株式会社日経BPは2024年5月14日、マーケティング&イノベーション専門メディア「日経クロストレンド」が「マーケティング」「消費トレンド」「テクノロジー」の潮流を見極める「トレンドマップ 2024上半期」を発表した。

 

 

スコアを伸ばしたキーワードランキング

 

23年11月に実施した前回調査との比較で、将来性スコアが最も大きく伸びたキーワードが、消費トレンド分野の「越境EC」で、前回よりも0.27ポイント増の3.67となっている。

経済産業省の調査では、2022年の越境EC市場規模は米国向けが前年比6.8%増の1兆3056億円、中国向けも5.6%増の2兆2569億円と流通額からみても市場が拡大しつつあることが分かる。さらに、24年3月には訪日外国人の数が単月では初めて300万人超となるなど、インバウンド需要は加速の一途をたどっており、今後日本で出合った商品を帰国後に追加購入する際の受け皿として越境ECに期待を寄せる企業の増加が、将来スコアの上昇という形で表れていた。

 

一方、マーケティング分野で、将来性スコアが最も伸びたのは、0.12ポイント増の3.84となった「サブスクリプション型コマース」(以下、サブスク)。定額で使い放題となるサブスクは、動画配信や音楽配信などのソフトに続いて、パナソニックが小型食洗機「SOLOTA」を月額1290円(税込み)で提供しているように、様々な分野での利用者が広がりつつある。最近では、特定のジャンルに向けた“ニッチ化”も進み、例えば花王は24年4月、スキンケアブランド「Curél(キュレル)」で極薄ヴェールをつくる化粧液を、月額3980円(税込み)から定期的に届けるサービスを開始。ブランド初となるサブスク事業で、化粧液を顔などに吹き付ける専用機器とセットで提供している。また、矢野経済研究所は、2024年の国内サブスク市場は前年比4.2%増の9831億円になると予測しており、未だ成長の余地が大きいことが本調査から分かった。

 

経済インパクトについては、前回調査から最も高い伸びを示したのが、マーケティング分野の「パーソナライゼーション」で、0.48ポイント増の3.36となっていた。近年、消費者一人ひとりが自分の趣向に合わせて形や色を選べたり、体質などにマッチするようなカスタマイズサービスが増加傾向にあった。また、以前はパーソナライゼーションといえば、ファッションやクルマなどが中心だったものの、最近は食品業界にも波及していおり、例えばカルビーは、消費者に検査キットを届け、全57タイプの中から一人ひとりの腸内環境にあったグラノーラを定期的に届けるサービス「Body Granola」を23年4月にスタート。24年4月には、管理栄養士とマンツーマンによる食事のコーチングが受けられる付加サービスの提供も開始している。

 

テクノロジー分野の経済インパクトでは、0.32ポイント増の3.32の「生成AI(ChatGPT、Copilot in Windowsなど)」が、伸びで1位となっているのが注目された。ChatGPTの開発元である米オープンAIは24年4月、アジア初となる拠点を日本に開設した他、法人など向けに処理速度を従来の約3倍高速化した大規模言語モデル(LLM)「GPT-4」の日本語特化版を提供することも明らかとなっている。さらに、オープンAIと提携する米マイクロソフトも同月、生成AIによる需要急増を見越して、今後2年間で29億ドル(約4400億円)を投じて日本国内のデータセンターを拡充することを発表していることから、日本での生成AI浸透の期待が調査結果にも反映されたようだった。

 

 

日経クロストレンドについて

 

日経クロストレンド」は、マーケティング戦略や商品開発、新事業創造などの情報を提供するデジタルメディアで、デジタルテクノロジーの進化などで様変わりする企業の新商品開発、マーケティング戦略、事業戦略の最前線をデータと実例を基に報告等を行っている。