マーケティングの成功のために、避けるべき落とし穴と進むべき王道。

 

マーケティングは、ほとんどの場合、始める前から失敗している。

マーケティングは、あらゆるビジネスの成功にとって極めて重要である。マーケティングが失敗した場合、ビジネスも同様の結果となるからだ。マーケティングの成功を確実にすることは、どんなビジネスにとっても絶対的な最優先事項でなければならない。しかし、それが軽視され、完全に見過ごされていることがあまりにも散見される。

 

マーケティングが失敗するとき

マーケティング組織は、限られた予算と小規模なチームという限られたリソースしかないことで知られているため、失敗は許されない。マーケティングは、ミッションクリティカルな機能なのだ。実体を伴わない表面的なKPI(重要業績評価指標)や、気の利いたタグライン、芸術的な画像は忘れよう。重要なのは、収益と結果を出すことだけだ。

 

驚くにはあたらないが、ほとんどのマーケティングが開始前から失敗する運命にあることには、一貫したいくつかの理由がある。これらの根本的な原因を理解することで、より良いマーケターとなり、負け戦を避け、マーケティングの成功を保証することができるのだ。

 

マーケティングが開始前に失敗する5つの理由

マーケティングが最初から失敗する主な理由のいくつかを以下に紹介する。過去の経験または現在の状況から、これらの1つ以上に心当たりがある可能性が高いだろう。

 

現実離れした期待

予算、時間、スキル、または経験が不足しているにもかかわらず、ほとんどのマーケターはあらゆるキャンペーンの成功を過大評価しており、これまでにやったことのないものであっても、記録的な結果が得られると信じている。

予測と予想は、どちらもマーケターがよく悪戦苦闘することで知られる分野である。予測と予想を怠ったり、過去の実績に基づく現実に即さずに、または潜在的なリスクを考慮せずに予想と予測を行ったりしているからである。

 

ただし、現実離れした期待は、マーケティング組織の中にのみ存在するわけではない。経営層や営業などの他の部署は、マーケティングの有効性についての思い込みをもっていることがよくある。これらの期待を理解し、現実的な期待値を設定することが、マーケティングで成功するための鍵なのだ。

 

フォーカスの欠如

マーケティング活動が失敗する最大の理由は、フォーカスの欠如である。ほとんどのマーケティングチームは、野心的すぎるか、多方面から求められると押し返すことができない。特に少ないリソースで多くを試みることは災いの元だ。米国の作家、心理学教師およびソフトウェア開発の人類学者であるJerry Weinberg氏はこのことを、ジャムを塗るときに、広げれば広げるほど薄くなることから「ラズベリージャムの法則」と呼んだ。

 

より少ない労力でより多くの成果を生み出す。すべてのマーケティングイニシアチブが、その影響と成功の可能性を最大化するためには、全面的な支援を受けることが不可欠である。以前、マーケティングにおける容赦なき優先順位付けの必要性について書いたが、フォーカスを絞ることで得られる多くの利点がある。結果を出しやすいだけでなく、測定と管理もしやすくなるのだ。

 

弱いサポート

必要なサポートなしには、マーケティングは成功しない。優れたマーケティングには、スキルのあるチーム、十分な予算、現実的な時間枠などが必要となる。

多くのマーケティングチームは資金不足であり、目の前にある要求を実行するための予算が不足している。他のマーケティングチームは、人員が限られているため、ほとんど余力のない状態となっている。

理由に関係なく、また、多数の要因があるとはいえ、マーケティングは単独で行うことはできないのだ。

 

2%にフォーカスを当てる

多くの場合、結果はすぐには出ないため、マーケティングの数値化が困難であることは事実だ。ほとんどのマーケティングの一般的なコンバージョン率は約2%であり、これは、見込み客の98%がすぐにコンバージョンに至らないことを意味する。このような事態を想定し、それに応じて見込み客を育てることができるのであれば問題はない。しかし、この普遍的な真実にもかかわらず、ほとんどのマーケターは、その努力と投資の真の結果を実現するために必要なナーチャリングを計画または開発することができずにいる。

 

さらに、即効性のあるインパクトのみを測定しても、マーケティングが生み出す真のインパクトを説明することはできない。マーケティングの成功とは、瞬時の満足感だけでなく、長期的な成長でもあるのだ。

 

過剰なプランニング、あるいは存在しないプランニング

マーケティングチームのプランニングに関しては、過剰なプランニングか、存在しないプランニングの2つに分類される。前者は、あまりにも多くの詳細をマッピングしすぎるため、マーケティングを成功させるための重要な要素である反復と最適化の機能を制限してしまう。後者は、より一般的なもので、チームは単にその時々で考え、セレンディピティ(偶然の幸運)に賭けて成功を祈るだけだ。

 

いずれのアプローチも、成功するマーケティングの信条とはいえない。そして、最適化、調整、および反復の余地を与え、成功の可能性を最大化するためにプランニングを行う必要があり、そこでは「どうやるか」ではなく、「何をするか」を示す必要がある。

 

マーケティングを成功させる5つのルール

マーケティングが始まる前に失敗する主な理由がわかったところで、これらの問題に正面から取り組んでみよう。ここでは、マーケティングを確実に毎回成功させるための5つの原則を紹介する。

 

成功を定義する

行先がわからなければ、どんな道でも行けるといわれている。成功したいのなら、まず成功とは何かを定義するのが大切である。

このキャンペーンまたはイニシアチブの完了時に、どのように良くなっているだろうか?

