Volkswagenは、標準的なインフィードやインストリームの広告体験を超えたデジタル体験の最適化方法を模索していた。

 

ドイツの自動車製造企業Volkswagenは、ビジュアルディスカバリー・プラットフォームPinterestで、ユーザーの電気自動車への好奇心を高めることを目的として、同社の電気自動車SUVである「VW ID.4」のバーチャル走行体験を提供した。この没入型ドライブ体験は6月14日に開始され、7月にはPinterestの影響力のあるクリエイターによるウォークスルーが追加された。

 

Pinterestは、イギリスの制作スタジオUnit9社と提携し、技術的にも臨場感あふれる360度のテストドライブ体験を実現。また、マーケティングエージェンシーの3Pは、Pinterestプラットフォーム上で展開する専用マイクロサイトを構築した。

 

VolkswagenブランドマーケティングシニアバイスプレジデントのKimberly Gardiner氏は、次のように述べている。

「私たちが目指したのは、ID.4の素晴らしい機能のすべてを、ユーザーファーストジャーニーで体験してもらうことだった」。

 

EV市場が成熟し、モデルの価格が下がるにつれ、自動車メーカーは、充電可能な車を所有することがより主流になるような幅広い露出を求めている。

 

ソーシャル上での発見

Pinterestの月間アクティブユーザー数は5億人に迫り、同プラットフォームでのヒットは、多くの人の注目とエンゲージメントを獲得している。また、Pinterestは、主要な業界で高いパフォーマンスを示しており、大手広告主にとっても魅力的な存在だ。もちろん、それに見合った体験を提供する必要がある。

 

「新しいモデルのメリットを伝えるだけではなく、ユーザーに運転席に座ってもらい、ID.4体験に没頭してもらいたい」と、Gardiner氏は語る。

 

従来の自動車購入ジャーニーでは、試乗は、購入間近の消費者向けに最終段階で行われていた。今回のバーチャル試乗は、従来の購入ジャーニーを反転させ、車の購入を検討しているかどうかにかかわらず、Pinterestユーザーに興味深いデジタル体験を提供している。

 

Pinterestは、インテリアや料理などのアイデアを交換するクリエイティブなハブとして知られているが、自動車のカテゴリーにも興味を示している。Pinterestの独自調査によると、800万人以上のユーザーが自動車関連のコンテンツに積極的に参加しており、3人に1人は、もともと車を探すためにPinterestを訪れたわけではないが、車を購入するきっかけになっているという。

 

「下位ファネルのデジタルキャンペーンでは、すぐにでも在庫検索をしたり、最寄りのディーラーに行こうと考えている非常に狭い範囲のインマーケットオーディエンスを対象としている」と、Gardiner氏。「今回のバーチャル体験は、今はまだ購入する予定がないが、将来的には購入したいと考えている潜在的なドライバーの全く新しい層にVWを紹介するものである。私たちは、将来的に彼らの検討材料となるため、今、彼らの会話で取り上げられる必要がある」。

 

データ駆動型電気自動車ドライバーの体験

では、EVの運転とはどのようなものなのだろうか?そして、EVの機能はPinterestのデジタル体験の中でどのようにリンクしているのか?

 

「この体験では、ユーザーが魅力を感じた機能を 『試す』ことができるよう、試乗をカスタマイズすることができる」とGardiner氏は述べている。

「例えば、VW ID.4のアンビエント照明だ。CMで使用している照明を見せるのも一つの手だが、バーチャル試乗会では、実際に試乗するのと同じように、ユーザーが照明を変えて試乗体験をカスタマイズすることが可能だ」と続けた。

 

ID.4のキャンペーンでは、大手ブランドの標準的なメッセージも発信されているが、今回Pinterestが提供するバーチャル体験には別の狙いがある。

 

「重要な違いは、これがブランド主導のストーリーではなく、ユーザー主導の体験であるということだ」とGardinerは説明する。「当社のスタンダートなメッセージは、ID.4のすべての機能を強調する素晴らしい仕事をしている。しかし、私たちは、それぞれの機能が、それぞれ異なる消費者の共感を呼ぶことを知っている」。

 

また、Pinterestのクリエイティブ戦略のグローバルヘッドであるAndy Holton氏は、「クリエイティブにおける重要なベストプラクティスは、Pinのクリエイティブとでデスティネーションとなるランディングページ間に連続性を持たせることである。そして、VWはこれを実に楽しく、インタラクティブで革新的な方法で実現した」と語った。

 

また、「もうひとつの秘訣は、Pinterestのインサイトである。特に、今回のバーチャル体験で言えば、人々が検索している、『ロードトリップ』や『海岸沿いのドライブ』などの内容を把握することで、ブランデッドコンテンツを真に付加価値のあるものにし、人々にインスピレーションを与えることができるのだ」と述べている。

 

従来とは異なるカスタマイズ

Gardiner氏によると、Volkswagenは標準的なインフィード、インストリーム広告の体験を超えたデジタル体験のための最適化方法を模索していた。

 

「Pinterestとのコラボレーションを通じて、Pinterestのオーディエンスインサイトとプラットフォームを活用し、何百万人ものユーザーにID.4の魅力を知ってもらうためには、バーチャル試乗体験が最適であると判断した」と同氏。「これほどまでに完全なカスタマイズが可能な体験を提供するのは初めてだ。ユーザーが自宅からドライブを体験できるようにし、山から海岸までさまざまな地形を提供することで、この全く新しい革新的なID.4車のシートに座ったときの感覚を味わってもらうことができる」。

 

次は、ユーザーがID.4モデルについての理解を深めるためのPinterestクリエイターによる「ウォークスルー」だ。

 

「この2つの取り組みは、従来とは異なる方法で、ID.4の利点を消費者に知ってもらい、電気自動車の生活を現実的に検討してもらうことを目的としている」とGardiner氏。

「私たちはクリエイターと協力し、コンテンツに深く関わり、クリエイターの提案に基づいて行動してくれる人を探している。このような方法で消費者との会話を始めることにより、VW.com、もしくは最寄りのディーラーで、消費者と継続的に関わる機会が豊富に生まれている」と続けた。

 

※当記事は米国メディア「Mar Tech」の7/9公開の記事を翻訳・補足したものです。