世界的なプラスチック・クリーンアップ企業の報告書によると、オンラインショッピングの返品によって、小売業者には何十億ドルものコストがかかっているという。何トンもの二酸化炭素が大気中に排出され、何十億ポンドもの廃棄物がゴミ処理場に廃棄されているのだ。
CleanHub(ブランドが環境にポジティブな影響を与えるためのソリューションを提供するドイツ企業)の報告書によると、オンライン小売業者にかかる返品コストは、2022 年だけでも8,160億米ドルに上るという。
毎年、顧客はオンラインで購入した商品の最大30%を返品しており、これは実店舗に返品される量の3倍に相当する。そして、2,400万トンの二酸化炭素が排出されている。
同報告書は、商品が返品された後、小売業者は再販するよりも廃棄した方が安上がりだと考えることが多いと付け加えた。その結果、2022年には95億ポンドの返品がゴミ処理場に送られることになった。
CleanHubのマーケティング担当副社長Nikki Stones氏は、利便性がオンライン返品件数の不相応な増加につながっていると主張する。「オンラインショッピングはできるだけ簡単にできるように設計されている」と話す。
「購入者は自宅で試着し、もし商品が期待に沿わなければ、ほとんど手間をかけずに返品することができる。一方、店舗での購入の場合、購入者は不要になった商品を物理的に店舗に戻さなければならない」。
また、オンラインショッピングと実店舗での購入には、返品率を高める根本的な違いもある。「オンラインショッピングと実店舗での購入の返品率が対照的なのは、主にオンラインショッピング特有の制約によるものである」と、ニューヨーク州ヘンリエッタにあるSEOコンサルティング会社Makarios Marketingの創設者、Jason Davis氏は説明する。
「消費者は商品と物理的に触れ合うことができないため、フィット感、品質、外観に関する期待にミスマッチが生じるのだ」と同氏は話す。
山積する問題
米国の返品管理会社goTRGが米国を拠点とする小売業者500社以上を対象に実施した最新の返品調査によると、現在、小売業者の49%が、特にホリデーシーズンにおいて返品を深刻な問題だと感じているという。
「この受け止めは、2022年9月以来、実に3,000%近くも増加している。当時、これが深刻な問題であると回答した小売業者はわずか2%であった」と、同社CEOのSender Shamiss氏は述べる。
「オンラインショッピングの量が増加したことと、返品ポリシーによって返品が容易になったことが、この傾向に拍車をかけている」と、同氏。「一般的に、eコマース事業者の返品率は20%から30%の範囲であり、その要因としては、商品に対する顧客の不満、サイズ違い、実際の商品と顧客の期待との不一致などが挙げられる」。
管理されていない返品は、衣料品、電子機器、プラスチック製品といった返品された商品の輸送中や保管中の破損に関連する多大なコストになる、と同氏は付け加えた。
「多くの小売業者は、これらの返品された商品を効果的に管理し、顧客のために完璧な状態に戻すインフラを備えていないため、結局、問題のある商品を大幅に値下げしてリクイデーター(返品商品等を買い取り、中小企業や再販業者などに大幅な割引価格で卸売りを行う企業)に売るか、最悪の場合、完全に廃棄処分することになる」と、同氏は述べる。
「返品された商品がゴミ処理場行きになるのを防ぐためにできることは、小売業者が循環型経済に積極的に参加することだ」と、同氏はアドバイスする。
「返品された商品の大半はすぐに補充することはできないが、リバースサプライチェーン(製品を回収し再利用していく物の流れ)の専門家による再生・修復サービスを通じて新品同様の状態に戻すことはできる。その後、その商品は、元のマーケットプレイスに再出品されか、さまざまな二次マーケットプレイス(リコマース・ソリューション)で販売される」。
「より多くの小売業者が返品管理やリバースロジスティクスサービスを行う企業と連携することで、何百万ポンドもの商品が、ゴミ処理場に廃棄される95億ポンドの返品に加わることなく、もう一度棚に並ぶことができる」と同氏は続ける。