その結果、組織はどのようにして目標達成に近づくだろうか?

 

重要な要素を特定するために、答えから逆算して作業し、それ以外は無視する。成功の定義がより明確であればあるほど、重要なものとそうでないものを区別するのが容易になる。

 

少ない労力

より多くの成果を得るための鍵は、より少ない労力で行うことだ。フォーカスはマーケティングの最も強力な要素の1つであり、フォーカスを絞れば絞るほど、インパクトの実行、管理、測定が容易になる。

フォーカスには優先順位付けが必要だが、これはほとんどのマーケティング組織にとっての課題である。私は、マーケティングチームが容赦なく優先順位付けすることの必要性について書いたことがあるが、それは、今日のますます複雑化する状況において、かつてないほど重要になっている。

 

戦略レベルでは、フォーカスと優先順位付けが基本だ。戦略レベルでは、テストと検証は、最小限のリソースで結果を最大化するための最も効率的で効果的な方法である。テストはマーケティング担当者の最も強力なツールであり、少ない労力でより多くの成果を得ることを可能にする。

 

リユースとリサイクル

車輪の再発明をする必要はないのに、マーケターはそれを好んで行う。新しいものを作るのをやめ、既存のコンテンツ、アセット、プランなどをリユース(あるいは再目的化)しよう。過去に成功したことを繰り返す方が簡単で確実であるにもかかわらず、新しいもののためにイノベーションを追い求めることがよくある。新しいものは良いものの敵だ。

 

マーケティングにおける最大の過ちの1つは、大きな成功を収めた後、すでに効果があることが証明されていることを繰り返すのではなく、新しい別の何かに移行してしまうことだ。

 

マーケティングイニシアチブを開始する前に、時間、費用、労力を節約するためにリユースまたはリサイクルできる既存の資料やアセットを確認しよう。

 

アラインメントと相乗効果

マーケティングの成功は、チームのアラインメント(連携)、同期、相乗効果を必要とするチームの努力によるものである。チームが共通認識のもとにミッションを理解し、同じ方向に進めるよう支援しなければならない。ツアーグループの添乗をしているときに、はぐれた人が次々と後ろについてきたり、道に迷ったり混乱したり、自分の道を進んだりすることを想像してみてほしい。チーム全員で足並みをそろえ、目的地に向かって全速力で走り続けるようにするのがあなたの仕事である。全員の足並みをそろえ、ともに前進するには、明確なミッション、目標の共有、および継続的な説明責任が必要となる。

 

チームの外でも、組織的には同じことがいえる。マーケティングは、ニーズや方向性を示し、サポートを得るため、営業および最高幹部とコミュニケーションを取り、協力する必要がある。マーケティング機能の成功は、組織内でのつながりとアラインメントの程度に直結している。

 

プロセスを持つ

マーケティングは芸術でも科学でもなく、プロセスである。マーケティングを「起こって終わるイベント」として扱うことは、マーケティングに対する間違った考え方だ。マーケティングのプロセスには決して終わりがないため、それを念頭に置いてマーケティングを設計し、実行しなければならない。

 

すべてのマーケティングイニシアチブでは、その最中とその後の両方で起こること、すなわち、最適化とナーチャリングを考慮する必要がある。この両方を考慮しない取り組みは、常に平均以下の結果を生み出す。

 

マーケティング成功へのカギ

マーケティングには課題が多く、そのいくつかは始まる前に失敗する要因となる。幸いなことに、これらの要因は既知であり、予防可能である。マーケティングで収益と成果をあげたいのであれば、これらの要因一つ一つを真剣に受け止めることが不可欠だ。これらの問題を社内で提起し、それらを認識し対処するための話し合いをしよう。現状を受け入れるという選択肢はないのだ。

 

同様に、マーケティングイニシアチブの成功の可能性を大幅に高めるべく、これらの原則を覚えて適用しよう。これらの原則は時代を超越したものであり、関連するマーケティング活動の種類に関係なく、普遍的に適用できる。これらの原則の1つを採用するだけでも、チーム、有効性、およびマーケティングの成功にプラスの影響を与える可能性があるのだ。

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の7/12公開の記事を翻訳・補足したものです。