米国の消費者信用情報会社であるEquifaxは、後払い決済(バイ・ナウ・ペイ・レイター/BNPL)ベンダーに顧客の「ペイ・イン・フォー(4回払い)」ローンの利用状況について、信用格付け期間に報告することを可能にしようとする動きをみせている。しかしこれが、人気の高いBNPLに対する消費者の熱意を冷ましてしまう可能性があるという。

 

「チェックアウトに追加されるいかなるフリクションも、消費者の決済手段の人気に影響を与えるが、これはかなり大きな問題だ」と、カナダ、トロントの「トライ・ビフォア・ユー・バイ(try-before-you-buy)」サービスのソリューションプロバイダ、BlackcartのCEOであるDonny Ouyang氏は述べた。

 

同氏は「クレジットという切り口をメリットとして打ち出したとしても、その影響を乗り越えるのは非常に難しい」と言う。「特に手ごろな価格の商品を販売する小売業者は、コンバージョン率と売上が下落するだろう」。

 

米国オレゴン州ベンドにあるコンサルティング企業、Enderle Groupの社長兼プリンシパルアナリストのRob Enderle氏は、今回のEquifaxの決定によって小売業者が損害を受ける可能性があることに同意している。同氏は「今回のEquifaxの関与により、後払い決済利用による購入の魅力が低下する可能性がある」と語った。「その結果、売上に悪影響を及ぼす可能性がある」。

 

しかし、米国シカゴのMorningstar Research Servicesの財務調査アナリストであるRajiv Bhatia氏は、Equifaxの影響を重視していない。

BNPLプロバイダのビジネスは変わらない。「信用情報機関が後払い決済に関して報告しても、BNPLプロバイダが行う信用照会の基準は変わらない」と述べた。「そして、消費者にとっては、期日通りに支払えば、信用度が上がる可能性がある」。

 

より良いクレジットへの足掛かり

また、Equifaxは、後払い決済ローンの報告は消費者にメリットがある、と主張している。

Equifaxは自社のウェブサイトに、「従来の信用情報に後払い決済を含むプロセスを正式化した最初の信用調査会社として、これを信用情報へのアクセスを拡張するための重要なステップだと考えている」と投稿している。

 

Equifaxが行った、BNPLプロバイダから提供された匿名化した消費者データの調査によると、BNPLローンを期限通りに支払った人の信用度は高まり、消費者の信用構築と信用回復両方の役に立つと付け加えている。

 

「消費者は、期限通りに支払いをすることで信用度が上がり、責任のあるBNPL行動は、自動車ローンや住宅ローンのような別のクレジットを利用しやすくする足掛かりとなる」と、Equifaxの米国インフォメーションソリューションのチーフプロダクトオフィサーであるMark Luber氏は、プレスリリースで語っている。

 

「一般的には、クレジットライフサイクルの早い段階において、消費者は他の従来型のクレジットを利用できなくても、BNPL商品を利用することができる。たとえば、利用期間が短く信用情報がまだ少ない消費者、もしくは信用回復を目指す消費者にとって、BNPL商品を利用することは、責任ある行動を示し、信用を構築または回復する機会となり得る」。

 

しかしOuyang氏は、この急成長期におけるBNPLのセールスポイントの1つは、信用調査システムから外れていることにある、と指摘する。「もし、企業にとって信用格付けに後払い決済が考慮されることがメリットであるとすれば、この5~6年、信用度に影響を与えないことをBNPLの主な価値提案の1つとして消費者に売り込むことはなかっただろう」。

 

小売業者の成功事例

BNPLは、小売業者にとってサクセスストーリーとなっている。米国の調査会社、Forrester Researchによると、BNPLは、2020年から2021年にかけて急増し、このサービスを提供するオンライン販売業者は2020年の26%から2021年には52%に増加した。

この成長の理由の1つはeコマースの拡大であり、もう1つは若い消費者がクレジットカードを敬遠していることだ、とBhatia氏は指摘する。

 

このForresterの調査では、35歳未満の回答者のうち29%が「クレジットカードを使いたくないため」、20%が「購入時にクレジットカードの利息を払いたくないため」、18%が「クレジットカードを持っていないため」BNPLで購入した、とのこと。

 

また、ごく基本的な本能も「後払い決済」の成長に寄与している可能性がある。「すぐに得られる喜びは本能の一部であり、後払い決済はそれを望む人たちにアピールするものだ」と、Enderle氏は言う。「そして、戦略的判断が苦手で債務超過が増える傾向にある人にとっても魅力的である」。

 

また、Forresterは、Affirm(米国)、Afterpay(オーストラリア)、Klarna(スウェーデン)などのフィンテック企業の後払い決済サービスを利用する消費者数が、2020年の4%から2021年の9%と2倍以上に増加したことを明らかにした。支払い方法に後払い決済を最も利用したのはミレニアル世代の17%で、以下Z世代が10%、X世代が8%と続く。

 

「この3か月で購入時に利用した支払い方法はどれか」

(Afterpay、Affirm、Klarna)のいずれかを利用と回答した人

 

ベース:米国のオンライン成人2,767人~23,003人(世代によってサンプル数が異なる)

出典:Forrester Analytics Consumer Technographics Benchmark Survey,2021

グラフの出典:Forrester Analytics Consumer TechnographicsResearch, Inc. | 許可を得て掲載している。

 

「BNPLは、子どもを含む低所得のグループで人気になりつつある」とEnderle氏は説明する。「最初は、子どもの信用度を落とすことになりかねない。一方で、子どもが適切なタイミングで返済すれば、よりポジティブな記録を早く作ることにもなる。つまり、借りる側の行動による」。

 

しかし、Ouyang氏は、「BNPLを利用して買い物をすると信用度に影響が生じることになれば、ミレニアル世代に対するその価値提案は著しく魅力を失う」と主張した。

 

トライ・ビフォア・ユー・バイ

Ouyang氏は、BNPLローンを報告するという動きにより、消費者が「トライ・ビフォア・ユー・バイ」という彼のビジネスに興味を持つと考えている。

 

「我々の調査では、低価格から中価格帯の商品を購入する際、後払い決済を選択する理由が、『今支払える余裕があるかどうかという経済状況』から『商品に関する不確実性』にシフトしていることがわかった」と説明した。

同氏は「試してからの購入は、商品の質やフィット感、サイズ感の不安を解消する」と語る。

前途多難なスタートだったが、現在は良いモデルが運用できているという。「スタート時は非常に困難であった」と認める同氏。「しかし、現時点では、AIによってモデルはかなり洗練されてきている。損失は1%以下だ」。

 

Blackcartでは、商品を送る前に消費者の支払い意思を判断する。同氏は「チェックアウトすると、入力された電話番号が電話会社や政府のデータセットと相互参照し、入力された請求先や配送先が一致するかを確認する」と説明した。「トライ・ビフォア・ユー・バイ・サービスを正しく利用できる消費者か、数百のシグナルを確認して判断する」。

同氏は「すべてが非常に迅速に実行されるため、利用者は気がつかない」と続けた。

「新型コロナウイルスのパンデミックの懸念が薄れてきた今、eコマースは減速している」。「それは、オフラインショッピングの主なメリットである試着してから購入するかどうか決断できるという点に、eコマースは対応できていないからだ」。

 

同氏は「AppleストアからNikeストアまで、『トライ・ビフォア・ユー・バイ』は、常に成功の核の一部となっている」と語る。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の3/22公開の記事を翻訳・補足したものです。