D2Cサイトランキング ― D2Cサイトの定義から紐解いた評価軸に基づく、国内57+海外7のD2Cサイトの評価

 

ブランドが直接消費者とコミュニケーションを取ってモノを売る形態として定着しつつある「D2Cサイト」。しかし、このD2Cサイトだが、そもそもこれが「D2Cサイト」と言う定義があって、それに沿って各企業が活動しているわけではないこともあり、国内外で様々な取り組みが行われている。そのため、「D2Cサイト」の定義について、様々な考え方も存在し、確定的な定義付けをすることは難しい。そこで、今回は、具体的にどのようなサイトがD2Cサイトと定義されるのかを考え、そこから理想的なD2Cサイトとはどのようなものかを整理し、国内でD2Cサイトと呼ばれる59のブランドサイトと海外7サイトを、eccLab独自の評価軸で評価を行いランキングした。同企画は2020年版に続き2回目となる。

 

このランキングはサイトの優劣を明確にすることが目的ではなく、D2Cサイトの定義を具体的なサイト事例を元に改めて考え、理解を深めることを目的としているまた、ブランドの背景情報などは一切考慮しておらず、実情に即していない部分もある可能性がある点もご理解下さい。

 

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D2Cとは

 

D2C(Direct to Customer)は、製造事業者(ブランド)が仲介者を通さずに自社の商品を直接顧客に販売し、また、顧客体験をECサイトやSNSアカウントを介して直接提供する仕組み・形態を意味する。DTC、DtoC、など複数の表記が存在しているが基本的に意味は同一だ。(当記事ではD2Cと表記する。)また、D2Cを行っているブランドをD2Cブランド、D2Cブランドの商品を販売しているECサイトをD2Cサイトと言う。

従来(2000年代頃)のD2Cはテレビやラジオ等のマス広告を使わずに、顧客に商品やブランドのカタログを配布することや、イベントで対面して個客と関係性を構築することを指していた。しかし2010年以降、資本集約型サプライチェーンが主流だった米国において、D2Cというキーワードは、ブランドの購買体験のオンライン化を指すような現在の使い方に変遷していった。そして、ブランドが独自にデジタルネイティブな若年層を中心にInstagramやYoutubeなどのSNSを通じて顧客と強固なリレーションシップを構築することができるようになり、D2Cは一気に加速していった。

しかし一方で、D2Cというキーワードの定義には曖昧さもある。例えば、ECサイトを通した販売を行い、SNSアカウントを持っているブランドが全てD2Cブランドであるといわれることもある。しかしそれは、今流のD2Cの定義では間違いと言えるようだ。

D2Cはブランドが顧客から直接反応を得ることができるデジタル媒体を使って顧客にリーチし、ECサイトで商品を販売することが前提となる。また、顧客と直接コミュニケーションをとって得たデータや示唆を元にブランドをブラッシュアップしていき、その価値を高めていくプロセスも存在しなくてはならない。そのため、例えばブランド設立当初は商品ラインナップが少ないブランドが、ブランド価値の上昇と共に、商品ラインナップを増やしていくような形態を取ることが多いと言える。さらに、D2Cの成功には顧客コミュニティの存在が必須であり、ブランドは顧客間のコミュニケーションも促進させる必要がある。その手段の一つとして、そしてプロモーションの手法の一つとしてもリアル店舗を持つことがあるため、D2Cが必ずしもデジタル上の取引のみであるとも言えない点も注意が必要だ。また、昨今ではD2Cサイトにおいてある程度の知名度を得た企業がAmazonなどの他のオンラインチャネルや、LOFTなどの店舗に販路を拡大するケースも目立つようになってきている。

さらに、今流のD2Cの定義にあてはまる部分も多いが、既にメガブランド化してしまったブランドもD2Cサイトとして取り扱われないケースが多い。例えば、ドクターシーラボ、スカルプD、ユニクロ等がそれにあたり、これらのブランドはD2Cサイト的な施策を多く行っているものの、巨大化し、D2Cブランドを卒業していった成功例と捉えた方が良さそうだ。

こうしてみると、D2Cは、多くの定義に囲まれているものとなるが、ブランド、商品、コミュニケーション、プロモーションの4つの観点においてそれぞれ重要な示唆が隠されていると考えることが出来そうだ。

 

 

