検索エンジンは、オンライン小売サイト上の関連商品に買い物客を呼び込むための強力なツールである。しかし、収益を最大化し、できる限り最高のショッピング体験を提供するためには、通常、検索エンジンだけに頼るのは最適なアプローチとはいえない。

それよりも、小売業者は検索マーチャンダイジングも活用するべきである。検索マーチャンタイジングは、検索結果をさらにコントロールすることで、検索エンジンでは対応できないことが多いビジネスの目標を実現するのに役立つものである。

そのポイントを裏付けるために、検索マーチャンダイジングの4つの主要な利点と、eコマース小売業者が効果的に活用する方法を検証してみよう。

 

 

検索マーチャンダイジングとは何か

検索マーチャンダイジングは、「サーチアンドダイズ」とも呼ばれ、関連性、買い物客の意図、企業の目標を考慮した方法で検索結果を表示する技術や科学のことである。

通常、検索マーチャンダイジングは、検索エンジンによって生成された結果を、付加価値のある何らかの方法で修正することによって機能する。例としては次のようなものがある。

・買い物客の検索履歴や購入履歴に基づいて、関連が最も高いと思われる商品を強調表示して、検索結果をパーソナライズする。

・利益率の高い製品やブランドを強調したり、宣伝したりする。

・買い物客のコンテキストに基づき、ファセットやフィルターのような絞り込み機能を動的に表示する。


要するに、ただ検索エンジンが生成した結果に頼って製品の表示方法を決めるのではなく、マーケティングや販売目標に加えて、分析、買い物客の行動、その他の文脈的なシグナルを活用して検索結果を高めるのが、検索マーチャンダイジングなのだ。

 

検索マーチャンダイジングの4つの主な利点

検索マーチャンダイジングの基本について説明したところで、この手法がオンライン小売業者とその買い物客にもたらすメリットについて説明しよう。


1. 検索関連性の向上

検索マーチャンダイジングの重要な利点の1つは、買い物客が関連性のある検索結果を見つけやすくなることである。これは、買い物客にとっては自身のエクスペリエンスが向上するので有益であり、企業にとってはコンバージョンが増加するので有益である。

ほとんどのオンライン小売業者は、商品データや買い物客の嗜好が時間とともに変化し、それらの変化を評価し、考慮する必要があることを認識している。適切に調整されたベースラインの検索アルゴリズムは、効果的な検索マーチャンダイジング戦略の基礎となる。しかし、検索マーチャンダイジングが最も効果的なのは、買い物客が頻繁に使用する広範で一般的なクエリ(ヘッドクエリとも呼ばれる)に対して、的確で関連性の高い商品を提供するよう検索エンジンのベースラインの結果が調整されている場合である。

商品カタログ、クエリ、買い物客の行動の変化に適応できるよう、検索エンジンを定期的に評価し、微調整することで、最良の結果を得ることができる。収益、マージン、売上ランク、顧客評価、レビューなどの指標は、検索パフォーマンスと関連性を向上させるために極めて重要である。これらの指標を単独で、あるいは組み合わせてブースト係数として使用することで、高いパフォーマンスと高い評価を得ている製品をすぐに買い物客の目に入るようにすることができるのだ。人気のある商品や有益な商品が買い物客の目に入れば、購入の可能性は高まる。


2.パーソナライズされた買い物客体験

検索マーチャンダイジングは、パーソナライズされた買い物客体験を提供する優れた方法でもある。小売業者は、検索クエリに対して、どのサイト訪問者にも同じ結果を表示するのではなく、クリックストリーム(閲覧者がWebサイトを訪問してから離脱するまでに見て回ったページの記録)エンゲージメント、購買履歴、地域などのコンテキストに基づいて、検索マーチャンダイジングを利用することで、特定の訪問者向けに結果を調整することができる。それには次のような手法が使われる。


・AIと機械学習

AIと機械学習における最近の進歩は、ユーザーの検索意図を判断するために買い物客の行動、検索履歴、関連するインタラクションを正確に分析する、新しくエキサイティングな方法をもたらしている。これらのテクノロジーによって、検索結果の動的なランキングが可能なり、最も関連性の高い商品が常に上位に表示されるようになる。


