マーケティングにおけるパーソナライゼーションは、より魅力的な顧客体験を生み出しブランドに競争優位性をもたらす

 

AlyceのイベントエクスペリエンスディレクターであるNina Butler氏は、MarTechカンファレンスでの講演で、「今日のマーケティングは、もはや注目を集めることではなく、真のつながりを生み出し感情的な共感を構築し、カスタマージャーニー全体を通じて行動を促すことが重要だ」と述べている。

 

ブランドは、かつてないほど多くの顧客とのタッチポイントを持つようになった。Butler氏によると、購買プロセスにおけるブランドと顧客が接点をもつ回数は、2006年の2回から2021年には6回に増加しているという。しかし、その結果、最適とは言えない体験を提供している可能性が多く生じている。

 

「実行されているアウトリーチは、組立ラインのように感じられる」とButler氏。自動化と高度なマーケティング技術によってマーケティング活動が楽になった分、ワークフローのプロセスも増え、その結果、タッチ数も増加している。

 

「つまり、タッチ(接点)はこれまで以上に一般的で、非人間的なものになっている」とButler氏は続けた。

 

マーケティング担当者は、人間味のない顧客体験の問題に対処するために、キャンペーンにおいてパーソナライゼーションに新たな重点を置く必要がある。

 

顧客の「興味」を引くイベントを提供

「次回、60分のソートリーダーシップ・ウェビナーや少人数の懇談会を企画する際には、インタレストベース(顧客の興味、関心や属性に合わせた)な活動を組み合わせることを検討すべきである」とButler氏は述べた。

 

例えば、Butler氏は、ビジネスと子ども向けのコンテンツを別々のセッションで取り上げるイベントをどのように開催したかを紹介した。このように子供のいる社員に配慮することで、参加者は自分らしさを発揮して仕事に取り組むことができるようになった。この会社は、従業員の興味に耳を傾け、会社全体のイベントを従業員中心で進めたのだ。

 

Butler氏は、マーケティング担当者は顧客に対して同じことを行い、エンゲージメントを育むことができるという。

 

出典 :Nina Butler

 

「9時から5時のペルソナと5時から9時の情熱の両方が同じ場に共存することで生まれる刺激というものがあるのだ」

 

ペルソナベースから人物ベースへ

Butler氏は、Tracyという架空の人物を使って、「ペルソナベース」のマーケティングと「パーソンベース」のエンゲージメントの違いを強調した。この女性は、ある企業の最高情報責任者を務めており、余暇にはコミックを集めるのが好きだという。

 

多くのブランドは、Tracyの「ペルソナ」としての役割(大企業のCIO)に注目するが、「人」としての側面(コミックの愛読者)には目を向けようとしないだろう。その結果、彼女の受信トレイは、「Tracyのペルソナに関するいくつかのセグメンテーションルールに基づいて自動化された、一般的で人間味のないタッチで埋め尽くされる 」だろう。

 

出典 :Nina Butler

 

Butler氏によれば、マーケティング担当者は、パーソンベース・プロスペクトによって顧客エンゲージメントを向上させることができる。このような付随的な資質に注目することで、より適切なカスタマージャーニーにおけるインサイトを獲得することができる。この架空のシナリオでは、マーケティング担当者は、職業上のペルソナだけでなく彼女の個人的な関心事に焦点を当てることで、Tracyとつながるチャンスを得ることができる。

 

パーソナライズされたランディングページ体験の創出

「万人に対応するランディングページを作るのではなく、ハイパーターゲティング広告、チームの誰かによるパーソナライズされた動画、組織の苦悩や独自の課題に合わせたコピーなど、カスタム、もしくは、アカウントベースのレベルのランディングページを作ってみてほしい」とButler氏は述べている。

 

十分に文書で立証されたカスタマージャーニーは、マーケティング担当者がパーソナライズされたランディングページで使用できる主要なフリクションや関心事を特定するのに役立つ。そこでの体験では、質問への回答、問題のサポート、顧客が探している関連性の高いコンテンツなどを提供することができる。

 

 

出典:Nina Butler

 

このような顧客向けコンテンツの作成は時間がかかると思われるかもしれない。しかし、特にマーケティングチームと営業チームが連携した時には、顧客との強い結びつきを構築できる可能性がある。

 

「また、営業とマーケティングの連携も非常に重要だ」Butler氏。「連携することで、トップ・オブ・ファンネルのマーケティング・メッセージを、ランディングページにたどり着いたときの顧客体験を反映した形で提供することが可能となる」。

 

動画体験をつなぐクリエイティブ

「特にカスタムランディングページで関連性の高い動画を活用するマーケティング担当者は、ページのコンバージョンが86%以上も増加させている」とButler氏。

「動画は、ブランドがどのような人物であるかを伝え、人々にリアルにアピールするのに役立つ」。

 

パーソナライズされた動画を正しく実行した場合、ブランドが顧客の要望やニーズを気にかけていることを示すことができる。

 

出典:Nina Butler

 

「動画は、人々のパーソナルな時間を提供するためのツールとして十分に活用されていない」とButler氏は述べた。「ブランドは、動画を使って、見込み客に、製品のストーリー以上のものを伝えられる。ブランドのストーリーを伝えることもできる。しかし、ほとんどのブランドは、見込み客に製品や商品、サービスについて紹介するために動画を使用している」と続けた。

 

しかし、マーケティング担当者は、パーソナライゼーションプロセスにおいて、動画に全面的に焦点を当てるべきではない。それはカスタマージャーニーの一部分に過ぎず、そのように機能させるべきものだ。

 

「動画戦略は、提供するソリューションについて見込み客に語りかけるものであってはならない」とButler氏。「動画戦略では、見込み客に対し、ソリューションについて話すべきではない。見込み客が興味あるもの、またはその瞬間に最も関心のあることについて話すべきである」と続けた。

 

「ここでは、関連性が鍵になる」とButler氏は付け加えている。

 

※当記事は英国メディア「Martech」の1/25公開の記事を翻訳・補足したものです。