決済方法は、eコマースビジネスの成功に不可欠な要素である。どのような決済方法が顧客に好まれているかを知ることで、オンラインショップのコンバージョンを向上させることができる。リトアニアに拠点を置く金融プラットフォームGenomeは、欧州における現在のトレンドと最も人気のある決済方法のリストを作成した。
決済業界は常に前進しており、2020年の新型コロナウィルスにより各国においてロックダウン(都市封鎖)が行われ、企業は適応しオンラインに移行しなければならなかった。パンデミック(世界的大流行)そのものが決済のトレンドを押し進めたのだ。リトアニアに拠点を置く金融プラットフォームGenomeは、欧州各国の市場における最大の変化と状況を一覧にまとめた。
さらに一般化する電子決済、モバイル決済やデジタルウォレットの利用増加、非小売業での非接触型決済の導入などさまざまな例が挙げられる。代金引換が依然として人気であった国では、顧客は物理的な現金の使用を回避すべく、配送業者持参の決済端末を使うか、ロッカーに配送を依頼する必要があった。
増加するeコマースの決済手段
金融サービスは日々デジタル化が進んでおり、顧客向けのより迅速で使いやすい機能が提供され、新規プレイヤーが登場している。欧州では、「決済サービス指令第2版(PSD2 / the Payment Services Directive Two)」の施行がこれに大きく貢献した。この指令により、オンラインバンキングツールの導入が促進され、オンラインショッピングのセキュリティが強化された。これにより、顧客はサードパーティ・プロバイダーを利用して、より便利で安全なバンキングサービスを利用できるようになった。
「PSD2によってオンラインショッピングのセキュリティが強化された」
Genomeのような企業が欧州全域でさまざまな通貨での支払いを受け入れるために必要なツールを提供しているため、マーチャントにとって、これは効率的なビジネス運営方法となり得る。あらゆる主要な決済方法が一つの金融システム内で利用できる。そうすることで、eコマース事業者は、それぞれと個別につながる必要がなくなり、より多くの選択肢を求めてさまざまなアクワイアラー(加盟店管理会社)とつながることができるようになる。
欧州で現在、人気のある決済方法
PSD2によって「決済開始サービス(PIS / Payment Initiation Services)」が利用できるようになり、電子取引が簡素化されたことで、より多くの第三者決済サービスが登場すると予想されている。しかし現在、欧州で好まれている決済方法は何だろうか。
英国
英国の顧客は、オンライン決済において、デビットカードやクレジットカードの利用を依然として好んでいる。成人の69%がクレジットカードを所有しているのであるから、この結果も不思議ではない。eコマース事業者も、決済方法としてカードの利用を強く推奨しており、eコマース事業者の99%は、VisaかMastercardのいずれかを利用できるようにしている。また、事業者の60%以上は、 American Expressに対応している。
「英国の顧客は、デビットカードやクレジットカードを好む」
しかし、最近では、デジタルウォレットの利用も増加している。デジタルウォレットは、将来的には決済方法の市場でカードに匹敵する存在になるとさえ予測されている。今のところ、最も一般的な選択肢は、PayPalやGoogle Payである。
ドイツ
ドイツでは「未決済請求書」が普及しており、その普及率は2023年までに35%に増加すると予想されている。それとは別に、多くのオンライン販売を行う企業は、Visa、Mastercard、キャッシュ・イン・アドバンスオプション(66%)、デジタルウォレットやSofort支払いサービス(口座振り込みをベースとした決済方法)での決済方法を顧客に提供している。
スペイン
今のところ、デビットカードとクレジットカードは、ほとんどの人が選択する決済手段であるが、デジタルウォレットが2位につけている。2023年までには、カードの人気が低下し始め、デジタルウォレットや銀行振込が優位に立ち始めると予想されている。注目すべきデジタルウォレットとしては、PayPalやApple Payのほか、スペイン国内で利用できるBBVA ウォレットやCaixaBankウォレットなどがある。
フランス