D2Cサイトとしてやるべきこと、やってはいけないこと

 

ブランドが直接消費者とコミュニケーションを取ってオンラインでモノを販売したら、全てのケースにおいてD2Cと言えるわけではないことは前述で理解してもらえたのではないだろうか。ここでは、それをさらに深堀りし、ブランド、商品、コミュニケーション、プロモーションの各視点においてD2Cサイトとしてやるべきこと(Do’s)とやってはいけないこと(Don’ts)を簡単な表現で整理していく。

 

ブランド

D2Cブランドは、オンライン上において、メインにカスタマーとコミュニケーションを取る。そのため、リアル店舗以上に、オンライン上でのブランドの世界観の統一は重要だ。

Do’s:全てのチャネルにおいて同じ世界観をカスタマーに伝える

Don’ts:統一した世界観が存在しない

 

商品

D2Cサイトにおいては、カスタマーにしっかりと意思を伝え、分かりやすくサイトを構成する必要がある。そのため、このブランド、そしてこのサイトではどのような商品をどのような意思を持って売っているのかと言う点をクリアにしていく必要があるため、商品ラインナップについて初期フェーズにおいては限定していくことが理想的だ。

Do’s:ロイヤルカスタマーを獲得するまで商品ラインナップを最低限度に厳選する

Don’ts:最初から多数の商品ラインナップをサイトに提示する。

 

コミュニケーション

D2Cブランドは、カスタマーと共にオンライン上でブランドを育てていく必要がある。そのため、オンライン上で、あらゆるチャネルにおいて、積極的にカスタマーとコミュニケーションを取って行く必要がある。

Do’s:カスタマーとのコミュニケーションをオンライン上で積極的に取る

Don’ts:カスタマーとのコミュニケーションをオンライン上で積極的に取らない

 

プロモーション

D2Cブランドは、前述と同じく、カスタマーと共にブランドを育てていくため、プロモーションにおいても双方向性を重視した施策をしっかりと行っていくべきだ。

Do’s:双方向性のあるコミュニケーションをつくることが可能なデジタル媒体をメインに使う

Don’ts:仲介業者に頼らず、テレビCMなど顧客からの反応を直接知ることができない双方向性のない媒体の利用をメインとする

 

 

どのようにD2Cブランドは成果を最大化することが出来るのか

 

D2Cブランドが成果を最大化させるためにはどのようなことをしていく必要があるのかを考えていく。ここでも、ブランド、商品、コミュニケーション、プロモーションの各視点で整理していこう。

 

ブランド

D2Cにおいて商品以上に重要と言えるものがブランド理念やブランドストーリーだ。ターゲットとなる顧客は商品そのものよりも商品が作られた背景や、商品にこもっている理念を重視している傾向がある。そのため、ブランド理念やブランドストーリーを顧客がD2Cサイト上や、顧客接点となるSNS上においても、統一感のあるトーン&マナーで提供し、なおかつ見つけやすく工夫することが顧客のエンゲージメントを高め、顧客獲得・顧客維持に繋がる。また、モノを売るサイトではあるが、D2Cサイトの場合は、ブランド体験を重視するため、必要以上に売り売り要素、例えば大き過ぎるSALEバナーや、キャンペーン表記などは避けるべきだろう。

 

商品

D2Cブランドでは、初期において、ブランド認知から購買へ直線的に誘導していきたいため、顧客が悩むプロセスを最低限にすることが理想的だ。そのため、商品数は当初は可能な限り少なくすることが望ましい。その上で、D2Cの強みである顧客とのコミュニケーションから得られるデータや示唆を基に、商品ラインナップをブラッシュアップしながら再構成していくことが効果的だ。また、サブスクリプションサービスを提供することで顧客維持率を高めることや、 トライアル品を提供することで今まで使ったことのないブランドを利用することをためらう顧客に、よりD2Cブランドを利用しやすい環境を整えることも重要だ。

 

コミュニケーション

D2Cを成功に導くためには、ブランドと顧客のダイレクトなコミュニケーションだけでなく、顧客間のコミュニケーションを促すことも重要だ。この2つのタイプのコミュニケーションをしっかりと構築することで、顧客のエンゲージメントをより強固なものにすることができる。主にオンライン上でのコミュニケーションが主となるD2Cにおいては、口コミやQ&A、チャットなどによってコミュニケーションを活性化していく必要がある。また、商品と直接的には関係ないが関連のあるライフスタイルコンテンツを積極的に発信する、いわゆるコンテンツマーケティングを実践することも重要だろう。

