Facebookは「F8カンファレンス」でFacebook、Instagram、Messengerの各プラットフォームに追加されるいくつかの新機能を発表。また、同社がどのようにAI活用法について深く掘り下げた。
2018年5月1日(現地時間)から2日間にわたり、Facebookは開発者向け年次会議「F8カンファレンス」を開催。Facebookの共同創業者兼会長兼CEOのMark Zuckerberg氏は、初日にステージに上がった。彼はまず、Facebookにとってプライバシー問題がいかに重要であるかを再度言及。米議会の公聴会で証言しなければならなかったことについてジョークを語った後、Facebook所有の複数のプラットフォームにおける新機能を発表した。
カンファレンス2日目は、FacebookのCTOである Mike Schroepfer氏による、同社のAI活用法についての基調講演でスタート。Facebookの「Pytorch 1.0(オープンソースのAIフレームワーク)」の最新版リリースに加え、Facebook、Microsoft、Amazon Web Services、IBM、Intelなど数多くの他企業とのコラボレーションであるオープンAIプラットフォーム「ONNX」のアップデートを発表した。
2日間のカンファレンスでFacebookが発表した項目は、以下の通りである。
履歴消去機能
Facebookは、ユーザーがFacebookプラットフォーム上の閲覧履歴を消去するためのクリアヒストリーツールを公開する予定だ。Zuckerberg氏は「ユーザーのFacebookエクスペリエンスを低下させる可能性があるが、履歴を消去するかどうかの判断はユーザーに委ねられるべきだ」と述べた。
Watch Party
「Watch Party機能」とは、複数のユーザーが同じ動画を同時に視聴し、コメントすることを可能にするビデオツール。現在は少数のベータ版ユーザーのみがツールにアクセスできるが、将来的には、サービスの提供を拡大していく予定だ。
GroupsタブとJoin Groupボタン
Facebookは新しくGroupsタブをリリースし、Groups機能をFacebookエクスペリエンスの「中核」とすることを目指す。また、開発者がFacebook以外のWebサイト、eメールなどに設置することができる「Join Group」ボタンを展開予定。
デート機能
ユーザーは間もなく「デート機能専用プロフィール」へのオプトインが可能になる。そして、同じくFacebookの運営するデート機能プラットフォームにオプトインしている友達以外のユーザーにつながることできるようになる。マッチングは、ユーザーのプロフィール情報に基づいて行われる。
Instagramには、デザインのアップグレードが行われ、各コンテンツチャネルを中心としてExplorerセクションを編成予定。また、1対1とグループのビデオチャット機能やARカメラエフェクトといった新機能も追加される。
Messenger
Messengerでは、さらにシンプルで操作性に優れたデザインに一新する。また、ARカメラエフェクトや、Marketplaceの買い手と売り手が異言語間でコミュニケーションを取れるよう支援する翻訳ツール「M suggestions」機能を追加予定。また、Facebookは、広告主を対象としたARエクスペリエンス提供するめ新機能をビジネスユーザー向けに開始する予定である。このAR新機能は現在、自動車メーカーであるKia、Nike、美容関連小売チェーンであるSephoraなどの少数のブランドを対象にクローズドベータ版を提供中だ。
FacebookのメッセンジャープラットフォームであるWhatsAppには、ARカメラエフェクトとグループビデオコール機能が追加される予定。また、Zuckerberg氏は、4月30日の退社を発表したWhatsAppのCEO、Jan Koumに感謝の意を表した。Zuckerberg氏は彼の実績に深く感謝していると語った。
Facebook Analytics
Facebook Analytics(Facebook広告の分析ツール)は、ユーザー行動についての匿名集計データをビジネスユーザーに提供するモバイルアプリ。Facebook Analyticsによって、オムニチャネルのデータとレポートを把握することが可能だ。新機能は、コンバージョンへの経路を特定するための自動検出ファネル、オーディエンスインサイト、コンバージョンファネルインサイトを含む。
Instant Gamesでのアプリ内購入
Facebookはカンファレンス初日、AndroidとFacebook.comのInstant Gamesプラットフォーム(Facebookニュースフィード上やMessengerでゲームが楽しめるプラットフォーム)で、アプリ内購入(IAP)が利用可能になったことを発表。公式には申請プロセスは2018年5月7日に開始されることになっているが、開発者は申請前にIAPの実装プロセスに関する公開ドキュメントにアクセスすることができる。
デベロッパー提供アプリのレビューを再開
Facebookは、Cambridge Analytica危機(個人情報不正流用スキャンダル)の影響でアプリレビューを停止したが、2018年4月18日にInstant GamesとMessengerアプリのレビューを再開した。カンファレンスのオープニングでMark Zuckerberg氏は、Facebookがすべてのアプリのレビューを再開し、アプリのレビュープロセスのアップデートを行ったと語った。
Facebookログインのアップデート
ユーザーのプライバシー保護のためのさらなる試みとして、Facebookのアプリログインに関するルールの新たなアップデートが発表された。アップデートには、ユーザーデータへのアクセスについての制限強化、トークンの有効期限管理、個人データ削除のコールバックURL、事業統合の明確化が含まれる。
Facebook Workplacesの統合
Facebookのビジネス向け業務マネージメントプラットフォームである「Workplaces」については、HubSpot、Marketo、Adobe、ADP、PayChex、SurveyMonkeyなどの新しいサードパーティとの統合を発表した。
AR Studioのアップデート
Facebookは、同社プラットフォーム上でのAR(拡張現実体験)作成ツールであるAR Studioの新バージョンをリリースした。最新版には、ARアプリを提供するSketchfabのARモデルの検索ライブラリが統合されている。
Facebook Business SDK
Facebookは従来のFacebook Ads SDK(ソフトウェア開発キット)を、新たにBusiness SDKに置き換えた。Business SDKは、Business Manager API(アプリケーションプログラミングインターフェース)、Marketing API、Pages API、Instagram APIを含む多数のFacebook APIにアクセスできる「ワンストップショップ」となっている。
Oculus Go
Facebookはカンファレンス初日、同社のVRヘッドセット「Oculus Go」を出荷したと発表。Oculus Goには1,000以上のアプリがプリインストールされており、価格は199ドル。F8の出席者には無料でこのOculus Goが贈られた。
Developer Circles 2018 Community Challenge
カンファレンスの2日目には、Developer Circles(Facebookが支援するエンジニアコミュニティプログラム)コミュニティを対象に、2018年Community Challengeハッカソンをスタートした。参加者は賞金30,000ドルを目指し、Facebookのデベロッパー向けプロダクトを1つ以上使用し、ソリューションを開発。
2007年にサンフランシスコで初めて開催された開発者向けイベント「Facebook F8カンファレンス」は、2018年で11回目を迎えた。今回のイベントでは、50以上のセッションが開催され、5,000人以上の開発者が参加している。
Cambridge Analytica危機以来、Facebookはアプリポリシーの再検討に迫られ、Facebookアプリ開発者コミュニティにとっては困難な日々を迎えている。同社はアプリレビュープロセスを完全に停止しただけでなく、アプリ開発者が利用できるユーザーデータ量を大幅に制限し、ユーザーがアプリを一括して削除できるツールを展開した。
※当記事は米国メディア「Marketing Land」の5/3公開の記事を翻訳・補足したものです。