今日のデジタルコマース業界における消費者の期待は、これまでになく高まっている。消費者は不確実性ゆえに、購入ジャーニーの各段階で、リアルタイムでの透明性や正確性、シームレスさを必要としているのだ。

決済時には、シンプルさが最も求められる。フリクションなく正確に、そして瞬時に計算が行われることで、消費者の信頼性が高まり、そして柔軟性のある配送オプションを提供することにより親和性が高まるのである。

 

規模の大小にかかわらず小売業者はテクノロジーを活用すべきであり、全チャネルにわたってPOSシステムをアップデートし、税金を自動計算し、多様なオプションを提供することで、決済プロセスの利便性と安全性を向上させる必要がある。

 

AmazonやEtsyのようなeコマースプラットフォームとオンラインマーケットプレイスの台頭により、デジタルショッピング体験が大きく変わり、消費者の期待値が高まってきた。そして、利便性を重視する次世代のショッピングが生まれたのだ。一方、サードパーティや再販マーケットプレイスで買い物をする消費者が増えるにつれて、詐欺や偽造品に対する消費者の懸念も高まっている。

 

消費者は、自身の支払い情報が全チャネルで自動的に共有されることを期待し、個人情報はトークン化されるか安全なシステムに保存されると思っている。全チャネルにわたってシンプルで安全な決済プロセスを構築することによって、消費者はショッピングと製品に対する高い信頼性を提供してくれる小売業者を探しているのだ。

 

決済体験のあらゆる面への消費者の期待は高まり続けており、大企業も中小企業も決済プロセスの利便性と安全性の改善方法を探している。

 

ここでは、小売業者の決済体験の刷新に役立つベストプラクティスを紹介しよう。

 

クロスボーダー決済の提供

eコマースは、ショッピングを、ローカルや地域的な活動から、世界のどんな場所からも行えるプロセスに変え、まさにグローバルなマーケットプレイスを作り出した。

国際的な顧客基盤を持つ小売業者は、自社POSシステムを、全販売チャネルにおいて一貫した正確な体験として提供し、国際規制に対応すべくアップデートすることを目指している。

 

グローバルコマースは、消費者に対しより多様なオプションを提供する一方で、小売業者にとっては、さらに複雑な工程を生み出している。正しいHSコード(国際貿易商品の名称及び分類を世界的に統一する目的のために作られたコード)の割り当てから、税金、関税、配送料、輸入税を正しく適用するまでにおいて、販売時の透明性を確保することが難しい場合があるだろう。

世界中の顧客にサービスを提供し、信頼され、商品が国境を超えて顧客に届く際に(関税や配送料などの)隠れたコストがかからないようにするために、小売業者は、正確性、透明性、安全性に加え、一貫したレートにするべく、高性能な一連のトランザクションソリューションを導入する必要がある。

販売している国の数、製品の種類、レートや規制に対応できるスタッフによっては、自動化ソリューションが企業にとって最も妥当だといえよう。アイテムの分類、レートの計算、レポート、返品の申告に利用でき、かつ、他のビジネスシステムと統合できるソリューションがある。これにはERP (Enterprise Resource Planning:企業資源計画)、ECM(Enterprise Content Management:企業情報管理)、オンライン小売プラットフォーム、国境を超えたトランザクションライフサイクルの、あらゆる面を管理する簿記ソフトウェアが含まれる。

 

多様な支払い方法の提供

eコマースプロバイダの多くは、VisaやMastercard、PayPal、Apple Payといった一般的な支払い方法を組み合わせて提供している。これは、顧客が、BOPIS(オンラインで注文、店舗で受け取り)のような他の便利なオプションと同じように、決済に関する多様なオプションを必要としているからだ。

 

今日のデジタルファーストの状況では、小売業者は、次世代の支払いプロバイダと提携し、後払いもできる幅広いオプションを提供し、マイクロクレジット(少額融資)やレイアウェイ(頭金を支払って、商品を予約し、残額を月賦で完済したのちに受け取る方式)のような新しい支払いプランを模索している。

 

すぐに購入金額を全額支払いたくない、もしくは、支払能力がないという顧客は、分割払いや低金利または無金利ローンのような金融商品をより利用できるようにもなっている。

 

スウェーデンの後払い決済サービスKlarnaや米国の後払い決済サービスAfterpayAffirmなどと提携し、モバイルや電子機器を購入する買い物客に、クレジットカード以外の支払い方法を提供しているブランドもある。決済時、顧客は「今すぐ購入、30日以内に支払い」や「今すぐ購入、3ヶ月間の分割払い」「最大4年の分割払い」を含む、多様な支払い方法から選ぶことができるのだ。

 

POSシステムの革新

小売業者が決済プロセスを合理化するもう一つの効果的な方法は、従来のデジタル決済プロバイダと提携し、自社のeコマースプラットフォームにワンクリック購入オプションを取り入れることだ。

 

これらのソリューションは、簡潔かつ最適化された決済フォームを利用することで、トランザクションプロセスでかかる時間を短縮し、一貫性があり便利で安全な体験を確実に提供することができる。さまざまなオプトインPOSプロバイダは、顧客が電子メール、氏名、電話番号、住所、クレジットカード番号を入力する最初のトランザクションの後、ワンクリックデジタル決済を利用できるように、顧客データを安全に管理している。一旦、情報が保存されると、その後のトランザクションは高速かつシームレスになり、より簡単に再購入ができる。

 

最先端技術の導入

米国のeコマース検索ソリューションSearchNodeが発表した Ecommerce Trends 2020 survey report(eコマーストレンド2020調査レポート)によると、eコマース企業の44%が、2020年に決済技術を実装、または変更や改善をしようとしていることがわかった。

 

税金の計算から配送料の見積もりまで、決済プロセス内の自動化を行う小売業者は、大規模な顧客関係の改善だけでなく、精度と生産性が向上させることによりバックエンドオペレーションを改善することも可能となる。

 

エンドツーエンドのデジタルコマース体験内での重要なプロセスは、税金がオンラインカート内で、正確でかつ自動的に計算されることだ。このシンプルなステップにより、小売業者は、すべての販売時点で決済時の正確な合計金額を提示することができ、顧客の信頼を得やすくなる。

 

顧客の信頼が高まることに加えて、税務コンプライアンスの自動化は、企業のコンプライアンスリスクを軽減し、バックエンドの効率アップを実現する。

既存のトランザクションアーキテクチャに接続し、エンドツーエンドの顧客体験をより適切に制御し柔軟性をもたらすモジュラーソリューションを考えなければならない。特に決済と税計算の場面では重要だろう。

 

結論

卓越した顧客体験を大規模に提供するためには、消費者の期待の変化を正確に把握しておく必要がある。現代の消費者は、デジタルチャネルだろうが実際の店舗だろうが、シームレスな決済を期待している。

 

プラグインやスケールアップが簡単で、通貨換算や税務コンプライアンスなどのグローバルなバックエンド機能を備えたソフトウェアソリューションに投資することは、顧客満足度を維持し、オンラインでセキュリティを維持するための重要な要素なのだ。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の8/28公開の記事を翻訳・補足したものです。