・買い物客行動データ

クリックストリームデータは、買い物客がサイト内でどのような経路をたどったかについての豊富なインサイトを提供し、そこから買い物客の嗜好や興味に関する情報を得ることができる。購入履歴、カートへの追加、人口統計学的情報などの追加データは、各買い物客の嗜好をより深く把握するのに役立ち、マーチャントはそれを検索結果の調整やランク付けに利用することができる。

買い物客の行動に基づいた検索結果を提示することで、ユーザーは最も関連性の高い商品を目にすることができる。個人データが限られている場合、買い物客全員の行動データを集計するのは素晴らしい方法である。行動データを集計し、買い物客の行動に基づいて検索結果を表示することで、人気のある商品や評価の高い商品を並べ、より幅広いオーディエンスにアピールし、全体的なショッピング体験を向上させることができる。


3.戦略的な製品プロモーション

検索エンジンは通常、「企業がある時点でどの製品を宣伝したいか」を知る術を持っていない。しかし、検索マーチャンダイジングは、オンライン小売業者が検索結果内の商品配置に戦略的な影響を与え、コントロールすることを可能にする。マーチャンダイザー(権限を持つ商品担当者)がコントロールできるようにすることで、検索マーチャンダイジングは、特定の商品やブランドを押し上げたり、埋もれさせたりすることができ、関連性が低いものは強調されない一方で、関連の高い製品やブランドの最大限の可視性が確保される。

このアプローチの強みの1つは、検索結果内の最も有益な位置に商品を固定できることである。これにより、売れ筋商品や販促商品が最大限に露出されるようになる。

さらに、マーチャンダイザーは専用のマーチャンダイジング枠用のコンテンツを提供することができ、そこでは厳選された商品やブランド、カテゴリが目立つように特集され、すぐに買い物客の目に止まる。もう1つの利点は、特定のテーマ、季節、キャンペーンに合わせた商品群をまとめられることである。

この精度の高さによって、買い物客のニーズや嗜好に合った商品を提示する、高度にパーソナライズされたショッピング体験が可能になる。人間味のあるコントロールを活用することで、マーチャンダイザーはビジネス目標を達成し、顧客満足度を高め、コンバージョンを高める検索体験を作り出すことができるのだ。


4.ショッピング体験の向上

効果的な検索マーチャンダイジングは、エンゲージメントを維持しながら、摩擦を減らすシームレスで直感的な体験を提供することで、ショッピング体験を向上させ、最終的にはコンバージョン率を高める。検索マーチャンダイジングは、この分野では以下の点で役立つ。


・ナビゲーションの改善

機械学習のような技術を使えば、サイトは検索クエリに基づいてファセットやフィルターを動的に生成し、たとえば目的の商品へ素早く直感的に誘導することで、ナビゲーション体験を向上させることができる。機械学習やマーチャンダイザーによるキュレーションによって動く視覚的なナビゲーション要素は、検索用語が広すぎて最適な結果が得られない場合に特に有用である。


・視覚的強調

戦略的にバナーを配置することで、重要なブランドやプロモーション、目玉商品などに注目を集めることができる。主力商品、プロモーション、行動喚起を強調し、視覚的な興味を提供し、膨大な商品リストを分割することで、全体的なショッピング体験が向上する。


・高度なクエリ処理

タイプミスの許容、同義語、クエリの書き換えなどの機能は、検索クエリの些細なミスやバリエーションが買い物客のジャーニーを妨げないようにするのに役立つ。買い物客を人気の検索や関連商品に素早く誘導できるオートコンプリート候補に注力することも、投資に値する分野である。これらの各機能は、AIや機械学習を使用する有力な選択肢であり、検索クエリのコンテキストを理解するという付加価値も提供できる。

 

オンライン小売を成功させる検索マーチャンダイジング

検索エンジンは、買い物客が欲しいものを見つけるのに役立つ強力なツールである。しかし、検索マーチャンダイジングと組み合わせれば、それはさらに強力になる。小売業者が検索結果をより細かくコントロールできるようにすることで、検索マーチャンダイジングはコンバージョンと収益を高めると同時に、買い物客にとってよりスムーズでより満足感が得られる体験を可能にするのだ。


※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の8/8公開の記事を翻訳・補足したものです。