、セブン&アイHDのPB商品として11月から全国のセブン-イレブンやそごう・西武などで発売すると発表したファンケル。業績回復に向けた今後の動向から目が離せそうにない。

 

 

ドクターシーラボ

 

「肌トラブルに悩む全ての人々を救う」という経営理念のもと、日本においては比較的新しいメディカルコスメという市場で事業を展開してきた1999年設立のドクターシーラボ

 

 

皮膚の専門家ならではの視点をベースに、医学的・美容的見地から製品を研究開発し、ニーズに応える製品戦略、そしてメディカルコスメのさらなる認知度の向上に努めてきた。2001年にECサイトを立ち上げた同社は今でこそ通販のイメージが強いが、実は2005年〜2006年頃からECの売り上げが低迷し始めた。それを受け、見込み客にサンプルを配り続けたり、SEO対策、アフィリエイト、リスティング広告、メルマガなど、ECでやるべきことはひと通り取り組んできたが売上は上がらない。社内からは「商品力の問題か」「店舗に売上を取られているのでは」という声も上がったが、結局ブレイクのきっかけは既存顧客のリピート率アップだった。ユーザー目線に立ち返り、他社商品への誹謗中傷や商品と直接関係のない口コミ以外はすべて開示。ユーザー同士がコミュニケーションする場を作ったり、参加型キャンペーンを多数企画した結果、全体の売上は20億円から100億円まで伸び、2007年以降はYahoo!通販コスメ大賞で1位を獲得し続けている。

現在は350億円弱の売上のうち6割が通信販売、4割が百貨店やドラッグストア、バラエティショップ経由の売上げとなっており、ソーシャルメディア活用の成功企業として取り上げられることも多い。過去の経験を生かし、ドクターシーラボでは「Webサイトを商品が買えるだけの自動販売機にはしない」というポリシーのもと、Twitter(フォロワー数約2.3万人)、Facbook(ファン数約42万人)、自社CGMといったSNSを使ってマーケティングを展開。例えば、運用ルールをきっちり決めたり、SNSのメリットを数値化して活用を自社のトップに理解してもらうなど、さまざまな努力も行ってきた。

そんな同社だが、2013年の前期(2013年7月)の売上高は2003年の上場以来初となる減収で、利益も2桁減益と苦戦を強いられた。競合他社が伸び悩む中、快調に業績を伸ばしてきた数年前の状況からは考えられない業績だが、その原因は販売していた美顔器の不当表示問題、そして主力商品である化粧ゲル「アクアコラーゲンゲル」に類似した他社製品との差別化に苦戦したことだった。当期の通販の年間の新規顧客獲得数は85万件となり、前年比では35万人減となってしまう。その打開策として掲げられたのが、全販路で顧客との接点を増やしていくという戦略だ。年間の新規顧客獲得数を抑え、その分を既存顧客の購入回数アップや客単価アップのための施策に充当。コールセンターのオペレーターや店舗の美容部員の接客力や商品の知識などを含め、教育の強化を図った。これにより、「ドクターシーラボスキンケアメソッド」の提案を徹底させ、客単価の底上げにつなげていくとした。

また、同社は対面販売の店舗も全国に150店舗ほど構えているが、さらなる顧客接点の拠点として2013年からサロン展開を開始。簡単な施術とともに商品の説明を行い、リピーターを増やしていく考えだ。また、主力商品の「アクアコラーゲンゲル」シリーズの中でも最大の売り上げを誇る「アクアコラーゲンゲルエンリッチリフトEX」を2013年11月にリニューアル。商品のリニューアルに合わせてコアターゲット層をこれまでの40歳から45歳へと引き上げるほか、健康食品についてもさらに拡販する。2016年7月期には、売上高を460億円まで拡大させたいとしている。

 

 

DHC、ファンケル、ドクターシーラボに見る3つの商材特性

 

美容・化粧品は3つの大きな特徴を持っている商材だ。1つ目の特徴はオンラインで販売される商材の中でも最も口コミの影響を受けやすい商材の1つと言えることだ。各サイトには必ず口コミコンテンツが掲載され、ここ数年は化粧品に特化した口コミサイトが消費に大きな影響を与えている。1999年にサービスを開始したアットコスメは、1,100万件を超える口コミが掲載されている業界最大手だ。そのような特性から中小の化粧品各社もFacebookなどのソーシャルメディアを巧みに活用して売上を伸ばす事例も増えてきており、ユーザーの口コミをどのように味方に付けていくかが重要な戦略となっている。

2つ目の特徴は商品の原価が極めて安い商材であることだ。そのためテレフォンマーケティングに重点を置いたり、多額のマーケティングコストをかけられる土壌がある。また製造に手間がかからず、商材も小さいため高度な在庫管理の仕組みも適用しやすい、まさにオンラインで効率的に販売するための商材といえるだろう。

3つ目の特徴は、ユーザーが複数回にわたって購入する可能性が高いリピート商材であることだ。多くの企業はユーザーのLTV、すなわち一生涯でいくらのお金をこの商品につぎ込んでくれるのかを計算し、そこからマーケティングコストをはじきだして新規顧客の獲得に予算を投じている。

このような特徴に沿ってここで紹介した各社は3社3様の取り組みを行って売上を拡大してきたといえる。口コミを巧みに利用して売上を拡大したDHC、在庫管理と流通網で追随するファンケル、昨今のデジタルマーケティングを最大限に活用するドクターシーラボだ。しかし一方で3社ともピークの売上から下降線を辿っているのも事実で、順風満帆とはいえない。古くはブランド力のある輸入化粧品、そして数年前まではここで紹介した化粧品通販大手各社やテレフォンマーケティングを行う再春館製薬所などに勢いがあったが、ライスフォースのようなソーシャルメディアの活用に大成功して売上を伸ばす企業も増えてきている。このように新しいデジタルマーケティングの荒波にさらされやすい美容・化粧品通販市場は、ECで売上を伸ばす最新事例が事欠かない業界だ。各社が荒波をどのように乗り越えていくのかと共に、各社の今後の取り組みからも目が離せない。

 

<参考>

ECサイトでのコンテンツマーケティング成功事例厳選4選から学べること

「ソーシャルコマース成功のための3つのポイント」 桜丘製作所 鈴木大也氏 キーパーソンインタビュー