マーケティング担当者は、自分の仕事を測定できれば、自分の行動がアウトプットにどのように貢献しているかを示すことができる。

 

「マーケティング担当者が自分の仕事を測定することをいとわなければ、マーケティングにおけるインプットとアウトプットの関係を明確に示すことができる」と、コンテンツマーケティングを専門とするエージェンシー、Marketing Insider GroupのCEO兼創設者であるMichael Brennerは主張している。

 

測定すべきは、固定的なメッセージを何回繰り返したかということではないということを忘れてはいけない。それは、何人がそのメッセージを目にしたかを示すかもしれないが、何人が見込み客から顧客になったかを示すものではない。マーケティングが収益に貢献することを証明するのであれば、その仕事が収益につながるクリック数とどのように結びついているかを示さなければならないのである。

 

どの収益が重要か?

ビジネスでは、四半期ごとの収益、つまり前年同期よりも高い収益を上げられたかという成果を測定する。マーケティングは、どのようにそれに適応することができるか?

 

Brenner氏は、彼のブログ記事 「How to Solve the Challenge of Marketing ROI (マーケティングROIの課題を解決する方法)」でその点に触れている。マーケティング担当者は、どの支出が有効であるかを理解しないまま「予算の半分しか成果につながらなかった」という言い訳をすることはできない。「マーケティングROIの課題を解決することは高度なことではない。単に、成果を測定することが最初のステップである」とBrenner氏は書いている。

 

最も基本的な指標は、同氏が「シンプルなROI」と呼ぶものである。それは、マーケティング活動から得られた収益を測定し、その収益を得るために行った投資を差し引き、投資額で割ったものである。「このシンプルな計算において興味深い点は、「投資」が2回出てくることである。つまりほとんどの組織では、同じ予算からより多くの成果を出せばよいのである。あるいは、より少ない予算で同じ成果を上げればよいのだ」とBrenner氏は言う。

 

「これはトレードオフのための計算でもある。それは、測定可能なリターンが得られないプログラムを中止することを意味する」とBrenner氏はブログ記事に書いている。「マーケティング活動のリターンを測定できないのであれば、単にその投資を中止すればいい。これが、コンテンツマーケティングが効果的な理由だ。(広告に対して)比較的低コストで、測定可能な要素が高いため、コンテンツマーケティングのROIは簡単な計算で示すことができる」。

 

Brenner氏は次のように述べている。「すべての企業がWebサイトというデジタルプラットフォームで、トラフィック、リード、収益のいずれかを生み出している」。「B2B企業であれば、販売のためのリードを生み出している。eコマース企業なら、売上につながるリードである。これらのWebサイトへのトラフィックは、有料ではなく、オーガニックなものである」。「オーガニック・トラフィックから流入するリードは、高い確率でコンバージョンにつながる」。さらに、検索結果からその企業ウェブサイトにたどり着いた場合、単にある検索結果を見た場合よりもその商品を購入する可能性が高くなる、と付け加えた。

 

「シンプルな測定から始めることが重要である。昨年の自社のオーガニックウェブサイトのインバウンドトラフィックやリード、eコマースの収益はどうだったのか、そして今年はより良い数になっているのか?前四半期はどうだったのか、今四半期はどうなのか。私たちは、クライアントのために毎月それらの数値を測定している。トラフィックが減少している、Googleの順位が下がっている、検索での視認性が競合他社に比べて低下しているというインサイトを得ると多くのCMOが驚くことに、私はショックを受けている」と Brenner 氏。「これは、財務的価値に直結することであり、CFOが理解できることである。それにもかかわらず、それを測定し、成果につながるプログラムを実行するマーケティング担当者は極めて少ない」。

 

アクション vs プレゼンス

簡潔に言うと、プロモーションは「アクション(行動)」、コンテンツマーケティングは「プレゼンス」である。それは、測定可能で長期的に成長するものである。

 

「キャンペーン思考とは、予算の75%をビッグ・アイデアに費やし、残りの25%でそれを世に送り出し、”効果があっただろうか?”と振り返ることである。すでに予算を使い切っているキャンペーン思考や一回限りのビッグ・アイデアが成果を上げたとしても、効果を測定する時間がなかったとしたら運が良かっただけということになってしまう」と、Brennerは指摘している。

 

