新しいデジタル環境において消費者に影響を与える最大の要因であるレビューとリワード(特典)。ブランドは、このプログラムを取り入れる必要がある。

我々は、「リワードプログラムは低所得者が利用するものだ」という、ネガティブで誤解を招くようなイメージから脱却してきた。私の知っている大富豪の投資家は、航空マイレージを必ず使い、地元の家族経営のカフェのパンチカードやポイントシステムを活用している。ブランドとロイヤルな顧客ベースを構築するという従来のアプローチは、高額消費者に不釣り合いなほどの利益をもたらすポイントプログラムに取って代わられようとしている。このような消費者はお金を使えば使うほど、その分が還元される。買い手と売り手の双方にとって好循環が生まれるのだ。

5万人以上の消費者を対象とした当社の調査では、競合他社がキャッシュバックやポイントのインセンティブを提供した場合、トップブランドへのロイヤリティを維持すると答えたのはわずか3%だった。この劇的な心変わりは、小売プラットフォームにおいて、わずかな価格差の商品数が爆発的に増加していることによって説明できる。非常に多くの取引がオンラインで行われているため、消費者は最もお買い得な商品、最も良いレビュー、最高のリワードになびいてしまうのだ。

リワードは時間の経過とともに蓄積されるため、こうしたプログラムの目的は、顧客、特に最も多額の消費をする顧客との継続的な関係を築くことにある。これは単純な方程式だ。最も価値のあるものを提供することで、顧客は最もロイヤルであり続けることができるのだ。ブランド・エクイティ(ブランドが持つ資産価値)はなくなったわけではないかもしれないが、このより複雑な経営環境において、リピーターにリワードを与える必要性によって見直されつつある。

 

リワードプログラムは至るところにある

スタンプを10個集めると飲み物が無料になる近所のジュース屋から、Amazon PrimeやTarget Circle(米国大手スーパーTargetのリワードプログラム)などの大手まで、リワードプログラムは至るところに存在し、一般の認知度も高い。当社の調査では、およそ80%の人が、購入特典を提供するアプリやウェブサイトを知っていると回答した。ソフトウェア企業のOracleによると、消費者の72%が少なくとも1つのロイヤリティプログラムに加入しているという。

レビューが消費者の選択に大きな影響を及ぼしていることは否定できないが、消費習慣が戦略的なポイント還元を中心にますます変化していることは明らかである。たとえば、Discover Card(米金融機関Discover Financial Servicesが発行するクレジットカード)が期間限定で追加ポイントを付与する特定のベンダーを指定すると、消費者はそこでの支出を増やすようになる。このような戦略的なイニシアチブは、ボーナスポイントによって消費者に利益をもたらし、エコシステム全体を活性化させ、すべての関係者にとってWin-Winのシナリオを生み出すのだ。

ブランドロイヤリティは、消費者が好む特典によっても左右される。Capgemini(フランスに本拠を置く欧州最大のコンサルティングファーム)によると、消費者の69%が他のすべてのリワードよりもキャッシュバックを好み、一方、Merkle(米国に本拠を置く世界最大級のデータマーケティング企業)によると、回答者の79%が割引を好むという。変わらないのは、誰もが自分のロイヤリティを認められ、感謝されることを望んでいるということだ。

 

一番効果的なことは何か?

ロイヤリティプログラムには2種類ある。自社が実施するホスト型プログラムと、リワードエコシステムを提供する外部企業が実施するプログラムだ。どちらを選択するにしても、エンタープライズ・ビジネスである必要はない。

 

「ホスト型プログラム」は企業によって異なるが、おそらく最も馴染みのあるタイプだろう。あるビジネスで十分な金額を使ったり、買い物をしたりすると、同じビジネスから無料アイテムやそれに類するものでリワードとして得ることができる。地元のコーヒーショップであれ、通り沿いのレストランであれ、今ではほとんどすべての中小企業がパンチカードやポイントシステムを導入しており、定期的に来店するとリワードが受けられるようになっている。

 

他方で、ブランドが新規顧客を獲得し、その顧客の継続的な利用に対してリワードを与える「外部ロイヤリティプログラム」も伸びている。このプログラムは、さらに2つのカテゴリーに分けることができる。1つは、食料品や小売業でリベート(払い戻し)を提供するIbotta(米国のモバイルテクノロジー企業)のホスト型リワードプログラムのように、個々の業界や市場セグメントと提携するもの。もう1つは、消費者全体に適用されるものである。

 

私は2番目のタイプのプログラムを「統合型プロバイダー」と呼んでいる。このタイプのリワードプログラムはユニークな方法で進化しており、人々はモバイルアプリを使うことで、さまざまな店舗やブランドにおいて、いつどこで消費したかに基づいてリワードの受け取りや蓄積ができる。

 

勝敗を超えて

過去10年間におけるモバイル利用の急増は、こうした統合型リワード・プラットフォームに大きな可能性をもたらした。当社は、消費者が多様な支出手段からリワードを集めるための主要なチャネルになることを目指している。当初はモバイルゲームに焦点を当てていたが、ガソリンや食料品など、消費者がリワードを求めている他の分野にも進出する予定だ。

統合型プロバイダーの主な利点のひとつは、その累積的な性質にある。これにより、消費者は複数の独立したプログラムを利用するよりも多くのポイントを獲得することができる。消費者が多様なカテゴリーで多くを支出すればするほど、より多くのリワードが得られ、統合型プロバイダーにとってより高い価値が生まれる。その結果、プロバイダーはより多くの特典を顧客と共有する余裕が生まれ、顧客がさまざまなベンダーとの関係を維持できるようになる。要するに、これが、関係者全員が勝者となる好循環を生み出すのだ。

 

入念に下調べをしよう

リワードやモバイルリワードプログラムのためのゲーム分野は、比較的未開拓である。当然のことながら、人々はゲームをプレイするだけでギフトカードを獲得できるという、夢のような話に懐疑的になっている!この目新しさとダイナミックな市場は、ブランドがこうした新興のリワードエコシステムに参入する前に、十分に下調べをする必要性があることを示している。

貴社が外部のホスト型リワードプログラムの利用を考えている場合は、市場が不安定になる可能性があることを知っておいてほしい。新しいプロバイダーが登場しても、すべてのステークホルダーに利益をもたらすバランスがとれなければ、すぐに消えてしまうことが多いのだ。インサイトを収集し、情報に基づいた意思決定を行うには、信頼できるリソースが不可欠だ。アプリインストールのエコシステムにおける主たる貢献者は、主要なパブリッシャーのパフォーマンスインデックスを定期的に公開している。これらのインデックスには、リワードエンゲージメント分野のプレーヤーに関する情報が含まれていることが多く、潜在的なパートナーを確認するための貴重な出発点となる。

 

リピーターへのリワード

消費主義の物語は終わった。もはやブランドロイヤリティだけが問題ではないのだ。地元企業からグローバル企業に至るまで、革新的なリワードプログラムは拡大、進化し、その存在を確固たるものにしている。そして、それは単に選択肢や多様性の問題ではない。

 

リピーターは企業収益の約65%を生み出しており、顧客維持や持続可能な事業成長、市場の差別化において、リワードプログラムが重要な役割を担っていることを裏付けている。それは単なるトレンドではなく、今日の消費者市場において不可欠な戦略手段となっている。この変化を認識し、リワードの力を活用するブランドは、このダイナミックな環境で成功を収め、消費者との関係を強化し、最終的には収益を向上させるだろう。

 

※当記事は米国メディア「Entrepreneur」の7/4公開の記事を翻訳・補足したものです。