Amazonは、10月21日から2日間にわたって開催された「Accelerate Seller Conference」において、新しいツールの導入によるセラーの事業拡大支援戦略への転換を発表した。
eコマースの最大手企業である同社は、今年、米国の中小企業のエンパワーメントによる継続的な成功、好調なセラー・レポート、そして中小企業向けの独自の顧客管理ツールの成果などを発表した。
Amazonは、8月31日までの12か月間で売上高100万ドルを突破。米国の中小企業のセラー数は、約15%増加した。
Amazonが発表した「2021 Small Business Empowerment Report」では、米国内の50万を超えるサードパーティ・セラーパートナーが、いかに数億人の顧客を獲得し、売上と利益を増加させ、米国内で質の高い雇用を創出するために、有益な機会やツール、サービスを提供しているかが紹介されている。
同レポートは、10月20日から21日にかけて開催されたセラー向けのバーチャルカンファレンス「Amazon Accelerate 2021」にリモートで参加した数千もの米国のセラーに向けた、力強い歓迎の挨拶となった。今年二回目となるこの年次カンファレンスでは、新商品や新サービスの発表、セラーによるプレゼンテーション、そして起業家や起業を志す人向けにインサイトや戦略を提供する30以上のセッションが行われた。
「我々が、Amazonストアのバーチャルな商品棚をサードパーティ・セラーに開放すると決断したのは20年以上前である。当時、大型小売店は、中小企業を小売市場から追い出していた」と、Amazonのワールドワイドコンシューマー担当CEOのDave Clark氏は述べた。
Amazonは、販売パートナーをデジタルマーケットプレイスに参入させることは、豊富な品揃え、低価格や迅速な配送を求める顧客にとって利益となると考えた。
「しかし、それだけではなく、より多くの顧客を獲得し、収入と利益を増やし、良質な雇用を創出したいと考えている中小企業にとっての成功ももたらすと考えた。そして、これは素晴らしい賭けであったことが証明された」と同氏は加える。
ローカルセラーへの支援
Amazonが発表したセラー向けの新しいマーケティングツールの中で最も重要なものは、「Product Opportunity Explorer(推奨商品エクスプローラー)」と「Local Selling Capabilities(ローカル販売機能)」の2つであると、AmazonのセラーパートナートラストのディレクターであるDave Nadel氏は述べている。
「Product Opportunity Explorer」によって、セラーはAmazonの顧客データを利用して、店舗での需要が満たされていない新商品の機会を特定することができる。「Product Opportunity Explorer」は現在ベータテスト中である。Amazonは、2022年にはすべてのセラーがこのツールを利用できるようにする予定だ。このツールは、Amazonのセラー向けオンラインビジネス管理リソースである「セラーセントラル」において無料で利用できる。
また、マーチャントは、「Local Selling Capabilities 」を使用し全世界のAmazonの顧客に商品を販売するだけでなく、地元のコミュニティと交流することもできる。このオプションにより、ローカルのマーチャントは、町やその地域にあるセラーの店舗の近くに住む顧客をターゲットにすることができる。これにより、新しい商品やサービスが提供でき、顧客は自身のコミュニティ内の地元で買い物をすることができるようになる。
「例えば、より広範囲な全国規模のオンライン販売に追加で行うものとなるが、ローカルのマーチャントは、商品と一緒に設置サービスをバンドルすることもできる。これにより、顧客は地元の企業を支援することができ、セラーはより大型で壊れやすい商品など、これまでは提供できなかった商品を提供することができる」とNadel氏。
今回発表された新しいローカルセラーズサポートプログラムの二つ目は、オンラインで購入して店舗で受け取るというオプションである。これにより、顧客はAmazonでオンライン注文を完了した後、近くの店舗に出向いて商品を受け取り、同日中に手に入れることができる」と同氏は付け加える。
中小企業のエンパワーメント
Amazonは、セラーカンファレンスにおいて発表した「2021 Small Business Empowerment Report」において、同社が中小企業経営者、スタートアップや起業家に対して、商品をオンラインで販売するためのサポート、ツールや機会をどのように提供しているかを詳述している。また、ビジネスを拡大し、ブランドを構築し、経済効果を生み出す方法についても取り上げている。
2021年8月31日までの12か月間のより詳細なデータによると、パンデミックによる規制やサプライチェーン問題に直面した情勢の中で、セラーは素晴らしい成果を上げた。米国のセラーが達成した主な成果は以下のとおりだ。
・ 38億個以上の商品が販売され、毎分平均7,400個が販売された
・ 平均売上高は20万ドルを超え、前年同期の約17万ドルから増加
・ 海外への輸出売上高は約22億ドル、前年同期比の約15億ドルから増加
2020年、Amazonは、販売パートナーの成功を実現するために180億ドル以上を投資し、セラーがAmazonストアで迅速にビジネスを開始し、より多くの顧客にリーチするために規模を拡大し、ブランドを構築できるよう支援を行った。この投資には、新しいツールやサービスの導入、そして、同社内のセラーのサポートに注力する24,000人を超える従業員も含まれる。
