オンラインショッピングの商品検索が、お気に入りのWebショップの高度なチャットボックスで、まもなく利用できるようになるかもしれない。目標は、買い物客と販売員の間の快適な会話レベルを再現することである。

小売商品検索プラットフォームGroupByは、この会話型チャットエージェントアプローチを、Googleと共同でテストしている。Googleは、このアプローチをより広範囲で実行するために、Gemini Cloud(同社のAIを活用したアシスタント)を使用した企業向けのAIプラットフォーム「Vertex AI」上でこの小売プラットフォームを運営している。

このテスト結果は、チャットを使って買い物をすることが世代間の違いを示す可能性がある。これまでのところ、ソーシャルメディアを使って買い物をする人が増えているとされている。そのため、チャット型のインターフェイスは、その消費者層にとってより重要、または興味深いものであると、GroupByの製品ディレクターであるArv Natarajan氏は述べている。

このテストフェーズは、小売業者が来たるホリデーショッピングシーズンに向けて準備を進める中で、小売業の継続的なアップグレードの一環となっている。その準備の大部分は、AIが、小売業者が手動で行わなければならなかった作業の多くを引き継ぐため、ジョブシフトを伴う。AIの追加による最も革新的なマーチャンダイジング・トレンドのひとつは、会話のようなオンラインショッピング体験を生み出すことなのだ。

店舗のグリーター(出迎え役)は、店頭販売において貴重な役割を果たしていた。買い物客と店員との最初の人間対人間の接触は、満足のいく顧客体験(CX)を生み出すのに一役買っていた。今では、適切なプラットフォームを運営しているオンライン小売業者は、顧客が必要なものを見つけ、オンライン取引を完了するのを助けるために、まるで人間のようなやり取りで会話体験を作り出している。

確かに、検索エンジンやチャットボットは古くから存在している。しかし、質問やヘルプの必要性を入力するよう促すポップアップ・ウィンドウは、小売店としての魅力に欠けるだろう。生成的なAIを駆使した会話で、オンライン商品発見のための店舗内ショッピング体験を生み出す、新しいショッピング体験が期待されている。

「AIを活用した商品発掘技術は、顧客体験を向上させることができる。また、オムニチャネルの収益も、自動的に最大化する。つまりそれは、単にオンラインでモノを買わせるだけでなく、オムニチャネルを総合的に見ているのだ」と、Natarajan氏は語る。

GroupByの製品担当ディレクター、Arv Natarajan氏

 

より高いレベルでの商品発見

オンラインで何を購入するかを見つけることは、eコマースが発明されたときから存在していた。通常、消費者は検索エンジンを頼りに商品を探す。小売店のWebサイトでも、検索ウィンドウが最もよく使われる方法である。そうやって人々は検索するように訓練されているのだ。

「しかし、特に若い世代では、ソーシャルメディアという新しいチャネルや既存のチャネルが、商品検索にますます関連性を持つようになっていると考える」とNatarajan氏は指摘。

たとえば、ソーシャルメディアを利用する場合、ユーザーは好きな歌手のジャケットに興味を持ち、写真をクリックする。すると、検索エンジンはそのジャケットが売られているWebサイトに飛ぶ。

「若い世代がオンラインで買い物をするようになるにつれ、こうしたタイプのショッピングはより重要になると思う。小売業者は、eコマースと商品発見のコアエクスペリエンスを常に把握する必要がある。使用しているeコマースプラットフォームに、ユーザーをWebサイトに誘導して適切なタイミングで商品を見せられるような最高の顧客ショッピングエクスペリエンスを生み出すテクノロジーが搭載されていることを確認するべきだ」とNatarajan氏は語る。


オンラインマーチャンダイザーは、革新的なトレンドに常に注目し、顧客体験を包括的に考慮する必要がある。

たとえば、検索エンジンは、BtoCの小売業者だけでなく、BtoBの流通業者にとっても、適切な商品を適切な人に適切なタイミングで販売するために極めて重要である。同氏は、特に若い世代がバイヤーの役割を担うようになるにつれ、B2Bのショッピング体験がB2Cの体験に似てきていると指摘した。

 

会話の方向性を変える?