 

プロモーション

D2Cブランドの存在を顧客に周知させるプローモンションもD2Cにとって重要な要素となる。Facebook、Twitter、Instagramの利用だけでなく、最近ではLINEのビジネスアカウントを有効に活用することも重要になってきているようだ。これらのSNS上の広告に加えて、インフルエンサーを利用することでプロダクトを通したライフスタイルの提案が可能となり、ブランドを利用することで得られる体験を伝える有効な手段となる。また、顧客にダイレクトにブランドの世界観を知ってもらうために、リアル店舗を持つことやポップアップショップを開くことも必要になってくる。ただし、D2Cブランドが店舗を持つ目的は体験と顧客同士の交流だ。そのため、リアル店舗の中でも、直営店はカスタマーとカスタマーのコミュニケーションのきっかけをつくる場となるため、D2Cブランドとして重要となるが、取扱店舗は他社ブランドと比較され、同じブランドのユーザーのコミュニケーションを促進させると考えにくく、オススメ出来ない。

 

 

D2Cサイトの評価軸と評価項目、評価方法

 

D2Cサイトにおいてやるべきこと、やってはいけないこと、そして成果を最大化するために必要なことから、D2Cサイトを評価するための評価軸と評価方法を紐解いていくことにする。ここまで説明してきたように、ここでもD2Cサイトの評価軸はブランド、商品、コミュニケーション、プロモーションの4軸と“結果”を併せた5軸で進めていく。また、結果以外の評価軸について3つずつの評価項目を、結果軸は2つの評価項目を設け、合計14項目で評価を行った。結果以外の評価項目については、〇△×(それぞれ2点・1点・0点)の3段階での評価を、結果軸については◎〇△×(それぞれ3点・2点・1点・0点)の4段階で評価を行い、各軸6点満点、5軸合計で30点満点での評価となっている。

それぞれの評価軸の評価項目と評価方法を見ていこう。なお、これらの評価はランキング作成のために便宜上一意的に行っているものであり、取扱商品によっては、意図的に〇となる取り組みを行っていないケースもある等、場合によっては絶対的な指標とならないことをご理解頂きたい。

 

ブランドの評価項目と評価方法

・ブランド理念を分かりやすく発信しているか

〇 ブランド理念/ストーリーのページがある+SNS上にハイライトがある
△ ブランド理念/ストーリーのページがある又はSNS上にハイライトがあるのいずれかに該当する
× ブランド理念は記載されているが、ページがない

 

・SNSアカウント、ECサイトでトーン&マナーの統一感はあるか

〇 SNSとECサイト両方に統一感がある
△ SNSとECサイトに部分的に統一感がない
× SNSとECサイトに統一感がない

 

・売り売り感がSNSアカウント、ECサイトで目につかないか

〇 値段やSALEなどの表記がECサイトの統一感を壊さないように表示されている
△ 値段やSALEなどの表記がやや目立つ
× 値段のSALEなどの表記が目立つ

 

商品の評価項目

・商品ラインナップは適切か

〇 商品数が10以内である
△ 商品数が10以上だがベストセラーの商品が分かりやすい
× 商品数が10以上でベストセラー商品が分かりにくい

 

・サブスクリプションサービスを活用しているか

〇 通常販売と定期購入の両方がある
△ 定期購入のみ
× 定期購入がない

 

・トライアル商品を準備しているか

〇 トライアル品がある/初回割引がある
△ トライアルはないが返品ができる
× トライアルがない

 

コミュニケーションの評価項目

・口コミはSNSアカウント、ECサイトで分かりやすく提供しているか

〇 ECサイトとSNSの両方でそれぞれ分かりやすく提供されている
△ 片方だけで提供されている、もしくは両方で提供しているが分かりにくい
× どちらにも口コミの記載がない

 

・双方向コミュニケーションを分かりやすく行っているか(Q&A)

〇 両方(ECサイトにQ&Aやよくある質問を記載+Q&AをSNSのハイライトに残している)を行っている
△ ECサイト又はSNS掲載のいずれかのみを行っている
× どちらにもない

 

 ・双方向コミュニケーションを分かりやすく行っているか(チャット)

