マーケターと消費者の間には、AIに対する感じ方に大きな隔たりがある。これにどう対処すべきかについて説明しよう。


マーケターはAIを好むが、消費者はそうでもない。これが、AIとマーケティングに関する9つの最新レポートのレビューから得られた大まかな結論である。マーケターが消費者とのつながりを望むのであれば、消費者が何に対して、なぜ反対しているのかを具体的に理解することが不可欠である。

各レポートは手法が異なるため、単純に比較することはできない。それでも、顧客と接するAIを導入する際には、マーケターと消費者の感じ方の違いを考慮しなければならないことは明らかである。(全レポートへのリンクは本記事の最後にある。)


消費者はAIを信頼していない

マーケターと消費者の間の最も顕著な意見の相違の一つは、「信頼」の領域にある。
フランスのITサービス・コンサルティング企業、Capgeminiのレポート「Unleashing the Value of Customer Service(顧客サービスの価値を引き出す)」は、生成AIとエージェントAIを採用する組織について詳しく説明している。同様に、米国のマーケティングリサーチ企業、Ascend2のレポート「The Evolution of AI in Marketing 2025(マーケティングにおけるAIの進化 2025年版)」は、マーケターがAI主導のインサイト(多くの場合、人間による検証が必要となるが)に対して高いレベルの信頼を置いていることを明らかにした。

しかし、控えめに言っても、消費者の感じ方は異なる。米国広告研究財団(ARF)のレポート「Consumer Trust and Privacy Concerns in 2024(2024年における消費者の信頼とプライバシーに対する懸念)」では、デジタルプライバシーの保護に関して、AIテクノロジーは最も信頼されていないもののひとつにランクされている。同様に、eコマース向けのメールマーケティング自動化プラットフォームを提供するOmnisendのレポート「AI in Ecommerce: Trust, Privacy, and Consumer Perspectives(eコマースにおけるAI:信頼、プライバシー、消費者の視点」によると、消費者の58%はAIが自分のデータをどのように扱うかを心配しており、39%がAIとのやりとりに不満を感じて購入を断念している。

誤解のないように言うと、消費者はAIとの対話に完全に反対しているわけではない。Five9(コンタクトセンター向けクラウドソフトウェアを提供する米国企業)のレポート「2025 Customer Experience Report(2025年版顧客体験レポート)」によると、72%の消費者は、人間と同等の対応ができるのであれば、AIを活用したやり取りに前向きであるという。しかし、信頼は依然として重要な要素である。消費者の30%はAIの正確性に疑問を持っており、特に高齢者世代では、ネガティブなチャットボット体験は将来的な利用回避につながる可能性がある。

もちろん、消費者にも矛盾はある。Capgeminiによると、消費者の60%はAIを活用したサービスに対して、より高いお金を支払う用意があるという。

この信頼レベルの違いは、企業がAI導入を成功させ、顧客の信頼を維持するために対処しなければならない重要な要素である。


真正性の問題

AIの創造力についても、マーケターと消費者の間で意見が分かれている。オンライン調査プラットフォームを提供するSurveyMonkeyのレポート「State of Marketing 2025(2025年のマーケティングの現状)」によると、消費者の46%はAIを使ってコンテンツを生成する企業を嫌い、43%はそのような企業から購入する可能性が低いことがわかった。


B2B
はAIに肯定的 

ビジネスバイヤーは消費者よりもAIに肯定的であることが多い。これはおそらく、彼らにとってAIが商品調査をより簡単かつ迅速にするためだろう。SurveyMonkeyのレポート「State of Marketing 2025」によると、ビジネスバイヤーは消費者よりも、AIエージェントが役に立つことに強く同意する傾向が25%高い。SurveyMonkeyによると、ビジネスバイヤーと同様に、消費者も購買プロセスの初期段階、つまり探索段階でAIと対話することにより快適さに感じているという。

 

AI統合を成功させるためにギャップを埋める

これらの調査は、AIに対するマーケターの興奮と、顧客が望み、期待し、信頼するものとの間の乖離を浮き彫りにしている。このギャップを埋めるには、透明性を確保し、データを安全に保ち、必要なときに人間のサポートに簡単にアクセスできるようにし、また人々がどこでどのように対話することを好むかを尊重する必要がある。


レポート


※当記事は米国メディア「MarTech」の3/19公開の記事を翻訳・補足したものです。