個別のパフォーマンスとインクリメンタル(増分)パフォーマンスを確認し、マルチ・タッチアトリビューション・モデルを使用して、パーソナライズされたコンテンツのROIを追跡しよう。

 

本記事は、パーソナライズされたエクスペリエンスのROIに関する3回シリーズの第2回目である。初回の記事(オーディエンスの測定)はこちらで読むことができる。

 

パーソナライゼーションをうまく行うことは、最も洗練されたブランドにとっても難題であるが、パーソナライズされたカスタマーエクスペリエンスを提供することは、高成長企業にとっての差別化要素になりつつある。

 

米国のコンサルティング企業McKinseyによると、パーソナライゼーションに優れた企業は、それが平均的と見られている企業に比べて最大で40%も多くの収益を上げることができるという。

 

このシリーズの初回の記事では、パーソナライズされたエクスペリエンスのパフォーマンスについて、顧客が個人として、あるいは顧客セグメント内でどのように反応したかによって測定する方法についてみてきた。

 

パーソナライズされたエクスペリエンスのROIを測定する次の方法は、コンテンツのパフォーマンスとその寄与度を特定のエクスペリエンスの一部として、またはバイヤーズジャーニー全体を通して確認することである。

 

個別のパフォーマンスとインクリメンタル・コンテンツ・パフォーマンス

まずは、最も「ズームイン」した状態で、個々の要素がどのように機能しているかを確認してみよう。結局のところ、ミクロのレベルで何かがうまくいっていない場合、大局的に見ても問題がある可能性があるのだ。

 

個別のパフォーマンスを確認する方法としては、以下のようなものがある。

 

・個々のコンテンツやチャネルがどのようなパフォーマンスを出しているか。

・バイヤージャーニーにおける個々のステージでのパフォーマンス、あるいはオーディエンスセグメントごとのパフォーマンス。

 

また、インクリメンタル(増分)パフォーマンスのアプローチを採るということは、以下の観点から物事を捉えることをいう。

 

・パーソナライズされたコンテンツとエクスペリエンスの提供vs.パーソナライズしないコンテンツとエクスペリエンスの提供。

・クロスチャネルでのパーソナライゼーションvs.単一チャネルでのパーソナライゼーション(またはパーソナライゼーションなし)。

・パーソナライゼーションを利用した単一チャネルのパフォーマンスvs.そのチャネルでパーソナライゼーションを利用しなかった場合のパフォーマンス。

 

パーソナライゼーションには、時間や労力などのリソースが必要である点も重要である。自社に他社よりも優れた成果を得られる分野があるかを確認し、できるだけ効率的に作業を進めることができるようにしよう。

 

マルチタッチ・アトリビューション

「当社の製品やサービスをどのように知ったか」。マーケターであれば、間違いなくこの質問をしたことがあるだろう。また、顧客であれば、この質問を何百万回と聞かれたことがあるはずだ。

 

チャネル・スイッチングとオールウェイズ・オン(顧客と継続的な関係を築くこと)のマーケティングキャンペーンの世界では、顧客が製品やサービスを耳にするチャネルは1つではなく、5つか6つである可能性が高い。一方、彼らはそのうちの1つか2つしか覚えていないかもしれない。しかし、だからといって、顧客がアクセスした6つのチャネルに何の効果もなかったということにはならない。

 

パーソナライズされたコンテンツのパフォーマンスを測定する次なる方法としては、「マルチタッチ・アトリビューション・モデル」を使用することだ。これは、顧客がアクセスしうるすべての方法を考慮し、それらのチャンネルのそれぞれについて、売上への寄与度を決定するものである。

 

・売上に対する単一のチャネルの寄与度。

・コンバージョンを生み出すためのコミュニケーションの最適な順序。

・リフト値(商品リコメンドなどの販促による売上増効果を測定する指標)が最も少ないチャネル(これを削減することで、マーケティング費用を節約できる可能性がある)。

・最大のインパクトを生み出す最適なファーストタッチやラストタッチのチャネル。

 

米国の百貨店経営者で近代広告の父と言われたJohn Wanamaker氏が「広告費の半分は無駄だった。問題はどちらの半分が無駄だったか分からないことだ」と言ったのは有名な話だが、本当の答えはもっと微妙なものかもしれない。

 

マルチタッチ・アトリビューション・モデルを使えば、個々の広告の寄与度がいかに小さくとも、広告の75%は何らかの形でリフトに寄与していたことをWanamaker氏は発見できたかもしれない。

 

パーソナライゼーションのコスト

ブランドは、パーソナライゼーションが単なる付加価値のための取り組みであることを当然視してもいけない。パーソナライゼーションを行うにあたっては、以下のようなコストがかかる。

 

・コンテンツのバリエーションの作成。

・自動化やジャーニーに関する複数のバリエーションの計画。

・これらの取り組みの測定。

・その他のすべての活動。

 

パーソナライズされたカスタマーエクスペリエンスの提供に価値がないという訳ではない。とはいえ、最初から現実的で実用的なアプローチを採ることで、全体を通じてうまく機能するだろう。

 

以下は、検討すべきいくつかのポイントだ。

 

・パーソナライゼーションに必要なコンテンツのバリエーション(文章、画像、ビデオなど)を作成するためのリソース。

・キャンペーン、オファー、エクスペリエンスの複数のバリエーションを管理するためのリソース。

・詳細が変更された場合にどうするか?このプロセスを合理化するために、分類とカテゴライズのシステムが必要となる。

・パーソナライゼーションや測定、分析をサポートするためのプラットフォーム費用。

 

上記のことを言うのは、パーソナライゼーションへのさらなる投資を思いとどまらせるためではない。むしろ、パーソナライゼーションを現実的な考え方で進めることが重要だ。

 

また、パーソナライゼーションを成功させるためには、プロセスやプラットフォームへの投資がチームメンバーにより簡単に受け入れられるよう、段階的にアプローチすることが重要だ。

 

パフォーマンス以外の、パーソナライゼーションの価値を測定する方法

ここまでは、パーソナライゼーションの測定の方法について話してきたが、まだ疑問が残っている。オムニチャネルのパーソナライズされたエクスペリエンスの創出に投資する価値は常にあるのだろうか。

 

英国のリサーチ・アドバイザリー企業Gartnerによると、マーケターの63%が昨年、パーソナライゼーションに苦労していると回答したという。

 

さらに、マルチチャネルのパーソナライゼーションのためのテクノロジーやデータの要件も大規模な変更が必要となるため、デジタルトランスフォーメーションの取り組みの84%が失敗すると言われているのも、おそらくやむを得ないことだろう。

 

では、パーソナライゼーションには多くの潜在的なメリットがありながら、それに伴うコストやリスクも非常に現実的であるという事実を、どのように調和させればよいだろうか。

 

最も成功するのは、実用最小限の製品や継続的に改善を行うシステムなど、リーン(無駄のない)でアジャイルな方法を用いて、段階的に行われるアプローチだ。

 

パーソナライズされたエクスペリエンスがマーケティングとカスタマーエクスペリエンスの未来であることに間違いはない。ブランドがそこにいかに早く到達するかによって、誰がカテゴリーリーダーになり、誰がカテゴリーリーダーであり続けるかの違いが生まれるのだ。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の12/20公開の記事を翻訳・補足したものです。