〇 両方(ECサイト上にチャットサービスあり+公式LINEや各種SNSのDMで質問を受け付けている)を行っている
△ ECサイト又はSNSでの質問回答のいずれかのみを行っている
× どちらにもない

 

・ライフスタイルコンテンツによる情報発信をサイト、SNSで分かりやすく行っているか

〇 両方(ECサイトでのブログ/ジャーナル掲載+SNS上でのコンテンツ発信)を行っている
△ ECサイト又はSNS掲載の片方のみを行っている
× どちらにもない

 

プロモーションの評価項目

・SNSアカウントは網羅的に活用しているか

〇 SNSを4つ以上利用している
△ SNSを3つ利用している
× SNSを2つ以下利用している

 

・インフルエンサーによるプロモーションを分かりやすく行っているか

〇 ブランドを利用するインフルエンサーの投稿がハイライトに上がっている/ストーリーでリポストされている
△ ブランドを利用するインフルエンサーがフィードの投稿にある
× ブランドを利用するインフルエンサーの投稿がない

 

・販売チャネルは適切か

〇 オンラインと直営店の両方を持っている
△ オンラインのみを持っている
× リアル店舗での販売は取扱店舗をメインに行っている

 

結果の評価項目

・サイトへのアクセスは獲得できているか

◎ 100万(1M)以上
〇 50万(500K)以上100万未満
△ 10万(100K)以上50万未満
× 10万未満

SimilarWebのMonthly Visit数にて判定

 

・SNSへのフォロワーは獲得できているか

◎ 10万人以上
〇 5万人以上
△ 1万人以上
× 1万人未満

※各社のInstagram公式アカウントのフォロワー数にて判定

 

 

今回評価したD2Cサイト

 

今回評価したD2Cサイトは、国内にて各社が事例等で取り上げているサイトを主にピックアップした。対象は化粧品13サイト、アパレル13サイト、食料品20サイト、その他ジャンル11サイト、海外事例から7サイトのあわせて国内57サイト、海外7サイト、合計64サイトとなる。前回の2020年版から、10サイト削除し、10サイト新規に追加した。(追加サイトはベージュで網掛け)

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D2Cサイトランキング

 

それでは、評価結果とランキングを取り扱い商材カテゴリ別に見ていこう。ランキング作成の元となる各評価軸の調査は2023年7月7日から7月31日に実施した。

 

D2Cサイトランキング詳細データ(一覧データ、及び評価結果詳細エクセル版)はこちらからダウンロードできます。ご利用に際してデータ出典元を明記頂いた上で、ご自由にお使いください。


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化粧品

まずは化粧品カテゴリから見ていこう。

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※前回から追加したサイトはベージュで網掛け。

 

化粧品カテゴリでは、ブランド軸の評価が非常に高い傾向が見られた。また、ブランド軸に続いて商品軸の評価も非常に高いが、これは商品の特性上他カテゴリと比較して数値が上昇しやすい傾向があると言える。なお、前回調査と比較しても全体的にスコアの向上が見られている化粧品カテゴリで1番総合スコアが高かったサイトは、まつげ美容液を主力として、スキンケア・メイク商品を取り扱うPHOEBE BEAUTY UPだ。

5つの評価軸のうち、ブランド軸・商品軸・プロモーション軸の3軸において5点以上となっている。商品数を絞り、まつげ美容液を中心としてプロモーションすることで、他のブランドを押さえ今回調査において化粧品カテゴリの1位になった。2番手はスキンケア商品を取り扱うKINSだ。前回調査時はサプリメントなど、からだの内側からの美容がメインであったために食料品カテゴリとしたが、今回スキンケア商品のラインナップが増加したために化粧品カテゴリとした。また、ブランド軸において6点と化粧品カテゴリらしい結果が見られる。3番手には2つのブランドが並んだ。一つ目は、ヘアケア・スキンケア商品を取り扱うBOTANISTだ。商品軸を除いた項目で非常にバランスの良い評価となっている。二つ目はスキンケア商品を取り扱うNowLdだ。ブランド軸・商品軸の点数の高さがうかがえる。

化粧品カテゴリ全体としてブランド軸の評価が高い傾向にあるのは先ほど述べた通りであるが、反対に結果軸では0点のブランドがいくつか見られるため、今後はECサイトへのアクセスやSNSアカウントのフォロワー数増加がブランド成果を最大化するカギとなるのではないだろうか。

