データ倫理の遵守が現代のマーケティングの新たな基準である理由

データプライバシーは、間違いなく、最近のマーケターの頭の中を占める最も大きなトピックだ。ブランドは、GDPR(一般データ保護規則)、CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)、または、今後制定予定の米国連邦プライバシー法のいずれであっても、これらの要件のいずれかを満たしていない場合には、法的危険に直面する可能性があることを知っている。しかし、それ以上に重要なことは、消費者がプライバシーを求めているということである。

 

「消費者がより透明性を求め、新しい法律や規制が施行されるにつれ、ブランドはデータプラクティスを再考し、法令遵守を超えて競争に勝ち残る必要がある」と、Acoustic(独立系マーケティング・クラウド)のアソシエイトジェネラルカウンセルであるPriscilla Debar氏はMarTechカンファレンスの中で述べている。

 

データ倫理法を順守することで、マーケターは法廷闘争の際に有利な立場にたつことができ、顧客が望むものを提供することで顧客満足度を向上させることができる。しかし、データ倫理の遵守によって築かれる顧客との信頼関係は、さらに大きな影響を与える可能性がある。

 

「自社ブランドと顧客との間に、信頼に基づいた関係を育むことだ」とDebar氏は語った。「法律専門家と提携しデータの収集とニュースへの倫理的なアプローチをとることによって、それが可能となる」。

 

Debar氏が推奨する、マーケターが適切なデータ倫理により顧客の信頼を築くための3つの戦術を紹介しよう。

 

今のプライバシー環境の中でデータ倫理を遵守する

「実際に、私たちの生活のほぼすべての側面はデータを中心に展開されている」とDebar氏は述べている。「ソーシャルメディアのオンラインショッピング、コンテンツ、ストリーミング、銀行、さらにはヘルスケアについて考えてみてほしい。これらの日々の活動すべてには、個人データを企業と共有することが含まれている。より多くのデータが収集され、より多くの組織がそのデータにアクセスできるようになるにつれて、消費者が個人情報の共有を認識し同意するだけでなく、適切なレベルの注意と説明責任をもって取り扱われることを義務付ける強力なデータ保護法を制定することが重要になる」。

 

しかし、これらのデータプライバシー法だけが、マーケティング環境の変化に拍車をかけているわけではない。より適切な規制の実践に向けたテックジャイアントの更なる取り組みが、さらなる関係構築への道を切り開いている。

 

 

画像: Acoustic

 

「中には、顧客の期待を先取りし、法的に義務付けられている以上のルールを採用し自らを規制するデジタル業界の最大手企業も存在する」とDebar氏。「AppleはサードパーティのトラッキングCookieを制限し、Googleも2023年までに同様に実行する予定だ」。

 

Debar氏はさらに、「こうした動きは、今後の市場標準となるものの方向性を示し、市場の専門家にそれらへの適応と仕事のやり方の再考を余儀なくさせている」と付け加えた。

 

新たなプライバシーの状況を最もよく理解するブランドが、新環境下で顧客とつながるための最適な手段を備えることができる。

 

法務チームとの連携

「このような環境をナビゲートするのは複雑なことかもしれないが、データプライバシーは、デジタル業界で事業を運営するあらゆるビジネスアセットを構築するための基礎である」とDebar氏は述べている。「プライバシー規則に従わなければ、大規模な争いを伴う訴訟規制の執行や、企業の評判へのダメージ、および顧客の信頼の喪失につながるなど、ブランドに損害を及ぼす可能性がある」。

 

これらの潜在的な訴訟や信頼低下を回避するために、ブランドは、あらゆる自社キャンペーンで何らかの形式のデータ収集を行う前に、法務チームとの提携を優先する必要がある。そうすることで、潜在的なプライバシー問題に備えることができる。

 

「後から法務に相談するのではなく、早い段階で連絡を取り、チームの弁護士と提携すべきだ」とDebar氏。「このような日常的な活動が、法に準拠しているだけでなく、計画しているやり方がオーディエンスとの関係を構築および維持するための理にかなったデータ利用であることが確実にするための戦略を練るべきである」。

 

Debar氏は、「マーケターに課せられる可能性のある制限についてイライラしないことが重要だ」と付け加えた。

 

競争上の差別化要因としてデータ倫理を活用する

「データ倫理は、比較的新たしいコンセプトであり、企業はまだ完全には理解しておらず、リソースへの投資も十分には行っていない。しかし、消費者が求めているものである」とDebar氏は述べている。「倫理的なアプローチを採用し、公正であり、善良であり、ポジティブな顧客体験を生み出すことに重点を置く企業は、報われるだろう」。

 

顧客は、自分達を大切に扱ってくれるブランドを覚えている。データ収集のやり方も例外ではない。企業は、データ倫理をマーケティング戦略の最前線に置くことで、競合他社に差をつけることができる。

 

「データ倫理は、顧客のニーズを理解し顧客の境界線を尊重するという点で競合他社が提供している以上のものを顧客に与えることで、顧客にたいしての競争上の優位性をもたらすことができる。これにより、顧客を維持し、顧客から最初に獲得した信頼のレベルを維持することが可能となる」。

 

「顧客は、大切に扱われるほど情報を共有しようという気になる」とDebar氏は付け加えた。

 

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アイデンティティー・リゾリューション・プラットフォームの寸評

アイデンティティ・リゾリューションとは このアイデンティティ・リゾリューションとは、増え続ける消費者ID(識別子)を、チャネルやデバイス間でやり取りする際に、一個人に結び付ける科学である。

 

ツールの機能 アイデンティティー・リゾリューション・テクノロジーは、それらのIDを一人の個人に結び付ける。この貴重なデータは、接続されたスピーカー、ホームマネジメントソリューション、スマートテレビ、ウェアラブルデバイスなど、顧客がやり取りするさまざまなチャネルやデバイスから取得される。Cisco(世界最大のコンピュータネットワーク機器開発企業)のレポート「Cisco Annual Internet Report」によると、IPネットワークに接続されているデバイスの数は、2023年までに世界人口の3倍以上に増加すると予想されており、これは重要なツールとなっている。

 

なぜ今注目されているのか より多くの人々が、購入ジャーニーの各段階で関連性の高いブランド体験を期待している。画一的なマーケティングは通用しない。買い手は売り手が持つべき情報とその使い方を知っている。また、不正確なターゲティングはキャンペーン費用を無駄にし、成果を生み出すことができない。

これが、アイデンティティ・リゾリューション・プログラムへの投資がブランドマーケターの間で拡大している理由である。また、これらのテクノロジーは、彼らの活動がプライバシー規制に沿ったものであることを保証するものである。

 

注目する理由 最も成功したデジタルマーケティング戦略は、潜在顧客を知ることができるかどうかにかかっている。彼らが何に興味を持っているのか、彼らが以前に何を購入したのか、さらには彼らがどのデモグラフィックに属しているのかを知ることが不可欠なのである。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の1/3公開の記事を翻訳・補足したものです。