英国のeコマース小売業者Vape ClubのディレクターであるVlad Vassiliev氏が、同社がページ表示速度で満点のスコアを達成するために行った取り組みと、それがビジネスに与えた影響について説明する。

 

Vape Clubは、ページの読み込み速度の重要性を強く意識している。Googleは、ここ数ヶ月、SEO(検索エンジン最適化)においてページ読み込み速度をいかに重要視しているかを示す多くの動きをしている。これには、検索結果ページで読み込みの遅いサイトにラベルを付けることや、GoogleがUX(ユーザーエクスペリエンス)を重視する取り組みの一環として、2021年に重要なランキング要因に組み込む「コアウェブバイタル」(Core Web Vitals)の発表が含まれる。

 

コアウェブバイタルは、ページの読み込み速度をすべて反映するものである。LCP(Largest Contentful Paint)は、ページのメインコンテンツの大部分が読み込まれるのにかかる時間を測定し、その有用性と読みやすさを示す。FIP(First Input Delay)は、ユーザーのクリックやタップに対するページ要素の応答性を測定する。また、累積レイアウト変更(CLS / Cumulative Layout Shift)は、ページ要素がロード中にその位置に留まるか、あるいは画面を動き回るかに基づいてスコアを生成する。

 

しかし、ページの読み込み速度を重視しているのはGoogleだけではなく、コンバージョンに与える影響にも反映されている。ユーザーの47%は、ページが2秒以内に読み込まれることを期待しており、わずか3.3秒の読み込み速度違いでコンバージョンが2.5%変化する可能性がある。ユーザーがページにアクセスするたびにページ読み込みが遅ければ、eコマース小売業者に大きな影響を及ぼす。

 

オンラインeコマース業界ではこれまで以上に競争が激化し、2020年のロックダウンによって小売業が永久的に変化したため、ページの読み込み速度を可能な限り速くする必要があることを認識した。サイト訪問者は、新規顧客であろうとリピーターであろうと、画像やその他の要素の読み込みがスムーズではないページに我慢をしたくないのだ。特に、英国で新型コロナウイルス感染症が発生して以降、ますます競争が激化するオンライン市場を考えると、そうした場合に訪問者は、あっさりと他のサイトに行ってしまうだろう。

 

負担の軽減

読み込み速度短縮を実行するにあたっては、サーバーと自社帯域幅使用量の負荷を減らすことが重要であった。適切な変更を行うことで、需要の増加に対応できない他社ウェブサイトから顧客が訪問してきた際に、自社の通常レベルの顧客サービスを提供することができた。

 

最初のステップは、サイトが現在、ページ速度に関するサイトのパフォーマンスを確認することであった。GoogleのPageSpeed Insightsツールは、特定のURLがモバイルとデスクトップの両方で読み込まれる速度を100点満点のスコアで示してくれるだけでなく、速度を遅延させている修正すべき点の一覧も示してくれる。

 

ページ速度向上のために取り組む必要があると分かっている要素がいくつかある。例えば、画像の最適化(モバイル、タブレットやデスクトップ用に各デバイス専用の画像セットを作成し、あらゆる段階で画像が完全に最適化されるようにすること)だ。そして、ビジュアルスタイリングの最適化(同社では、すべてのCSSファイルをクリーンアップして未使用のクラスを削除し、ファイルの圧縮率を最大化してエンドユーザーへの配信を削減した)、さらに、コアライブラリ(JavaScriptファイル)(使用されていないライブラリを削除し、コードを最小化して1つの整理されたファイルに統合した)である。また当社は、Google Analytics、ZenDesk(カスタマーサポート・サービス管理を効率的に行えるソフトウェアを提供する米国企業)カスタマーサポート、Trustpilot(世界有数のオンラインレビュープラットフォーム)やDMCA(米国におけるデジタルコンテンツに関する著作権保護のための法律 / Digital Millenium Copyright Act)に基づく著作権保護のためのサードパーティのプラグインの読み込みにも注意を払い、サードパーティの肥大化したコンテンツとサイトのやり取りの仕方について、廃止したり、先送りしたり、あるいは完全に変更した。

 

主要な指標

上記の推奨事項をすべて実行したところ、その後の数ヶ月間にいくつかの主要な指標が改善された。SEOの面では、検索エンジンの検索結果ページで、いくつかの主要な検索用語に対するサイトの可視性が向上した。

 

分析ツールSistrixで測定すると、同社のサイトではここのところ、モバイルデバイスでの可視性が49%向上した。これはデスクトップデバイスでの可視性についても同様で、56%の改善が見られた。

 

コンバージョン率も改善。前年比で、eコマースのコンバージョン率は3%、モバイルeコマースのコンバージョン率は3.18%、そしてデスクトップのコンバージョン率は8.63%増加した。サイトにアクセスした人が購入に至る割合が高くなっていることから、ページ速度の改善が売上に明確な違いをもたらしていることは明らかだ。

 

当社は今年、ますます力を蓄えており、最近の数字によると売上高は2倍以上になっているようだ。競争の激しいニッチでは、ページ速度などの要因に対する定期的な分析と改善が、今のeコマースの成功に重要な役割を果たすのである。

 

※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の11/26公開の記事を翻訳・補足したものです。