「我々は、セラーと顧客の利益のために新しいものを生み出し続けるための新しい方法を考案しなければならなかった。セラーに関して言えば、多くの分野でパンデミックとの闘いが起きているが、その中でも主たるものはサプライチェーンの問題である」とNadel氏。
サプライチェーンプロセスに分断が生じ、一部のセラーには困難な状況となった。それでも、パンデミックの間、セラーや中小事業者がオンラインで成功するのを目の当たりにしてきており、売上も増大していると、同氏は語る。
「新型コロナウイルス感染症が発生した際、BlueZone(米国のアウトドア用品店)はすべての実店舗を一時的に閉鎖し、従業員を75人から12人に削減することを余儀なくされた」と、 BlueZone SportsのマーケティングディレクターであるKyle Robertson氏は話す。「しかし、2020年4月にAmazonに全面的に参入してからは、Amazonでの成長により、現在ではパンデミック前を超える従業員数と実店舗数を擁している」。
サードパーティセラーの成長
Amazonの「2021 Small Business Empowerment Report」によると、サードパーティ・セラーは米国で180万以上の雇用を創出しているという。Amazonの新たな販売ツールは、サードパーティ・セラーが有望な新商品を発売する機会を見つけられるようサポートをする。
このツールにより、推測によって発売商品を決める必要がなくなる。顧客が何を検索し、何をクリックし、何を購入し、購入していないかなど、豊富なインサイトがセラーに提供されるからである。
Amazonには、セラーのために考案してきた長い実績がある。エクスプローラーツールは、新商品をより速く、より効率的に市場に投入するためのインサイトを提供する同社の最新イノベーションであると、Amazonの北米販売パートナーサービス担当副社長のBen Hartman氏は説明する。
「これは、より多くの顧客を獲得し成長するための強力な機能を提供することで、我々が中小事業者や起業家に活力を与えているもう一つの事例だ」と同氏。
Silver Onyx(米国のeコマース小売業者。Nature’s Nutritionブランドの親会社)のCEOであるJohn Broadbent氏によると、同社は、提供商品数の拡大を基本とする成長戦略により、Amazonでのビジネスを構築した。Amazonデジタルストアでは、7つのブランドを展開している。
「『Product Opportunity Explorer』は、当社のビジネスに特に関連性の高いデータや推奨事項を提供し、Nature’s Nutritionラインへの効果的な新商品追加など、今年の当社ブランドポートフォリオにおける何十もの新商品の開発、提供能力を強化している」と同氏。
Amazonは、セラーによる新商品発売を支援するさまざまなツールやサービスを提供している。セラーは、自社マーケットプレイスプラットフォームで発売したい新商品が決定したら、保管料や広告費などの特典が受けられるフルフィルメント by Amazon(FBA)の「新商品特典プログラム」を利用して初期販売を促進することができる。
ブランドレジストリに登録しているセラーは、「Amazon Vine 先取りプログラム」を利用し、登録商品1点につきわずか200ドルで、新商品に関するインサイトに富んだカスタマーレビューの基盤を構築することができる。Amazonによると、Amazon Vineを利用するブランドは、平均して初期の商品売上を15%以上増加させている。
戦力となる検索アナリティクスツール
Amazonは、セラーが商品の検索パフォーマンスからインサイトを得るための「Search Analytics Dashboard(検索アナリティクスダッシュボード)」も発表した。これは、セラーに匿名化したデータを提供し、商品に対する顧客の関心や買い物の選択肢に対する理解を深めるためのものである。
ダッシュボードは、リスティングの最適化、在庫計画、そして商品開発のロードマップなどの情報をセラーに提供する。それにより、セラーは、Amazon上でもそれ以外でも、ビジネスを成長させることができると、Amazonの検索担当副社長であるSrikanth Thirumalai氏は述べている。
「我々は、これらのインサイトがセラーに何をもたらすかを楽しみにしている。また、セラーと提携し、ショッピングや販売体験を共に向上させる新たな方法を見出すにあたり、セラーからのフィードバックを楽しみにしている」と同氏。
「Search Analytics Dashboard」は、2022年初頭に米国で提供される予定だ。このツールは、Amazonのブランドレジストリに登録しているAmazonセラーに無料で提供される。
VitaCup(ビタミンやスーパーフードを配合したコーヒーや紅茶を販売する米国企業)は、検索用語データによって自社商品に関する検索頻度の高いキーワードを特定できるようになるだろう。セラーは、その情報を利用してマーケティングや商品開発戦略の微調整を行うことができると、商品開発に参加しているVitaCupのディレクターであるJason Mclellan氏は述べている。
「これらの情報は、開発すべき新商品や注目を集めたい商品カテゴリーを特定するのにすでに役立っている」と同氏は付け加えた。
※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の10/22公開の記事を翻訳・補足したものです。