顧客の夢を実現させることが自社ビジネスのためになる。

 

多くの企業がマーケティング活動で直面する、コストを要する共通の課題は、「顧客に適切なエクスペリエンスを提供すること」である。誤った投資、組織の問題、ビジネスへの導入なども問題の一部だが、顧客が本当に望んでいることと、それをどう提供するかについての誤った認識が、顧客との関係崩壊の要因になっている。

 

Pegasystems(米国ソフトウエア企業)が、ブランドに何を求めるかについて、3,000人以上の顧客を対象に行った最近の調査では、3分の2の顧客が「ブランドが自分たちのニーズを気にかけているとは思えない」と感じていることが明らかとなった。そして、現在のMartech(ITを取り入れたマーケティング活動)の状況を考えると、その理由は明確である。

 

問題は、現在売り出されているソリューションのほとんどが、顧客の問題を解決するためではなく、ビジネスニーズをサポートするために構築されていることである。それらは、企業によるセグメント作成とバッチキャンペーン実行に役立つように設計されており、顧客を数秒のうちに違う方向へ導く可能性のある複雑な感情や、現実の状況に対処するものではない。

 

PegasystemsのシニアプロダクトマーケティングマネージャーであるAndrew LeClair氏は、で、「この先行き不透明な時代に、今までと同じ古いアプローチは通用しない」と述べている。

 

顧客と関わる際には、以下5つのリアルタイムCXの重要な要素を考慮しよう。

 

 

1.顧客は自分が大切に扱われていると感じたい

「今日、顧客がブランドに求める最も重要なことは、『自分達が大切に扱われていると感じられること』だ」とLeClair氏。COVID-19のパンデミックの影響で、人々は、誰かとつながっている、そして、理解されていると感じることを最も望んでいる。ブランドは、顧客一人ひとりとの関係を忘れてはならない。それは、単に個々のやり取りの連続ではないのだ。

 

今まで以上にブランドは、顧客に一方的に語りかけるのではなく、顧客と関わる必要がある。それは「共感」であり、顧客の感情、考え、感情を理解し、特定の会話の中でそれに適応することである。しかし、ブランドがそれを大規模に実行しようとすると苦戦する。

 

その対処法として、LeClair氏は、企業が、リアルタイムなネクストアクションアプローチ(特定の顧客に対して実行できるさまざまなアクションを検討し、「ベスト」のものを決定するアプローチ)を採用することを推奨している。「ただ単にセールスオファーを見て、誰にそれをプッシュするかを考えるのではなく、スクリプトをひっくり返す必要がある」とLeClairは指摘。「収益を左右するのは製品ではなく顧客だ。つまり、“製品”中心に考えるのではなく、“人”を最初に考え、リアルタイムで、今が売り時なのか、また、サービスを提供するのか、現状維持かを決定する必要がある。そして、顧客が必要とするときにネクストベストアクションを実行する」。

 

 

2. ニーズの変化に適応する

顧客が求めているのは、画一的なエクスペリエンスではない。彼らの絶え間なく変化するニーズに対応するためには、機敏に動き、十分に迅速に適応する必要がある。そうでなければ、顧客は他所へうつってしまうだろう。「ネクストベストアクションを算出するのは一度だけではない」とLeClair氏は述べた。「新しいデータが入ってくるたびに、それを使用してその人のプロファイル全体を再評価し、新たなネクストベストアクションを算出する必要があるのだ」。

 

LeClair氏は、リアルタイムなエクスペリエンスへシフトするために、アジャイルマーケティングに4つの要素を組み込むことを推奨している。

 

 