 

アパレル

続いてアパレルカテゴリを見ていく。

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アパレルカテゴリでは、全体的にブランド軸とプロモーション軸の評価が高い傾向が見られた。一方で、商品軸の評価はアパレルの特性上、他カテゴリと比較して全体的に低い傾向となった。なお、アパレルカテゴリで1番総合スコアが高かったサイトはオーダーメイドスーツを取り扱うFABRIC TOKYOだ。

FABRIC TOKYOは全ての評価軸においてバランスの良いスコアを記録しており、特に商品軸ではアパレルカテゴリ内で唯一の3点となっている。アパレルカテゴリは上述のように全体的に商品数を絞り込んだり、サブスクリプションやトライアルを行ったりすることが難しいが、FABRIC TOKYOではその辺りの対応を丁寧に行っているのが印象的だ。2番手はヴィンテージ品を取り扱うAmeri VINTAGEだ。Ameri VINTAGEはプロモーション軸と結果軸の評価が高い。3番手はレディースカジュアルをメインに取り扱うCLANEだ。CLANEはプロモーション軸が最高の評価となっている。Ameri VINTAGEやCLANEはInstagramのフォロワー数が非常に多いなど、SNSを中心としたプロモーションが結果に結びついたサイトと言える。

アパレルカテゴリの上位はプロモーション軸の評価が高い傾向にあることから、アパレルのD2Cサイトとしての特徴が特に表われた結果と言える。今後はコミュニケーション軸の項目を伸ばしていくことがアパレルカテゴリ全体としての課題となるのではないだろうか。

 

食料品(ここから確認)

食料品カテゴリを見ていく。

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※前回から追加したサイトはベージュで網掛け

 

食料品カテゴリは、結果軸を除いた4軸で全体的に評価が高い傾向が見られた。また、コミュニケーション軸のスコアは海外サイトと並んで今回調査したカテゴリ内で最高となっている。食料品カテゴリで1番総合スコアが高かったサイトは栄養食品を取り扱うBASE FOODと、冷凍食品を取り扱うnoshだ。

この2サイトの評価結果は非常に似ており、ブランド軸・商品軸・結果軸で高い評価となっている。食料品カテゴリは全体的に結果軸の評価が低い傾向があるなか、BASE FOODとnoshの2サイトのみ、それぞれ5点・4点と高い評価になった。また、この結果は両サイトともSimilar Webの月間閲覧数が多いことに基づいており、利用し定着しているユーザーの多さがうかがえる。3番手は栄養食品を取り扱うFUJIMIと豆食品を取り扱うZENBだ。FUJIMIは食品カテゴリで唯一のプロモーション軸6点となっており、評価対象になっているSNS全てにアカウントを持っているのが印象的だ。ZENBは全項目バランスの良いスコアとなっており、非常にしっかりとD2Cブランドとしての取り組みを行っていることがわかる。

食料品カテゴリ全体として、「食品」という直接口にするものだけに、しっかりとブランドや商品について考えられていることが分かる結果となった。今後はECサイトへのアクセスやSNSアカウントのフォロワー数増加が課題となりそうだ。

 

その他

その他のカテゴリを見ていこう。

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その他のカテゴリはアパレルカテゴリと同様に、ブランド軸・プロモーション軸の評価が全体的に高い傾向が見られた。なお、その他のカテゴリで1番総合スコアが高かったサイトはペットペットフードを取り扱うCoCo Gourmetとアウトドア商品を取り扱うsnow peakだ。

CoCo Gourmetは商品軸でその他のカテゴリ唯一の6点と最高評価になっており、トライアル商品やモニター限定商品など、新規ユーザーを取り込む施策に富んでいるのが印象的だ。対するsnow peakは商品軸で0点であるものの、その他の4軸で4点以上のスコアとなっており、D2Cブランドとしての取り組みが盛んであることがわかる。3番手はペットフードを取り扱うPETOKOTO FOODSと靴のインソールを取り扱うTENTIALだ。両ブランドともブランド軸・プロモーション軸の評価が高くなっており、その他のカテゴリ内で共通して見られる特徴がよく表われている。

