ブランドが、いかに先進的なモバイルネットワークオペレーター(MNO)と連携して、Cookie廃止によるギャップをファーストパーティモバイルデータで埋めることができるか、Upstream(モバイルコマースプラットフォームを提供する英国企業)の副CEOであるKostas Kastanis氏に話を聞いた。
顧客を理解し、そのニーズを満たす方法を考えることは、モバイルマーケティングの基本だ。ユーザー識別に基づき、顧客の特定の要望に合わせたパーソナライズされたインタラクティブなマーケティングは、今や標準的なものとして期待されている。これは、デジタルマーケティングキャンペーンを通じてオンラインで顧客にアプローチしようとする場合に特に当てはまることだ。
しかし、ユーザー識別はサードパーティCookieと同義であることが多く、この時代がまもなく終わることはあまり知られていない。Googleが2024年後半に新しいプライバシー対策を導入すると、ブラウザ市場の88%はサードパーティCookieによってアクセスができなくなる。しかし、広告主やブランド、小売業者にとって、これはターゲティングとパーソナライゼーションが同じように終わりを迎える必要があるということを意味するものではない。むしろ、ユーザーの心に真に訴える体験を開発するための、より革新的な新しい方法を考える必要がある。そこで登場するのが、「ファーストパーティモバイルデータ」だ。
なぜファーストパーティデータはマーケターにとって優れた選択肢となるのか?
まず、ファーストパーティデータがマーケターにとって黄金の聖杯となる理由を説明しよう。プライバシーと信頼が第一に挙げられる。91%の消費者が、企業の保有するデータ量について懸念を抱いている(出典:The Cookieless World: A Guide for the New Era of Digital Marketing「Cookieなき世界:デジタルマーケティングの新時代へのガイド」、電通、2021年7月)が、ファーストパーティデータは、ユーザーの同意を得て提供される重要な情報のみを収集するため、顧客目線では邪魔な存在となりにくい。また、マーケターにとっても、ファーストパーティデータは、他社からの購入ではなく、直接収集されるものであるため、適切なオーディエンスにリーチする際の精度が高く、コストも抑えることができる。
さらに、ファーストパーティデータは、よりシームレスなユーザーエクスペリエンス(UX)を実現し、より優れたパーソナライゼーションにより、より多くのコンバージョンを達成することができる。実際、顧客の90%は、個人的なつながりがない企業から届くメッセージを煩わしいと感じている(出典:Attitude to personalization among internet users in the United States as of January 2019「2019年1月における米国のインターネットユーザーのパーソナライズに対する考え方」、Statista Research Department、2021年2月)。
また、収益の向上はすべてのブランドの最終的な目標であり、ファーストパーティデータを高度なマーケティングアクティベーション(活性化)に活用する企業は、提供するパーソナライゼーションのレベルが向上した結果として、最大で3倍の収益アップを達成できることが証明されている(出典:Responsible Marketing With First-Party Data In Asia Pacific – A $200 Billion Value Unlock Opportunity「アジア太平洋地域におけるファーストパーティデータを活用した責任あるマーケティング – 2,000億ドルの価値を引き出す機会」、The Boston Consulting Group、2020年5月)。
ファーストパーティデータ収集の障壁を克服するためのMNOとの連携
しかし、ほぼすべてのマーケターが知っているように、ファーストパーティデータは、サードパーティデータに比べ、以前から取得が非常に困難なものである。実際、62%以上のブランドが、ファーストパーティデータの収集と活用に必要なテクノロジーを統合できないことが、データ活用の主な障壁であると回答している(出典:Privacy + Personalization: How APAC brands can responsibly unlock the full value of first-party data「プライバシー+パーソナライゼーション:APACブランドが責任を持ってファーストパーティデータの価値を最大限に引き出す方法」、Think With Google、2020年5月)。その解決策は、モバイルネットワークオペレーターが自由に使える独自のアセットの活用にある。つまり、携帯電話番号(MSISDN)が、適切なテクノロジーのもとで各ユーザーのIDを示す世界的に固有の識別子として機能するのだ。