「95億ポンドの返品がゴミ処理場行きになっていることは憂慮すべきことではあるが、驚くべきことではない」とDavis氏は付け加える。「解決策は、品質チェックや即時の補充を統合した合理的な返品プロセスや、商品の可視化を改善して返品率を下げるテクノロジーの活用など、革新的な物流にあるのだ」。
衣料品に対する不寛容さ
CleanHubの報告書では、オンラインショッピングが環境に与える悪影響の大きな要因として、包装も挙げられている。
オンラインショッピングでは、実店舗の4.8倍の包装廃棄物が発生すると同報告書は指摘する。「オンラインショッピングでは、商品がしっかりと保護され、完璧な状態で購入者の手元に届くよう、特別な梱包が必要となる」とStones氏は話す。「小売業者の中には、返品手続きの際には追加の資材を使用するよう顧客に推奨しているところもある」。
同報告書は、小売業者は返品時に元の梱包材を使用するよう顧客に勧める一方で、追加の梱包材について指導しているところもある、と指摘。たとえば、Shoppee(シンガポールに本社を構える越境ECプラットフォーム)は、元の包装が破損している場合は、「商品をしっかりとテープで留め、少なくとも1~2ロールの気泡緩衝材で包む」と顧客に伝えている。
倉庫に戻されると、従業員は商品を開梱し、加工し、再販のために再梱包することが多い、と同報告書は続けている。プラスチック包装廃棄物の約91%は、最終的にはゴミ処理場や環境汚染に行き着き、不必要な包装による悪影響が浮き彫りになっている。
CleanHubの報告書は、衣料品がオンライン買い物客にとって返品の主な原因であるとも指摘している。家電製品の返品率が7%であるのに対し、衣料品の返品率は平均32%である。顧客が返品前に試着するなど一度でも着用した場合は、その商品を再販することが難しくなり、そのままゴミ処理場に送られることが多いという。
返品管理への投資
しかしShamiss氏は、小売業者は返品問題に取り組み始めていると主張する。75%が過去1年間に返品プロセスの強化に投資しており、そのほとんどが100万ドルから500万ドルの投資を行っている、と指摘する。
「さらに重要なことは、90%が前年に比べてこの分野への投資を増やしたと回答したことだ。これらの投資は、高度な返品管理システム、専門のサードパーティ返品管理サービスとの提携、返品ポリシーに関する顧客教育など多岐にわたる」と、同氏は続ける。
「歴史上初めて、返品問題は2022年の8,160億ドルから2023年に7,430億ドルにまで減少した。これは、市場規模の縮小と解釈されるべきではない。逆に、小売とオンラインの売上は、推定で4%~6%増加している。これはむしろ、小売業者が行っている投資が成果を上げていることを示す強力な指標として解釈されるべきである」。
小売業者は、「キープ・イット(返金はするが、商品の回収はしない返品ポリシー)」、信頼できる顧客、部分的な返金、即時交換、即時クレジット、追加の受け取りオプションなどの機能を備えたダイナミック・リターン・ソフトウェアを通じて革新的な返品戦略を展開している、と同氏は付け加える。これらのオプションは、顧客が希望する返品に対してさらなる利便性と選択肢を提供することで、購入後の体験を向上させる。
「最終的に、小売業者は、返金を商品の交換、ストアクレジット、または一部返金に置き換えることによって、リテンションレート(既存顧客維持率)を最大で30%向上させ、売上を確保することができる」と、同氏は続ける。「さらに、適切な返品サービスプロバイダーは、インテリジェントな検出、識別、報告、防止機能を活用することで、1,010億ドルにのぼる不正・権利乱用の返品に対抗することもできるだろう」。
オンライン商品の返品が環境に与える影響に関する詳しい調査は、CleanHubのページで確認することができる。
※当記事は米国メディア「E-commerce Times」の3/13公開の記事を翻訳・補足したものです。