AIの統合は、会話のようなオンラインショッピング体験を生み出すことで、革新的なマーチャンダイジング・トレンドを最もリードしていることの一つだ。しかし、そのプロセスにおいては、消費者を、新しい方法で買い物をするように再教育する必要があると、Natarajan氏は言及する。消費者は、検索ウィンドウでキーワードを使うことに慣れてしまっているからである。

その慣習により、検索方法をチャットボックスに移しても、消費者は同じような検索手段をとる。たとえば、「ドレスを探しています」、「Tシャツを探しています」などと入力するのだ。もし小売業者がユーザーを訓練して、より会話的な入力ができるようにすると、その検索方法は「来月結婚式に行くから、ドレスが必要なんだ」となるだろう。

これは、買い物客が店舗のスタッフに尋ねるような質問内容である。そして、結婚式の気温や気候、結婚式のスタイル、テーマなどを明確にするために会話を進める。そうすることで、「リネンのドレスか、ナイトドレスを探しています」というような、より詳細な質問を促すことができる。

「ホリデーシーズンに、こうしたAIと人間の会話による体験がどうなるかは興味深い。まだ実証されていないので、このアプローチを試す良い機会になるだろう」とNatarajan氏は語った。

彼は、チャットボットはまだ導入の初期段階にあり、小売の商品検索のためのチャットボックスへのエンゲージメントは、期待どおりには増加していないと指摘した。

「それは、人々がそのような買い物の仕方を訓練されていないからだと思う。チャットボットを使用するとき、彼らはそれをカスタマーサポートだと思っている。小売業者はさまざまなユーザーエクスペリエンスを実験し、試しているが、消費者においてはまだそこまでには至っていないのだろう」と彼は語った。

顧客を導くには、AmazonTarget(米国の小売企業)、Walmart(米国の小売企業)などの市場の大手企業が、よりチャットに近い新しいユーザーエクスペリエンスで買い物客をトレーニングする必要があるのだ。そうして初めて、小売業者はその普及をより一般的に実感し始めるだろう。


小売業者は、メインの検索ボックスに会話機能を統合することで、e コマースエクスペリエンスを中断することなく、顧客の商品閲覧への関心を維持することができる。

顧客がチャットインタラクション中に情報を追加するたびに、画面で商品が更新される。すると顧客は、AIエージェントとのインタラクションに基づいて、新しい商品を見つけることができるのである。

 

革新的な検索を超えた、ホリデーマーケティングの準備

Natarajan氏によると、オンライン小売業者は、販売上の失敗を避けるためにチェックリストに従うべきだという。ホリデーマーケティングの準備で最優先すべきは、インフラの負荷テストである。それは、安定しているだろうか?ホリデーのトラフィックに対応できているだろうか?ホリデーシーズン開始後に予想されるトラフィックの急増に対応できるだろうか?

そして、商品カタログが、整っていて最新であることを確認しよう。在庫が古かったり、リード製品の情報に誤りがあったりすると、どんなに優れた検索エンジンでも正しい製品を表示することはできない。データが更新され、予想されるホリデーのトラフィックに対応できるようになっていることを確認しよう。

次に、以下のことを確認する。ホリデーシーズンのビジネス目標は何か?特別セールやクリアランスページのような専用ページはあるか?ホリデーのランディングページ用に特定のテーマを作成しただろうか?

さらに重要な側面は、分析である。パフォーマンスを測定できなければ、次回に改善することはできない。だからこそ、A/Bテストを行い、仮説を検証するための強固な分析プラットフォームを持つことが不可欠なのだ。


※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の9/3公開の記事を翻訳・補足したものです。