2017年10月10日(火)世界最大級のスーパーマーケットチェーンWalmartはECビジネスを重視し、次年度は米国で売り上げを40%増やす計画を明らかにした。同社はミレニアル世代の消費者に向け、大手EC企業Amazonに真っ向から挑戦するために一連の主要企業の買収と4,600以上の実店舗を活用する予定。

世界最大の小売業者でAmazon最大のライバルであるWalmartのCEO、Doug McMillon氏は、“デジタルの大手企業”になるという目的をウォール街のアナリストとの年次総会にて提示した。「我々が歴史の転換期にいることは間違いない。ビジネスは変化しており、Walmartも変わりつつある」と同氏は語る。

 

父親向け大規模小売店ではない

「Walmartはオンラインでの食料品事業の積極的な拡大を計画しており、米国では1,000以上の新しい拠点を持つ計画だ」と述べたMcMillon氏。同社はまた、米国内の顧客への配送や、店舗内のピックアップ体験をスピードアップするためのPick Up Tower(オンラインで購入したものを店舗の“タワー”から受け取れるWalmartのサービス)、モバイル決済機能Walmart Payの利用拡大を進めている。

さらに「店舗とオンライン両方でWalmartを利用する顧客は、店舗のみ利用する顧客の約2倍の金額を使う。これまでに実店舗のみ利用していた顧客がオンラインを利用するようになると、店舗内での利用額も増える」と同氏は語った。

米の調査会社Forrester Reseachによると2017年、米の小売市場は3兆5,000億ドルに達すると予市場測され、3.8%の成長率となる。実店舗の売り上げは3兆1,000億ドルで成長率は2%強。EC市場は14%増で、残り4,500億ドルの売り上げを占める。

食料品のオンラインショッピングは、EC分野では未開拓の市場であり、McMillon氏によるとWalmartではここを重要視している。

Walmartは米国の人口の90%をカバーする何千もの店舗から食料品を直接提供し、従業員やクラウドソーシングの宅配サービスDelivなどの外部サービスと協力して、オンライン注文を活用していく予定。

Delivは2017年9月、Walmartとスマートロック(スマートフォンなどを利用して開閉・管理を行う機器およびシステム)の会社Augustとともにサンフランシスコのベイエリアへの冷蔵食品の出荷をテストし始めた。

 

アナリストの関心

Walmartは2016年のJet.comの30億ドルでの買収に続いて、今年に入ってから男性のアパレル小売業のBonobos、アウトドアアパレル会社Moosejaw、女性のヴィンテージアパレル小売業者Modclothを買収し、ECへの進出を発表したことでウォール街を驚かせた。

米のIT分野の調査・助言を行う企業Gartnerのリサーチディレクター兼アジェンダマネージャーのRobert Hetu氏は「Walmartは現状に挑戦するという大きな仕事をしている。可能性に気付くまでにしばらくかかったが、その対応は柔軟だった」と語った。

しかし、米の小売調査会社RSR Researchの業務執行社員であるPaula Rosenblum氏は、Walmart社にとってのEC分野はまだ事業全体のほんの一部じ過ぎないことを認めている。

彼女はまた「米の小売業者Targetのようなライバルの大規模小売店も、ECによる急上昇を見せている」と語る。会計年度2018年上半期中、WalmartはEC売上高が前期12%増に対して62%増を記録した。

Walmartの米国EC事業のCEOであるMarc Lore氏は「どのように買い物したいのかにかかわらず、私たちは顧客がお金を節約するための目的地になりたい」と総会で語った。さらに、Walmart.comのブランドを立ち上げ、ウェブサイトを再設計し、Jet.comを高所得のミレニアル顧客にアピールし、より多くの高級ブランドを呼び込むことに重点を置いている、と付け加えた。

米の顧客経験管理会社InMomentの顧客経験戦略専務理事であるAndrew Park氏は「顔認識からアプリを経由した収益まで、かつてはAppleのようなブランドだけが入っていた小域に最近のWalmartは入り込んでいる。Walmartの革新的技術への取り組みはそれだけ大胆だ」と述べている。

さらに同氏は以下のように語る。「従来のディスカウント小売業者のECビジネスを急激に成長させる計画は、ライバルのAmazonに匹敵する速さでテスト、学習、反復することができる新しいデジタルサンドボックスを作成するという、より大きな戦略の一部である可能性がある」。また、「アメリカに本部を置く多国籍出版社Conde Nastと米の金融グループGoldman Sachsによって出版された2017 Food Love List(2017年好きなものリストのフード部門)にて、ミレニアル世代の好きなブランドに選ばれたWalmart。彼らはこの小売業者が真のECの革新者に移行できるかどうか疑問に思うかもしれない」とも言及。そして、「これらの技術への投資は、正しく行われれば、この陰謀を長期的な忠誠心と信頼に変えることができる。これを成功させる唯一の方法は、顧客と従業員の両方を含むあらゆるビジネスの中心にある人間とのつながりを維持することだ」と語った。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の10/11公開の記事を翻訳・補足したものです。