  • ニーズが変化したという事実を検出する。顧客のニーズを検出しなければ、顧客との関わり方がわからない。それは顧客の行動をモニタリングするだけではない。今、顧客にとって何が重要かということに注意を払うことだ。
  • 次の要素は、データだ。行動やニーズの変化を検出したら、そのリアルタイムデータを顧客のインタラクション履歴全体と組み合わせ、その変化が重要な意味をもつかどうかを確認する。
  • 次に何をするかを決定する。新たなデータの入手にともない、とるべきネクストベストアクションを決定する。市場に見込み客がいるとわかれば、彼らを育成段階から販売対象にシフトできる。または、彼らが自社製品に関して問題をかかえている場合は、サービスにピボットして対処する。
  • 顧客が望むものを提供する。ネクストベストアクションが何であるかを把握したら、その瞬間にチャネル内で顧客に提供する。

 

これら4つのステップをいかに迅速に実行できるかが、カスタマーエクスペリエンスに直接的な影響を与える。LeClair氏によると、「一流の組織の最高レベルでは、最初の検出からデータアセンブリ、意思決定、配信まで、すべてを200ミリ秒未満で実行できる」という。

 

3.関連情報を積極的に提供する

顧客は、欲しいものをすぐに手に入れたいと考えている。彼らには、AlexaとGoogleの恩恵を享受する日々のなかで、単純な問題の答えを見つけるために4、5ページを検索するような暇がない。ブランドは、問題が発生する前にニーズを予測し、手を差し伸べる必要があるのだ。

 

LeClair氏によると、これが差別化要因となるのは、あるチャネルが、別のチャネルで起きることにすぐに影響を与える場合だという。LeClair氏は、顧客のブラウジング行動がモバイルエクスペリエンスに即座に影響を与え、それがコールセンターのサービス担当者とのエンゲージメントに直ちに影響を与えた、という例を挙げた。

 

顧客の状況を常に把握し、ニーズが生じた際に付加価値のあるメッセージを積極的に発信することで、その顧客の関心を常に惹きつけ、将来的にはさらに踏み込んだ会話をする権利が得られるのだ。

 

 

4.現在の状況に合わせてカスタマイズする

顧客は、パーソナライゼーションを求め続けている。しかし、新たな戦略を構築し、それらが誰に適用されるかを把握し、確実に適用対象にだけ見てもらうのは難しい。

 

「多くの場合、ブランドは、バッチで更新される、静的、あるいは、セグメントベースのエクスペリエンスをデフォルトとせざるを得ない。最終的に、顧客が目にするものは、実際には自分自身のことではない。それは、最後のデータ更新時点で、自分自身に似ている他人のことなのである」とLeClair氏は語った。

 

この課題を克服するための鍵は、すべてのエクスペリエンスを、一連のネクストベストアクションをリアルタイムで提供するためのユニークな機会として扱うことだ。そうすれば、顧客は、その瞬間において、自分にとって最良かつ最も関連性の高いコンテンツのみを見ることができる。

 

 

5.チャネル間の一貫性とつながり

最後に、顧客はチャネル間で一貫したつながりのあるエクスペリエンスを求めている。すべてのチャネルは、他のすべてのチャネルとともに学習、適応し、ブランドは、1つのつながりのある表現で伝える必要がある。1人の顧客に対して、1つのブランドであることが重要である。

 

課題は、自社が有しているスタックにある。8,000を超えるオプションが用意され、選択肢は豊富にある。それらはクラス最高のポイントソリューションの積み重ねで、長年にわたり構築されてきたものだろう。

 

LeClair氏は、次のような問題がある指摘する。「同じベンダーのソリューションであっても、それらはいずれも連携して動作するようには構築されていない。実際には、分離された8,000ものサイロ化されたアプリケーションが存在し、それぞれに独自のルール、独自のデータモデルがあり、独自の方法で、顧客を理解して対話している」。

 

重要なのは、自社のチャネルベースのソリューションをすべて取り換えることではない。LeClair氏は、それらのソリューションを、すべてのチャネルの中心に位置し、各チャネルからデータを収集・分析し、それをもとに各顧客に対してネクストベストアクションを決定する一元化された意思決定機能に統合することを推奨している。そうすれば、チャネルに関係なく、顧客に可能な限りパーソナライズされた最高のエクスペリエンスを提供できるのだ。

 

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の4/6公開の記事を翻訳・補足したものです。