専門家は、AIがデータ、コンテンツの最適化、意思決定、AI最高責任者の雇用をめぐる変革を促進すると予測している。


2024年は、あらゆる種類のAIを搭載したツールやアップデートが登場し、多くの可能性が見られた。また、マーケティング担当者のスキルアップが進んでおり、組織は2025年もAIへの投資を継続する予定であるという調査結果もある。多くの変革が進行中だが、これは現実的には何を意味するのだろうか。

それは、多くの企業が変化をサポートするために新たな雇用を行うことを意味する。そして、この環境変化の中で競争力を維持するために、データやその他のマーケティング資産を新たな方法で活用することになるだろう。ここでは、2025年に組織がAIツールとプロセスを適応させ、活用する分野をいくつか紹介する。


AI協議会とAI最高責任者

AIを活用したツールやプロセスが市場に溢れる中、企業は新規採用やリストラを行いながら適応を目指すだろう。多くの企業がAI協議会を設立したり、AI変革をリードする最高AI責任者を採用したりするだろう。

会話インテリジェンス企業CallMinerのCMOであるEric Williamson氏は、「2025年には、このような取り組みや雇用が急増すると予想している」と述べている。

Williamson氏は、次のように説明する。「CX(カスタマーエクスペリエンス)の向上、業務効率の改善、コンタクトセンター・エージェント(企業に代わって顧客からの電話、メール、チャット、ソーシャルメディア・メッセージの送受信に対応するエージェント)のサポート、その他の目標など、AIへの投資が期待通りの価値をもたらしているかを確認するためには、十分な知識をもって採用の意思決定を行う必要がある。一方で、不必要な数の意思決定者が関与することは、調達プロセスを遅らせたり、停止させたりする可能性さえあり、組織がAIに遅れをとる原因となる。組織が競争力を維持しようとするならば、アジリティ(俊敏性)と責任あるAI導入のバランスを見出さなければならない」。


データ分析とエンリッチメントの自動化

2025年にマーケターがAIを活用する主な方法の1つは、データの充実と分析である。たとえば、AIを搭載したツールは、理想的な顧客プロファイル(ICP)、つまり大金を使う可能性が最も高い顧客や見込み客のスコアリングと特定にかかる時間を短縮し、効率を高めることができる。

「AI が、マーケティング担当者、特に B2Bの担当者が、ICP分析とアカウントデータのエンリッチメントという昔からの問題に取り組む方法を近代化するのに役立っていることに、興奮している」と、コンテンツ管理システムContentstackの CMOであるGurdeep Dhillon氏は述べる。「ICPの決定への新しいアプローチ方法、およびアカウントデータと調査の自動化は、マーケティングとビジネス開発がテクノロジースタックをより効率的に拡張・活用するのに役立つだろう」と続けた。

AIを活用した迅速な分析と活性化の能力は、マーケティング・テクノロジースタック全体に影響を及ぼすだろう。これがカスタマーエクスペリエンスに適用されると、マーケティング担当者はハイパーパーソナライゼーションを実行する力を手に入れることになる。彼らは、リアルタイムのデータインサイトと、ハイパーパーソナライズされたメッセージとエクスペリエンスを迅速に提供するための生成AIコンテンツプロダクションを手に入れることができるのだ。

「私が目にする一番のユースケースは、最終的にパーソナライゼーションの約束を実現することだ」と、Dhillon氏は述べる。

「リアルタイムのオーディエンスやコンテンツの洞察をオンブランドの生成AIと組み合わせることで、大規模なハイパーパーソナライゼーションが実現する」。

Dhillon氏はさらに次のように続ける。「マーケターは、CMS、パーソナライゼーションエンジン、リアルタイムCDP(カスタマーデータプラットフォーム)、LLM(大規模言語モデル)とRAG (検索拡張生成)、そして自動化ツールを備えた最新のDXP(デジタルエクスペリエンスプラットフォーム)を使用してこれを実現するだろう。マーケターが直面する最大の課題は、パーソナライゼーションロジックを最初に設定することだろう。AIは改良と最適化に役立つが、チームは最初の戦略を設定する必要がある」。


生成AIの小売検索のためのコンテンツ最適化の再定義

eコマースに携わっているなら、AIはAmazon の「RUFUS」のような生成AI検索ツールを通じて、すでに競争の場を変えつつある。顧客は商品やブランドを見つけるためにキーワードを使うだけでなく、より会話的に検索している。つまり、顧客は一般的な質問をしたり、買い物の機会を説明したり、商品の比較について尋ねたり、フォローアップの質問をしたりしているのだ。

このような環境において、マーケティング担当者が上位の結果を維持し続けるためには、より幅広い文脈をカバーするようにコンテンツを最適化する必要がある。

「生成AIのリテール検索は、コンテンツの最適化とコンテンツの更新要件の増加に新たな焦点を当てるだろう」と、オムニチャネルマーケティングプラットフォームSkaiの成長戦略担当副社長Megan Harbold氏は語る。「生成AI検索は、RUFUSと同様に、テスト段階からオンラインショッピングの通常の行動フローへと移行するだろう」。

Harbold氏は次のように説明している。 「モデルが検索の定義を絞り込む中で、マーケティング担当者はキーワードの収集、製品コンテンツの最適化、コンテキストターゲティングの方法を改善して関連性を維持する必要がある。その結果、製品コンテンツを最適化し、コンテキストターゲットが絞り込まれるにつれて、コンテンツとクリエイティブを動的に変更するテクノロジーへの投資が増大するだろう」。


因果推論AI(Causal AI)の統合

2025年には、AIはアナリティクスやコンテンツ制作のスケールアップに使われるだけではなくなるだろう。AIはシナリオを分析し、意思決定を支援するためにも使われるようになる。これは、「因果推論AI(Causal AI)」と呼ばれるAIツールのカテゴリーである。

「間違いなく、2025年以降、因果推論AIを生成AIや大規模言語モデルと統合することに多くのエネルギーが費やされるだろう」と、小売業や金融サービス向けのツールを提供する因果推論AI企業、IKASIのCROであるMridula Rahmsdorf氏は話す。「現在の機械学習モデルは、依然として複数の分野にわたって非常に有用であり、2025年にはアップグレードが予定されている。これらの形式のAIと統合された因果推論AIは、特に、意思決定に因果関係ではなく相関関係に基づく複数の、一見矛盾する指標が関係する場合に、精度を大幅に向上させ、意思決定を強化する」。Rahmsdorf氏は次のように補足する。「因果推論AIを統合することで、さまざまな要因がどのように相互作用し、互いに影響し合うかをより深く、より幅広く把握できるようになり、生成AIの信頼性も高まる。その結果、生成AIは現実的な結果を反映したシナリオをより巧みに提示できるようになり、より首尾一貫した適切な結果を導き出せるようになるだろう」。

「因果推論AIが他のAI技術とより深く統合され、正確な結果に基づいて因果推論に対する信頼が飛躍的に高まるにつれて、あらゆる業種のさまざまなユースケースにおいて、重大なインパクトをもたらすために因果推論AIを利用するケースが急増するだろう」。


※当記事は米国メディア「Martech」の12/30公開の記事を翻訳・補足したものです。