その他のカテゴリはそれぞれ取り扱っている商品が異なるため、今後の課題に言及するのは難しい部分もある。ペットフードなど競合の多いサービスの場合、他サイトと差をつけるためにはベストセラー商品をわかりやすくECサイト上で表示したり、SNSのフォロワー数を増加させたりすることで、知名度を上昇することが重要だと考えられる。

 

海外

最後に、海外で成功事例として取り上げられているD2Cサイトを見ていこう。

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海外サイトはD2Cの成功事例として多くの記事で取り上げられているだけあって、全体的に非常にスコアが高い傾向が見られる。なかでも特にブランド軸と結果軸が非常に高くなっている。国内D2Cサイトの最高スコアが21点であるため、海外サイトの上位3サイトはそのスコアを上回っていることとなり、全体的な評価の高さがよく分かる結果だ。なお、海外サイトで1番総合スコアが高かったサイトはスキンケア・メイク商品を取り扱うGlossierだ。

Glossierはブランド軸・プロモーション軸・結果軸で高い評価となっている。商品の特性上行っていないサブスクリプションや、チャットサービスなどの双方向コミュニケーションを除けばほぼ完璧に近い対応と言える。2番手はデンタルケア商品を取り扱うquipとアイウェアを取り扱うWarby Parkerだ。quipは結果軸で海外サイト唯一の4点であるが、ブランド軸・商品軸・コミュニケーション軸でそれぞれ5点と安定的なスコアを見せている。Warby Parkerはブランド軸・プロモーション軸・結果軸の3軸で高いスコアとなっており、1位のGlossierと同様に海外D2Cサイトの典型的な取り組みを行っていることが分かる。 

海外サイトは全体的なスコアが高いのが最大の特徴であるが、Q&Aの掲載やチャットサービスなどの双方向コミュニケーションの評価軸でややスコアの低さが目立つ。ユーザーへのサポート強化を図ることで、さらなる成長が見込めるのではないか。

 

 

D2Cサイトランキングから読み解くD2Cサイトの未来

 

今回、2020年に続き、改めて2023年版として、国内外64のD2Cサイトを取り上げ、5つの評価軸からそれぞれ詳細に評価を行った。繰り返しとなるが、このランキング及び記事の目的はサイトの優劣を明確にすることではなく、D2Cサイトの定義を具体的なサイト事例から改めて考え、理解を深めることにある。そのため、成功しているD2Cサイトというのはどのような取り組みを行い、どのようなことを意識しているのか、その成功要因を理解していっていただければ幸いだ。また、それを元に今後伸ばしていくべきポイントも改めて考えるきっかけとして欲しい。

D2Cの発祥であるアメリカのサイトはどの評価も非常に高い結果であったが、それらを参考として取り組みを進めていくことで、今後日本国内のD2Cサイトもより進化を期待できるのではないだろうか。

国内のサイトにおいて、前回調査と比較して総合スコアが上昇したブランドの大半に共通して見られた特徴は、商品の売り売り感の軽減・ECサイトと各種SNSの統一感上昇・商品ラインナップの明瞭化の主に3つであった。ユーザーがどの媒体からアプローチしても同じ情報が得られる点が評価の上昇に繋がったと考えられる。反対に、総合スコアの減少がみられたブランドに共通していたのは、口コミの掲載中止・トライアル商品の提供中止が多かった。しかし、これらの点については前回調査時よりブランド自体が大きくなったことで、安定した顧客を得ることができ、あえて口コミの掲載取りやめや、トライアル商品の提供中止などの戦略を行っているという可能性も十分に考えられるため、一概にサービスの劣化と表現することはできない。

D2Cサイトは、InstagramをはじめとしたSNSの浸透により、ブランド側が顧客とコミュニケーションを取りやすくなり、同時にプロモーションへの活用も容易となってきている。その結果、従来のマス媒体を中心とした一方的なブランドからの情報発信を行う時代は終わりを告げた。このことは、前回調査と比較して大半のブランドがSimilar Webの月間閲覧数や、対応しているSNSの種類及びそのフォロワー数が増加していることからも明らかである。

D2Cサイトは、これからのデジタル時代の新たなブランドの形、そして新たなECのスタイルを作り、その勢いを加速させる存在になるだろう。

 

D2Cサイトランキング詳細データ(一覧データ、及び評価結果詳細エクセル版)はこちらからダウンロードできます。ご利用に際してデータ出典元を明記頂いた上で、ご自由にお使いください。


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