不適切なデータで顧客とのメール関係を悪化させないようにしよう。この記事では、パーソナライゼーションの失敗を回避する方法を説明する。

 

最近、3日間で3通のメールを受け取った。それは、企業が「役に立つマーケティング」というコンセプトを真剣に受け止め始めていることを示すものだった。私は、役に立つマーケティングこそがメールマーケティングの未来だと考えているので、これは良い知らせだと思う。

 

しかし、それぞれのメールにはパーソナライゼーションの失敗があり、プロモーションから顧客重視のメールマーケティングへの移行は依然として道のりが長いことを示している。

これらの失敗は、新しいトレンドの終わりを告げるものではなく、メッセージを発信した企業を見捨てるものでもない。しかし、役に立つマーケティングが提供する可能性を実現するためには、マーケターとしてデータと自動化の管理方法を根本的に変える必要があることは明らかだ。

 

3通のメール、3つの問題

メール1Cardly

 

 

このメールの良い点

Cardlyは、「手書き」のグリーティングカードを必要なときにいつでもどこにでも送信できる。このリマインダーメールのコピーは、企業の声と役立つ情報を的確に表現しており、温かく、人当たりがよく、宣伝的ではなく説得力がある。(なぜこれが重要であるかは、前回のMarTech記事「あなたのメールのコピーは説得力があるか、それとも売込み目的か」をご覧いただきたい)。

 

改善すべき点

Cardlyは、9月3日に誕生日を迎える私の母、Joyに誕生日カードを送るよう私に促している。ここまではいい感じだ。しかし、彼女は「1」歳より少し歳が上になるのだ。年齢を入力しなかったので、システムがどのように計算したのかよくわからないが、おそらくデフォルトの数字なのだろう。このエラーは、疑いを抱かせるほど深刻なものではないが、次のメールはそうではない。

 

メール 2: EasyJet

 

 

このメールの良い点

このフライト搭乗前メールには、豊富な詳細情報と注意事項が記載されており、そのすべてが質問に答え、期待を確認し、乗客が空港で不愉快な思いをしないようにするためのものだ。ノートパソコンやモバイルで簡単に閲覧でき、フライト情報もすべて正確だ。

 

改善すべき点

メールの敬称と搭乗者情報が間違っている。搭乗者である私のパートナーの名前が記載されるべきところ、搭乗者の名前ではなく、アカウント保持者の名前(この場合は私の名前)がフィールドに入力されている。

 

なぜ不安になるのか、お分かりだろうか。チケットの名義が間違っていないか?搭乗手続きで問題が起きないか?今年の夏の旅行は大混乱だったため、1つでも間違いがあるとパニックになるのはお分かりいただけるだろう。

 

メール3ClearScore

 

 

このメールの良い点

私はこのようなアカウントの概要をまとめたメールを気に入っている。企業との過去1年間のやり取りを振り返ることができるからだ。また、特別な理由がなければやらないであろう自分のクレジットスコアを確認するきっかけともなる。

 

このメールでは、顧客がメールをクリックし、企業のウェブサイトを訪問するための適切な理由をいくつか提示している。このようなメールは、エンゲージメントを高める開封率やクリック回数を増やし、その後のウェブサイト訪問によるファーストパーティデータを増やすことも可能だ。

 

改善すべき点

冒頭のメールでは、英国の金融テクノロジー企業ClearScoreの顧客になって1年が経過したことに感謝が述べられている。しかし、実際には、私はもっと長い間、この企業の顧客であった。Cardlyの例と同様に、この間違いは、私がこの企業から離れるほどではなく、フィッシングやスピアフィッシングの試みではないかと心配するほどでもない。推測するに、この企業はつい最近このメールオートメーションを開始し、12ヶ月分のデータしか持っていなかったのかもしれない。

 

役立つマーケティングが失敗する

この3つのメールはいずれも、企業とのカスタマー・ジャーニーにおける特定のポイントに向けたものであり、重要な情報を伝え、間接的に売り込んでいるため、役に立つマーケティングの優れた例といえる。

 

しかし、それらはすべて、間違ったデータを抽出したり、持っているデータを間違って解釈したために、ある意味では失敗している。これは、対応するメールプログラムが十分に練られていなかったか、あるいは最近更新され、このようなプログラムが提示しうるすべてのデータの変動要因に対して考慮されていなかったことを示している。

 

これは、良いメールが不適切なデータに振り回されて、顧客とのメール関係を悪くしてしまう、間違った役に立つマーケティングだといえるかもしれない。

 

