2017年12月11日、音楽認識アプリShazamを400万ドルで買収したことを認めたApple。今回の買収は、2014年に米のオーディオ機器ブランドBeats Electronicsを30億ドルで買収して以来の、同社最大規模の買収である。

モバイルアプリの黎明期を支えたアプリの一つだったShazamは、Appleにとって重要なブランドであった。今回、モバイルマーケティング専門家たちに、この買収が両社にもたらす意味と業界全体にもたらす意味についての考えを聞いた。

 

「これからも多くの消費者はモバイル機器を通じて世界と繋がるようになってくる。この買収は、顧客のための買い物というより、Shazam社が蓄積している膨大な量の消費者行動の傾向データが手に入るという点で価値があるのだ。このようなデータはApple社にとって、製品開発の観点から、また独自のマーケティング戦略を導くという観点から必要不可欠」。

Blis社長Harry Dewhirst氏

 

「Apple社のShazam社買収は、Apple Musicの環境を改善するだけでなく、楽曲サーチをより親密にSiri機能と統合させることも可能になるだろう。Appleはまた音楽認識機能の他に、Shazamの画像認識機能を、拡張現実プラットフォームに組み合わせることができるだろう。実際のところ、Shazamの機能をAppleの他のサービスと組み合わせる事により、消費者の利用環境は向上すると考えられる」。

Forrester社副社長兼マーケティング&戦略部門の主席アナリストThomas Husson氏

 

「AppleのShazam買収は賞賛されるべきだ。潜在的な評価、高水準の投資と期待できる利益についてはすでに多くのことが言われているが、Shazam社は真にグローバルなブランド存在感を持つ英国生まれのソフトウェアであることを忘れてはいけない」。

「Shazamの技術をAppleの既存の製品やサービスに統合する方法はたくさんあるが、プラットフォーム内で最も魅力的なものはデータであろう。毎日500万人以上のShazam利用による消費者のモバイル利用傾向のデータは、2018年以降のGDPR (EUの新しいデータ保護の規制)後の環境では必要不可欠になり得る。Apple社はこれからも強いプレゼンスを維持する為には、今までの様にただビッグデータを保持しているだけではなく、独自のソフトを率いてそのデータの意味を把握する必要がある」。

Machineのマネージングディレクター、Gary Danks氏

 

「これはApple社の音楽ストリーミング界でのリーダーになるという意思の現れだろう。 アーティスト管理会社として、有益なデータや分析をアーティスト、マネージャー、レコード会社にどの程度提供できるかどうかが興味深い」。

ie:musicマーケティング部門責任者、Stephen O’Reilly氏

 

「Shazamは楽しいアプリであり、未知のものを特定するという利用目的もはっきりしていた。初期のマネタイズ方法はタグされた楽曲を買うという簡単なものでしたが、テレビ広告を認識しだした頃から面白くなってきた」。

「ユーザーの利用環境はシームレスというわけはないが、Shazam はテレビ をモバイルデバイスに結びつけてクロスメディアエンゲージメントを高めることを可能にした、初期のモバイルアプリの1つ。この様な機能を利用する消費者とは、より親密な関係を掴める上に、ブランド再生を促し有効性測定の分野においても役立つ。このような機会をAppleがどのように利用していくかに注目している」。

Device Research CEO Alistair Hill氏

 

「私はモバイル業界で半分、音楽業界で半分働いてきたので 、Shazamはいつも心の中の特別な存在だ。Andrew Fischer氏やMiles Lewis氏、Shazamのシニアチームは、達成したすべてのことについて称賛されるべきだ。彼らはすべてのビジネスがモバイルファーストになる前から、モバイル産業の伝道者として活躍してきた」。

「AppleのAI音声サービスデバイスHomePodがAmazonのAlexaとGoogle Homeの両方に遅れを取っており、Apple CarPlayは誕生して3年経つものの未だ世に広まっていない状況で 、今後AppleがShazamの技術を統合してどのように音声サービスを加速していくか見るを楽しみにしている。私の個人的な意見ではShazamがこれからもスタンドアローンアプリであって欲しい。このアプリなしでは、お酒の席で音楽について議論になったときに収集がつかなくなってしまうだろう」。

Too Many Dreams創設者/MD Stephen Jenkins氏

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の12/12公開の記事を翻訳・補足したものです。