Amazonセラー向けのイベントAMZ Innovateで、セラーは不満をぶつけると同時にAmazonへの強い執着をみせた。

 

「Amazonのアルゴリズムはゴミだ」と語るのは米国に本社を置くRiverbend ConsultingのパートナーであるLesley Hensell Demand氏。Riverbend Consultingは、Amazonセラー向けにアカウント停止やASIN(Amazonが商品に付与するISBN番号の一種)停止など多くの課題を解決する支援を行っている。同社にはAmazonの元社員が多く在籍している。

 

AMZ Innovateは、2021年11月11日にAmazonセラー向けにニューヨーク市で開催されたイベントで、Amazonのアルゴリズムについて激しい討論が繰り広げられた。その理由は、Amazonセラーは、本質的にあまりにも巨大で説明責任を負う必要のないAmazonとプラットフォームでのビジネスにかなり出資しているからだ。彼らは、気まぐれであまりに不可解な同社の方針決定と執行に翻弄されている。

 

Hensell Demand氏は、セラーが直面している問題を厳しく指摘した。Amazonは、サードパーティ・セラーの価格決定をコントロールしようとしている。例えば、競合他社のウェブサイトでより低価格で販売されている商品があると、値下げを強要してくる。このプロセスはアルゴリズムで自動化されているため、1個入りと3個入りを混同してしまうことも珍しくない。Amazonは「セラーが組織的に高値設定を行った」と判断した場合、さらに罰則を科すことができる。

 

また、売れ筋商品を単純にコピーして、それにAmazonのブランドを付けるという行為も報告されている。Hensell Demand氏によると、Amazonが、売れ筋商品の製造メーカーにコンタクトをとり、その商品を販売していたセラーよりも大量に注文するケースもあるという。

 

セラーとアグリゲーター

AMZ Innovateは、デジタル広告のマーケティングを行うAdbeat(本社:米国)の製品戦略担当バイスプレジデントでAmazonとShopifyの専門家であるJared Orkin氏と、独自のキッチン用品ブランドで成功したAmazonセラーのBrandon Furhmann氏が企画したイベントで、セラーだけが参加したものではない。セラー向けのサービスを提供するパートナーも参加していた。例えば、米国の消費者市場調査会社のPickFuや米国に本社を置きAmazonの監査業務を行うGETIDAなどである。

 

また、ThrasioBoosted(ともに本社は米国)のようなアグリゲーターも多数参加した。これらの企業は、成長するFBA(フルフィルメント by Amazon)セラーを買収し成長させるビジネスを行っており、クロスセリングやクロスプロモーションを可能にする共生型の事業ポートフォリオを開発している。Boostedの共同創業者であるKeith Richman氏は、Hensell Demand氏と同じく、Amazon業界の見通しは暗いと予測をしているが、一筋の光明がないわけではないという。

 

オンライン広告は、ますます値上がりし複雑化している、とRichman氏は語る。サプライチェーン危機は終わりが見えない。今、人材を雇うことは実に困難だ。Amazonの方針決定とルール運用は、呆れるほど一貫性がない。セラーは常にリストから外される脅威にさらされている。また、成功するとAmazonや他社セラーにコピーされるリスクを負う可能性がある。「なぜ、なにもかもがこんなに大変なのか」と同氏。

 

今は困難な状況かもしれないが、Richman氏はバラ色の未来も描いている。同氏は、ソーシャルメディアの影響でデジタルショッピング習慣に大きな変化が起きている、と言う。消費者は、これまでになく新しいブランドを試すことに前向きだ。歴史のある企業はこうした変化への対応に遅れがちだ。Richman氏は「これはほんの始まりだ」という。

 

クリック課金(PPC)、クーポン、キーワード

不安と希望が入り混じったこの状況を背景に、セラーが自社製品をいかにAmazonの検索結果上位に表示させることができるかについて、より詳細な検討がなされた。ThrasioのSEO担当バイスプレジデントであるCasey Gauss氏(大学を中退し、独学でプログラミングを学んだ)は、実用的なアドバイスをした。

 

例えば、Amazon Best Sellerのバッジアイコンを獲得するために、商品を既存カテゴリから競合に勝てるサブカテゴリに変更することも一つの方法だ。他には、期間限定で大幅な割引を行い、それを徐々に縮小していく「ビッグクーポン」戦略をとる(2週間25%オフ、その後15%オフなど)。キーワードを定期的に更新する。PPCキャンペーンに投資する、などがある。

 

Gauss氏は、最も重要なのはこれらすべてを同時進行することだ、と述べた。ただの「小さな改善」かもしれないが、検索結果の表示は正しい方向に向かって行くはずだ。

 

Amazonと共存する

このイベントは、強大な影響力を持つAmazonというゴリアテと和解しようとするダビデ族の集まりのようだった。Amazonを倒すという選択肢は無い。Amazonのやり方の多くに文句はあるが、予測できない行動やニーズ、頻繁な変更に魅了されてもいる。Furhmann氏に、「AmazonセラーとAmazonの関係は検索エンジンマーケターとGoogleの関係と似ているのでは」と聞いたところ、彼は同意した。

 

「大手ハイテク企業はどこも同じだ」とFurhmann氏。ポリシーの実行に適切な人的リソースを費やさず、「アルゴリズムを信頼している。ところが、そのアルゴリズムは間違った判断をする」。これはAmazonだけではない、と同氏は語る。FacebookやGoogleにも同じ不満が出るかもしれない。

 

「不満の原因は、そこにあるのだ」

 

※当記事は米国メディア「MarTech」の11/12公開の記事を翻訳・補足したものです。