2022年は、実店舗での小売オムニチャネルショッピングが恒久的に進化していくだろう。このマイルストーンは、小売業者と買い物客の双方に影響を与えることになる。
消費者の店舗支出は減少し、インフレは急上昇しており、パンデミックの下で発生した他のいくつかの要因が、小売業の大転換に寄与している。
サプライチェーンの不足により引き起こされる在庫レベルの低下が、よりスリムで効率的な店舗を生み出している。Carl Marks Advisors(投資およびアドバイザリー事業のプラットフォーム)のディレクターであるJeff Pielusko氏によると、サプライチェーン・テクノロジーへの設備投資が勝敗を決める要因となり、一部の小売業者にとっては、店舗の閉鎖や面積の縮小が賢明であることが証明されているという。
しかし、小売業者には、経済状況が悪化したとしても生き残る可能性を高める3つの戦略がある。無駄のないオペレーションを実現し、店舗内テクノロジーの活用を最適化し、堅牢なeコマースプラットフォームをプラグインできる賢い小売業者は、店舗オーナーが実店舗の目的を再定義するのに役立つだろう。
パンデミックにより、eコマース業界は急速に高成長に適応せざるを得なくなった。デジタルマーケティングテクノロジーソフトウェアプロバイダーJivoxの創設者兼CEOであるDiaz Nesamoney氏によれば、知識豊富な実店舗の小売業者は、通常の店舗でのやり取りなしに、デジタル環境で顧客にリーチすることにピボットしたと指摘する。こうして、店舗を閉店したり、他の場所に移したりする必要を未然に防ぐことができたのだ。
Nesamoney氏は「消費者を引き付けるために、すべてのブランドがデジタルマーケティングキャンペーンを強化し、混雑した状況から抜きん出ることを余儀なくされている」と語った。
市場関係者は、状況がある程度安定することを期待している、とPielusko氏は付け加える。しかし、買い物客の裁量的支出については、急速な価格の上昇とサプライチェーンの不足の継続によって非常に困難な状況となるだろう。
Pielusko氏は「たしかに短期的な痛みはあるだろう。しかし、このような事態は避けられないことだ。5年から10年かかるところを、12か月から18か月に短縮しただけだ」と語った。
ストアフロント(店頭)の再定義
実店舗の役割は間違いなく再定義されている、とPielusko氏は続けた。以前はオンラインのみであった多くのブランドが、eコマースプラットフォームを念頭においた実店舗をすでに構築しているのだ。
eコマースを展開する従来の実店舗の小売業者は、直接買い物をしたい人に在庫を提供する店舗ロケーションを再考することに注力する必要がある。しかし、それは新たなフルフィルメントセンターでもあるのだ。
新しい定義は、買い物をし、ブランドを体験する場所だが、人々が棚に並んでいると思っているすべての在庫を運び込むわけではない。代わりに、それらは出荷準備が済まされ奥にあるのかもしれない、とPieluskoは説明する。
Nesamoney氏は、新たな小売の定義と結びつくことで、実店舗はオンライン小売業者の依存するバックルームツールの一部を模倣する方法にシフトするだろう、と示唆している。
「2022年には、より多くのブランドが顧客データプラットフォーム(CDP)を採用し、データを整理し、マーケティングと広告キャンペーンを合理化し、パーソナライズされたメッセージを適切な顧客に適切なタイミングで確実に配信するようになるだろう」と、Nesamoney氏は予測している。
テクノロジーの役割の変化
実店舗の小売業者とデジタル小売業者の両方が、使用するテクノロジーについて、新しい戦略を採用する必要がある。Googleが「ウェブサイトトラッキングからサードパーティCookieを削除」と発表する以前は、多くのeコマースブランドはベンダーデータに依存していたか、マーケティング活動の大部分を代理店にアウトソーシングしていた。
「GoogleがCookieを廃止した今、ブランドは内部から目を向けて、収集したデータそのものを活用する必要に迫られている」とNesamoney氏は言う。
テクノロジーは日常生活にますます浸透しており、小売業者にとっての参入障壁は低くなった。小売業者は、独自のプラットフォームを構築することなく、多くのサービスを利用することができる。
「Amazonのようなものをビジネスに使用し、eコマースプラットフォームで消費者にリーチすることができる。それをサポートするために、必ずしもすべてのインフラストラクチャを構築する必要はない」と、Pielusko氏は付け加えた。
実店舗の経営者は、CRMソフトウェアやリモートキャッシュレス決済システムなどのeコマースツールの使用に慣れる必要がある、と同氏は示唆した。これは、実用的なオムニチャネル・オペレーションを確立するために必要な部分である。
オムニチャネルが、統一されたマーケティングアウトレットになる
パンデミックの規制が緩和されるにつれ、多くの人は、オンラインショッピングがもたらした利益に終止符を打ったように思われた。現在のトレンドは、そうはなっていないことを示している。どちらかといえば、インフレスパイラルはeコマースの熱狂を助長しているのだ。
米国国勢調査局の最近のレポ―トによれば、eコマースは2020年だけで前年比11%増加したとのこと。Nesamoney氏によると、今年の売上高は1兆ドルを超えると予測されているという。
「パンデミックがその新たな戦略を採用を促進したかもしれないが、近い将来、eコマースが消滅する可能性はほとんどない」と同氏は提言した。
とはいえ、eコマースは進化し続けている。たとえば、ブランドは、豊富なデータ環境で消費者にリーチする方法として、Walmart、Amazon、Targetなどの小売メディア製品の力を認識しているとNesamoney氏は付け加えた。
まだそのような方法をとっていないブランドは、強力なone-to-oneパーソナライズ戦略を採用する必要がある。また、顧客がどこにいようとも関係を維持しリーチするために、オムニチャネル環境を深く理解する必要があるのだ。
Nesamoney氏によると、これを大規模かつ消費者の需要と一致したレベルで達成するには、人工知能や機械学習などの革新的なマーケティングテクノロジーを活用する必要があるという。
Pielusko氏によると、オムニチャネルマーケティングは、今や実店舗の小売業者にとって不可欠なものだという。人々は、実店舗がなくなるわけではないことを徐々に気づき始めているのだ。
オンライン上でオムニチャネルの存在を示すことは、ブランドがカスタマージャーニーをよりよく理解し、それに応じてパーソナライズされたメッセージングを調整するのに役立つ。これをうまく行うには、eコマースマーケティングテクノロジーに強固なアイデンティティ・メカニズムが必要である。これにより、チャネル間での顧客エンゲージメントを可能にするための鍵となるファーストパーティデータを活用できるようになる、とNesamoney氏は説明している。
店舗を超えた存在へ
実店舗は、より多くの顧客により多くの選択肢を提供するため進化する必要がある。
地元の店舗顧客をベースにサービスを提供することに加え、実店舗は普段オンラインで買い物をしない人々からの売り上げに注目する必要がある。そこで、実店舗のeコマースプラットフォームがショッピングの全体像に登場する。
そのアプローチは、店舗が単なる買い物の場所以上のものになるという概念と関連している。店舗を小売マーケティングハブとして、顧客がオンラインで注文した商品を受け取りに来るようにする。地元の店舗は、顧客への配達時間を短縮するのに役立つフルフィルメントセンターとしても機能するのだ。
「eコマースと実店舗は、実に補完的関係にある」とPielusko氏は述べている。
※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」4/22公開の記事を翻訳・補足したものです。