役に立つマーケティングが重要な理由

私は、プロモーションや情報提供のマーケティングを超えた、このようなマーケティングのアイディアを開発した。それは、メールが販売以上の効果をあげるのに適していると考えているからだ。

 

役に立つマーケティングは、顧客と企業の双方に利益をもたらすため、「Win-Win」の提案と言える。顧客の目的達成を支援すれば、顧客は企業の目的達成を支援することになる。つまり、成功することが分かっているので、私たちの製品やサービスが必要なときに、より頻繁に私たちを頼ってくれるようになるわけだ。

 

このコンセプトは、パンデミックの初期に大きく後押しされた。企業は、ストレスや不安を感じ、ロックダウン(都市封鎖)を強いられ、答えを求めている顧客とつながりを保つための新たな方法を模索したのである。

 

本当に役立つマーケティングは、データと自動化という2つの主要なエンジンで実行される。データは、購入確認、トラブルシューティング、アポイントメントのリマインダーなど、真にユニークで適切なメッセージを作成するためのパーソナライゼーションを提供する。自動化によって、マーケティング担当者はデータベース内のすべてのメールアドレスに対して、このように大規模なレリバンス(関連性)を実現することが可能になる。

 

メールコンテンツは、マーケティングに役立つ企業の顔である。しかし、オートメーションが正しいデータを取得するためには、バックエンドの作業が必要である。この3つのメールの例が示すように、私たちはまだそこに到達していないのだ。

 

メールでのお役立ちマーケティング活用法

有益なマーケティングは、メールプログラムで良い顧客体験をするための重要な推進力である。「今すぐお買い上げください」と発信することが必ずしも正しいメッセージであるとは限らない。

 

メールをより有益なものにするために、このような質問から始めてみてほしい。「当社のメールは、お客様がご自身の目標や目的を達成し、当社の製品やサービスが関わる生活を実現させるために、どのようにお役に立てるだろうか?」。

 

この質問はシンプルだが、その答えと、役に立つメールを作成するために必要なエンジニアリング作業は、複雑かもしれない。

 

メールに含まれる要素は、地域の店舗の場所や営業時間、地域に密着した地図、「購入方法」のアドバイスなど、顧客の目的達成をサポートするものだ。また、メッセージの内容によって、顧客がより適切に商品を購入できるようになり、自分にとって最も適した商品を選択する可能性が高まる。これにより、顧客の満足度が向上し、返品やサービスのキャンセルが減少する。

 

収益と顧客ロイヤリティの両方がかかっている。そのため、自動配信メールではパーソナライゼーションを正しく行うことが必要不可欠なのである。

 

自動化の正確性を監査

役に立つマーケティング、顧客体験マーケティング、ライフサイクルマーケティング、ジャーニーマーケティングなど、呼び方が何であれ、少なくとも年に一度は、すべてのオートメーションを監査し、正しいデータを引き出しているかどうかを確認する時間を取る必要がある。

 

また、パーソナライゼーションに付随するデータの変動要素も考慮する必要がある。EasyJetの例では、名前を間違えることの危険性を強調しているが、これは、ある人が他人のために商品を購入する際に、小売店やeコマース企業が直面する状況である。

 

メールのフィールドが正しいデータと関連付けられていることをチェックしよう。精度を高めるために、トランザクションプロセスの一部としてデータフィールドを1つまたは2つ追加する必要があるかもしれない。

 

役立つマーケティングが成果を生む

おそらく、あなたはこう思っているだろう。「これだけの作業をする価値があるのだろうか?」。

そうだ、絶対にその価値はある。私の会社がLiveclicker(B2Cマーケター向けのリアルタイムメールパーソナライゼーションソリューションのグローバルプロバイダー)と行った調査では、「有用性」のスコアが高いメールほど、顧客がメールを開いて読む可能性が高いことが明らかになった。

 

さらに、KoMarketing(米国のB2Bオンラインマーケティングエージェンシー)の2020年の調査では、役に立つマーケティングの一部である高度なパーソナライゼーションを使用したマーケティング担当者の70%が、キャンペーンで平均200%のROIを獲得したことが明らかとなった。

 

メール監査によって、データの不具合や自動化の暴走を発見し、修正することができれば、それだけでメールプログラムを改善することが可能になる。時間を有効に使おう!

 

※当記事は米国メディア「Martech」の8/31公開の記事を翻訳・補足したものです。