UpstreamのMobile Identityのような革新的なテクノロジーにアクセスできる先進的なモバイルネットワークオペレーター(MNO)と連携することで、ブランドはユーザーの同意を唯一の要件として、オープンウェブ上でユーザーの携帯電話番号を自動的に認識できるようになる。Upstreamのデータでは、ウェブサイトのゲスト訪問者の最大85%がこの方法で識別ができると報告されている。マーケターは、この識別方法をさまざまな形で活用することができ、最終的には顧客満足度、エンゲージメント、コンバージョン、そしてもちろん収益の向上にもつなげることができる。
ユーザー中心の設計における基本原則の1つは、システムがユーザーに求める労力や思考が少ないほど、そのシステムはより効果的であるということだ。UpstreamのMobile Identityの自動化機能は、まさにそれを可能にするものなのだ。
これまで、ブランドが顧客管理(CRM)データベースの構築のために、顧客の携帯電話番号やメールなどの個人情報が必要となった場合、顧客に情報を手書きで記入してもらう必要があった。しかし、モバイルネットワークを利用したユーザー認証により、このプロセスはエンドユーザー側の簡単な確認作業へと変わる。その結果、Upstreamのデータによると、オプトインコンバージョンは最大で10倍に増加した。
本人識別技術がキャンペーンの効果を高める方法
本人識別技術は、ユーザージャーニーを手軽に簡素化し、迅速でシームレスなキャンペーンを実現する。これは、時間のかかるログインや認証プロセスを不要にすることで可能となる。一度同意すれば、ユーザーは毎回ウェブサイトにログインするという不必要な手間を省くことができる。その結果、企業は個人に関連する情報、オファー、インセンティブでコンテンツを即座にカスタマイズでき、より良いエンゲージメントとより多くのコンバージョンにつなげることができる。
例えば、ユーザーがモバイルオペレーターのウェブサイトで新しい携帯電話を検索したとしよう。オペレーターは、このユーザーが価値の高い顧客であると即座に認識し、分割払いでプレミアムスマートフォンを購入するためのマイクロクレジット(一般の銀行から融資を受けられない人々を対象とした少額融資制度)を提供することができる。
コンバージョン率は、セキュリティプロセスの改善によっても向上させることができる。例えば、多くのアプリケーションでは、ユーザーがアプリを使用する前に、自身の詳細情報を入力し、ワンタイムパスワード(OTP)を使って本人確認を行うことが求められる。同じことは、顧客が購入の会計を行う際にもよく求められる。ところが、OTPを要求された場合、20~30%のユーザーは確認作業をやめてしまうことが証明されている。しかし、モバイルネットワーク上での本人確認であれば、ユーザー認証がバックグラウンドで静かに行われるため、ユーザーに求められる労力を最小限に抑え、コンバージョンを向上させることができる。
また、より効果的なリターゲティングも可能となる。携帯電話番号(MSISDN)をモバイル広告のIDとして使用することで、マーケターは、ファネルから外れたモバイルユーザーに対して、そのユーザーに適した別のチャネルで再エンゲージメントを行い、ファネルのどの段階にいるかに基づいて、メッセージング疲れを回避できるようになる。例えば、顧客がeショップにアクセスし、テレビをオンラインショッピングカートに追加したものの、チェックアウトしなかったとしよう。この場合、顧客は、クリックしてショッピングカートに戻ることができるリンクが記載された自動送信のSMSを受信し、カートに戻って購入を完了させることができる。実際、当社のデータによると、カート放棄のリターゲティングは、何も対応を取らなければ失われるはずだった収益の10%以上を取り戻すことができる。
2024年にCookieが廃止されることから、デジタル広告主はサードパーティデータに代わるものを探しているが、その答えはユーザーのスマートフォンの中にある。UpstreamのMobile Identityを使用することで、消費者をオープンウェブから連れ出し、モバイルメッセージングを通じて消費者とコミュニケーションするために必要な情報を提供し、非常に魅力的なマーケティングキャンペーンの基礎を提供することができる。適切なモバイルネットワークオペレーター(MNO)と連携することで、ユーザー識別はモバイルマーケティングキャンペーンに革命を起こす可能性を秘めている。今こそ、ユーザー識別があなたのブランドにどのような効果をもたらすことができるかを確認すべきだ。
Upstreamの特許取得技術であるMobile Identityの詳細に関する最新のホワイトペーパーは、こちら。
※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の10/14公開の記事を翻訳・補足したものです。