全体的には、フランスのオンライン決済市場ではカードが大半を占めている。顧客は、同国共通のCarte Bleueをよく利用する。他の種類のカードはあまり人気がないが、 American ExpressやVisaのようなカードもあるにはある。デジタルウォレットはそれほど一般的ではなく、主にモバイルコマースで利用されている。人気のある選択肢として、PayPal、Paylib、Lydia、Amazon Payがある。
イタリア
イタリア人の一番好むeコマースでの決済方法については、複数の調査からさまざまなデータが得られている。クレジットカードやデビットカード(Visa、Mastercard、地元のCartaSi)、デジタルウォレット(PayPal)などが人気の上位を分かち合っている。
「イタリアでは、クレジットカードとデジタルウォレットが人気の上位を二分している」
パンデミック以前、イタリア人はかなり頻繁に現金を使用していたが、現在はよりデジタルな方法を使用しなければならない。それでも、同国のウェブサイトでは、代金引換のeコマース決済方法が主流となっている。二年後にはオンラインショッピングで銀行振込がより一般的になると予測されている。
ルーマニア
ルーマニアは、パンデミックが現金の使用に大きな影響を与えた国の一つである。物理的な現金を払う人は45%から21%に減少した。一方で、非接触型カードの支持率は59%に達した。
「ルーマニアでは代金引換が依然として人気である」
eコマースの決済手段としては、プリペイドカードが最も一般的であり、モバイル決済はかなり遅れを取って2位につけている。興味深いことに、ルーマニアでは「代金引換」が依然として人気の決済方法の一つであるのに対して、前述した国々では代金引換はあまり積極的に利用されていない。
オランダ
ほとんどの顧客は、近年全国に普及した同国のオンライン決済ソリューション「iDeal」を好んでいる。2位はデジタルウォレットとカードで、Mastercard、VisaやPayPalが好まれている。オランダは、eコマースでの決済方法の種類に関しては非常に多様性に富んでいる。銀行振込、請求書払い、後払いオプション(Klarna、AfterPay)や代金引換が利用可能だ。
ポーランド
決済ソリューションPrzelewy24、BLIK、PayUによる銀行振込は、オンラインショッピングにおいて多くのポーランドの顧客から選ばれている。デビットカードやカード(Mastercard、Visa)は、あまり好まれていない。Apple Pay、Google Pay、PayPalや同国のYetiPayなどのデジタルウォレットはあまり一般的ではないが、それでも普及している。ルーマニアの場合と同様に、代金引換は依然として人々がリピートしやすい選択肢の一つである。PaybynetやBLIKのようなオンライン決済は、同国でも利用者層が厚い。
スウェーデン
スウェーデン人は、複数のeコマース決済方法を利用している。Klarna BNPLはもちろん、請求書払いやカード(Visa、Mastercard、Eurocard)がそれに続く。そして全体的に、同国ではオンラインショッピングが非常に一般的であり、関連する決済方法としては、Trustly、Swish、Tink、Qliro、Neteller、Skrill、Klarnaなどがある。
フィンランド
フィンランドにおいても、調査データはさまざまな結果を示している。銀行振込、デジタルウォレット、カードなど、あらゆる主要な選択肢が広く利用されている。利用されている主な決済方法として、Trustly、Klarna、Zimpler、MobilePayなどがある。銀行振込によるオンライン決済件数は、2023年まで継続的に増加すると予想されるが、それは現地の「Verkkopankki」(フィンランドのオンラインバンキングサービス)の力添えがあってのことだ。
eコマース業界に及ぼす影響
現在の統計が示すように、欧州の複数の国々では、クレジットカードとデビットカードが依然として決済方法の王者である。しかし、複数の要因によって、決済方法の状況に変化が起きていることも明らかだ。欧州では、代替的な決済方法を求める層が増加しており、オンライン販売業者がそれらを利用することが重要である。
※当記事は欧州サイト「Ecommerce News Europe」の1/21公開の記事を翻訳・補足したものです。