eコマースによって、ビジネスの在り方や製品の価値に対する顧客の認識が変わりつつある。そのための準備が、ビジネスの成否を分けるかもしれない。

 

eコマースは、現代の経済における成長分野である。2020年より前からオンラインショッピングは普及していたが、今回の新型コロナウイルスによるパンデミックによってその成長は飛躍的に加速した。パンデミックにより、2020年から2021年にかけて、米国内だけでeコマースの売上が2,185億3,000万ドル増加したと推定されている。

 

2021年だけでも、米国のセラーによるeコマースの売上は、合計8,707億8,000万ドルに達した。これは、経済学者が2023年まではありえないと予想した数字だった。2021年は、世界中で合計約4.9兆ドルがeコマースに費やされた。

 

eコマースは、将来の経済に有利で重要な役割を果たすことを証明し続けているが、すでにさまざまな形でパンデミックの影響を受けている分野もある。今日のトレンドを理解し、その方向性を見極めることで、自分自身とビジネスが、eコマースにおける将来の成功を目指して、より良い準備をすることができる。

 

eコマース、Mコマース、そしてAI活用

現在のeコマースにおいて最も重要なトレンドは、オンラインショッピングの利用者が増えていることだ。エンゲージメントが高まるということは、潜在顧客が増え、独自の興味やニーズを持つ多様な顧客層が増えるということだ。これは、eコマースに初めて参入する、あるいは事業を強化しようとするブランドや企業にとって、多くの機会を生み出すことになる。

 

パンデミック以来、品薄なこともあり、ブランドロイヤルティは低下し、消費者は以前にも増して新しい製品やサービスを試すようになった。これは主に消費者が利用する機会の多い消費財市場でみられ、消費者は生鮮食品や飲料のブランドをより積極的に試す傾向がある。また、食料品を購入するためにeコマースの利用人数が全般的に増加していることも、この傾向を後押ししている。5ヶ月間で5年分の成長を遂げた分野もある。

 

ユーザーのショッピング体験の改善に人工知能(AI)を利用することも、スマートeコマース戦略に不可欠となっている。企業はデータを購入、収集することで、個々のユーザーに合わせてショッピング体験をカスタマイズし、ユーザーの好みや買い物履歴に応じた商品を提案することができる。AIの分析能力の向上と普及により、このタスクはさらに管理しやすくなり、テクノロジーに投資する意欲のある企業にとっては、より身近なものとなっている。

 

さらに、Mコマースは、企業が注目するべきもう一つの重要なトレンドだ。モバイルコマースまたはソーシャルコマースと呼ばれるMコマースは、ソーシャルメディアプラットフォームを用いて製品の広告や販売を行うことである。これはeコマースの一部で、ソーシャルメディアそのものと並んで人気が増している。

 

FacebookとTwitterはどちらも、企業が製品を販売する方法を統合した。米国では、2020年のeコマース売上の約40%がモバイルでの購入によるものだと報告されている。

 

困難な状況での上昇傾向

前述した通り、食料品部門はeコマースの普及によって、多大な恩恵を受けている。それと並行して、娯楽用品や家財用品もパンデミック中に販売が増加し、eコマースによる恩恵を受けた。それでも、パンデミック後にこれらの分野の上昇傾向が続くかは疑わしい。だが、これらの企業は思いがけない方法でeコマースにより利益を上げる可能性もある。米国に本社を置くホームセンターチェーンHome Depotは、「ネットで申し込み、店舗でレンタルする」プログラムで成功している。

 

医療分野でもeコマースの恩恵がある。モバイルアプリやウェブサイトの普及が、遠隔治療や医療相談に変革をもたらしている。また、迅速な配達で医療製品を提供する企業も、eコマースを利用して、移動に不自由を感じている人々に製品を提供し成功を収めている。場合によっては、患者は薬や医療製品を受け取るために外出する必要がなくなる。

 

しかし、eコマースの成長で最も恩恵を受けているのは、中小企業である。オンラインストアを維持するためのコストや技術的ノウハウのハードルが低下しているため、スタートアップ企業や中小企業でも、グローバルに展開するウェブストアを効果的に運営することができる。

 

小さなことから始める競争

世界経済でのeコマースの重要性は否定できない。また、企業が顧客の支持を維持し、新たな成功の高みへ到達するためには、その動向に対応する必要がある。大企業は新しいテクノロジーの恩恵を受けているが、現代のeコマースのメリットの1つはその力の均一化である。スタートアップ、中小企業、家族経営のオンラインショップなど、これらはいずれも10年前には手に入れられなかった競争上の優位性を獲得している。

 

参入障壁が低く、運営コストも手頃なため、オンラインストアやeコマースというツールは、ほぼ誰でも利用することができる。市場とその傾向を理解していれば、成功の方程式が見えてくるかもしれない。

 

※当記事は米国メディア「Entrepreneur」の9/20公開の記事を翻訳・補足したものです。