「マーケティング担当者がコンテンツを作成し、顧客と関わり、Webサイトのオーディエンスを構築し、リードのコンバージョンを最大化しようとしている時、何が効果的で何が無効であるかを考えている」と、同氏。それは測定可能であり、CMOの説明責任をサポートし、効果を生んでいない施策をやめるための判断材料となる。「これは、高度なことではない」。

 

Brenner氏は、いくつかのクライアントのキャンペーンを監査した経験を語っている。同氏は、リードや収益を上げるために行ったマーケティングキャンペーンの56%が、全く価値を生み出さなかったことを発見した。「CMOやマーケティング担当者へ私が呼びかけたことは、効果を上げなかったもの、もしくは、効果がないものは容赦なくカットし、それらの間違いから学ぶことで、少なくとも比較的低いレベルから脱し改善することができるということだ」。

 

さらにBranner氏はこう続けている。「さらなる予算は必要ない。不採算のプログラムやキャンペーンの予算を、効果のあるものに再配分すればいいのである。もし効果をあげているのであれば、企業がそれをやめる理由などない」。

 

だからこそ、シンプルな測定方法を作成するべきである。価値の上昇とコストの削減を示すべきなのだ。「それがCEOとCFOの仕事である。CMOは、創造性や測定可能性の欠如を口実にその仕事をしなくていいと考えているが、今日のデジタル世界の現実はそうではない」と述べる。

 

戦術と戦略

ビジネスの悲しい真実の1つは、権限なき責任は失敗をもたらすということである。説明責任を果たすCMOが成功するためには、計画を立案し実行する権限を持たなければならない。

 

「例えるなら、『ケーキを焼けと言った後で、焼き方を指示してはいけない』ということである。もしくは、チョコレートケーキが欲しいと言った後で、使用できる材料は、アップルソースとピーナッツバターだと指示してはいけない」とBrenner氏。ケーキ職人は、ケーキを焼く役割を与えさえすれば、最高のケーキを焼くようになる。

 

これは、戦略と戦術の関係を示している。「戦略とは、ビジネス目標への整合性であり、戦術とはそこに到達するための方法である」とBrenner氏は言う。

 

「CEOとCMOは、同じ方法で測定するか、少なくとも同じ物事に対してプロキシを定義しなければならない。CEOは、収益、利益、株主価値について責任を負っている。そして、そのためには、顧客と従業員を満足させることが必要であることを理解している。CMOは、全く同じことを実行する必要がある」。

 

マーケティング担当者にできること

Brenner 氏は、マーケターができることを4つに分類している。ROIを示すこと、測定可能なものを定義すること、無駄を省くこと、そしてストーリーを語ることである。

 

測定は、クリック・ツー・キャッシュのように直接的である必要はない。「マーケティング担当者は、自分たちがもたらした収益のすべてを示すことは難しいかもしれないが、自分たちが関与し影響を与えた収益を示すことは可能である」と、Brenner氏。「収益を示す数字ではないが、それに近いものである」。ここでマーケティング担当者は、マルチタッチ・アトリビューション・モデリングを利用することができる。長期的に測定できるのであれば、どのタイプを選んでも問題ない。「時間をかけて相対的な価値を測定することで、ROIを示すことができる」と同氏は言う。

 

「マーケティング担当者は、無駄を省かなければならない」とBrenner氏。「マーケティング担当者に割り当てられた予算は、白紙委任状やクリエイティブなアイデアの実験場と見なしてはならない。効果を生まなかったものは精算し、中止しなければならないのである」。

 

「マーケティングリーダーは、マーケティングのビジネス価値を実証し提示するためのストーリーテラーになる方法を学ぶ必要がある。このスキルを身につけ、実行するマーケターはあまりにも少ない」とBrenner氏は続けた。もし、マーケティング担当者がROIを示すことができても、会社の他部門に伝えることができなければ、予算は削減され、請負業者になってしまうだろう。

 

「マーケティング担当者は、予算や市場展望、SWOT分析(強み、弱み、機会、脅威)、損益計算書、予算要求の理由、採用する戦術、結果を示すための施策を作成し、事業計画を立てるべきである」とBrenner氏。「それは、ビジネスプランのシンプルなアウトラインなのだ」。

 

※当記事は米国メディア「Martech」の3/22公開の記事を翻訳・補足したものです。