今や、フィード上のどこにでも動画は存在する。

多くのストーリーが動画で配信されるようになった21世紀に、eコマースのビジネスオーナーがこのトレンドを活用する方法を検討するのは的確なことだ。

カリフォルニア州サンタバーバラを拠点とする世界的デジタルコマースプラットフォームFastSpringのCEO、Chris Lueck氏は「現在、私たちの周りには常にコンテンツに溢れている。動画はそのノイズをカットする最も良い方法の1つ」と語る。そして「企業のマーケティング戦略に動画を取り入れるために、さらなる時間と労力を費やすことは無駄ではない」と加えた。

動画には”オーディエンスを夢中にする”という利点があり、企業のサイトを面白く魅力的に見せ、ブランドと製品の両方に人を引き付けることができるのだ。

カリフォルニア州メンローパークの動画編集ソフトプロバイダMagistoのCEO、Oren Boiman氏によると、「動画はeコマースに体験的なレイヤーを付加することができる」と言う。さらに「動画を活用することにより、企業は、自社のブランドパーソナリティーを創造することができる。また、顧客との継続的な関係を構築し、信頼やロイヤルティ、顧客とeコマースサイトの価値を高めることが可能だ」と語った。

ここまで動画が浸透した要因の一つに、ユーザーの世代交代が挙げられる。企業との関係において、動画が一つの重要な要素だと考える消費者が増えているのだ。

ノースカロライナ州シャーロットのマルチチャネルeコマースマネージメントソフトウェアプロバイダecomdashのマーケティングチームリーダー、Liz Pekarek氏は、次のように述べた。「誰もが“ミレニアル世代が商業を変えた”と言うが、実は、さらに考慮すべき新しい世代がいる。それはZ世代(1995年から2008年の間に生まれた世代)だ。この世代は、タブレットやスマートフォンとともに成長してきている。YouTubeの爆発的人気や、いろいろな動画主体のコンテンツを見て育ってきているのだ。ミレニアル世代よりテクノロジーに精通しており、企業により高い技術を期待しているはずだ」。

それでは、全体的な戦略に動画を組み込むに、企業は何から始めるべきか。以下に専門家たちの考えを紹介しよう。

 

1.ブランドを構築するために動画を使う

カリフォルニア州サンタアナのカスタムビデオ広告制作会社EcomVidsのCEO、Jon Reyes氏は、動画は本質的にストーリーを語るメディアであるため、「ウェブサイトにブランディング動画を載せることが良い一歩だ」と語る。

具体的には、「ホームページ上にアップするための簡潔な“About Us(会社概要)”の動画を撮影すること、製品ページ用に20秒間の製品デモンストレーション動画を作成すること、顧客の実際の声を撮影した動画を追加すること、独占的なオファーをプロモートする動画を作ること、サンキューページに購入後の顧客に向けた動画を撮影することなどだ」と、同氏。

動画がブランディングに役立つ理由の1つは、視聴者を引き付ける視聴者に密接な媒体だからだ。

「ブランディング動画によって、顧客との間に信頼と真実性を築くことができる。顧客は、人々がリアルに働く人間味のある会社から購入したいと考えるもの。顔のない店舗からではない」とReyes氏。

ブランディングのために動画を使用する魅力の一つは、それが会社の内部の仕組みを垣間見せることができるということだ。

「企業は動画を使うことで、ブランドをよりよく紹介することができる。そしてより個人的なレベルで顧客とつながることができる」と決済サービスプラットフォーム企業FastSpringのLueck氏は述べた。「どの会社も文字や静止画では説明しきれない独自の文化がある」。「顧客は、自分の好きなブランドがどのように運営され、顧客エンゲージメントや販売、従業員募集をどのように行っているか、動画によって“舞台裏”を垣間見ることができる」と話す。

 

2.広告やマーケティングに動画を組み込む

動画は、広告やマーケティングに非常に適したメディアである。

「FacebookやInstagramに広告を掲載していないなら、今すぐ始めるべきだ。これらのプラットフォームの広告インベントリは、年々徐々に飽和してきているとはいえ、何十億人に届く大規模なプラットフォームを利用しない手はない。独自のコンテンツを作成し、ターゲットオーディエンスに直接訴えかけることが重要だ」と語るEcomVidsのReyes氏。

広告動画を使用することに加えて、マーケティング計画全体に動画を組み込むのが望ましいと考える。

同氏は「Facebook Liveなどの間接的なビデオマーケティングや、ソーシャルメディアのページに、教育的または面白い動画コンテンツを投稿することでフォローワーを増やし、それを維持することができる」と述べた。さらに「動画プロモーションは、期間限定セールや休日のプロモーションを紹介するなど、視聴者の関心を引く良い方法でもある」とも語る。

 

3.製品動画の投稿

製品の使用方法や特長を動画で紹介することは、ビジネスを促進するために役立つもう一つの重要な動画活用方法だ。バージニア州の製品動画プロダクション企業Micromercialのオーナー、Joshua Hall氏は、「多くのクライアントからのフィードバックによると、多くの顧客がeコマース企業のウェブサイトや広告の動画を見た後、製品の機能をよりよく認識していることがわかった」と話す。

「顧客は取扱説明書を読むよりも、実際に使いながらその機能を紹介するような動画を観る傾向が強い」と同氏。「製品動画は、eコマースビジネスにおいて、競争に勝つための1つの方法だ。競合他社が製品の静止画を表示している中、実際に使用方法を見せ、主要な機能を紹介する製品の動画を流す企業があるとする。その場合、動画を駆使した企業の製品の方が売れる可能性が高いだろう」と加えた。

動画には注目を引きつける力があるため、購入者や潜在的な購入者は、企業サイトの製品情報ページで、静止画だけのページをスクロールするよりも、(動画の閲覧に)より多くの時間を費やすと言われている。

「製品のカタログを見るのには数秒しかかからず、レビューやブログを読むのには1分もかからない。しかし、動画を視聴させることにより、サイト上に顧客をより長時間留めておくことができるのだ」とLueck氏は説明している。

動画の使用を決めたら、次はそれを定期的に配信することが重要になってくる。そうすることにより、顧客も次の動画を期待して再びサイトを訪れるようになるからだ。

「ここで重要なのは、一貫性だ」とEcomVidsのReyes氏。「オーディエンスの関心を引き続けるには、新しい動画コンテンツを定期的に掲載する必要がある。言うのは簡単だが行うのは難しい。というのも、それはビジネスにおいて動画コンテンツを優先させつつ、日常のルーティーンにそれを組み込まなければならないからだ」。

また専門家たちによれば、これから動画を活用しようとする場合、実際に効果があるチャネルを少数に絞り込み、それらのみに注力することを推奨している。

「eコマース企業が動画を使うには無限の方法がある。しかし、1つの動画とチャネルに重点を置き、一度にすべてをやろうとしないことが大切だ」とReyes氏は語った。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の7/16公開の記事を翻訳・補足したものです。