自社ターゲット層を最優先し、彼らに応えるというビジネスマインドを持ち続けることで、その効果を実感することができる。

 

ビジネス用ウェブサイトを立ち上げる際には、可能な限り魅力的なものにしたいと考えるものだ。つまり、ホームページを訪問する誰もが、「自分が歓迎されていて、自分のために特別につくられたサイトである」と感じてもらいたいと考える。

 

しかし、そのようなことはしない方がいい。

 

地球上のすべての人が、自社製品を買ってくれるわけではないだろう。つまり、むしろターゲット層を意識してサイトをデザインする必要があるのだ。

 

経営者なら、自社のオーディエンスが誰であるかをすでに把握しているはずだ。売上高や顧客層、自社のサイトやソーシャルメディアの訪問者の属性をレビューしたことがあるだろう。例えば、エアコンの修理会社であれば、貸借人ではなく住宅所有者に注力するだろう。また、20代の女性が洋服を探してサイトを訪れている場合もあれば、50代の男性が法的アドバイスを求めている場合もある。そして、それらの人々を中心に考えたメッセージングやデジタルアイデンティティを構築する必要がある。

 

ウェブサイトやデジタルメッセージを構築・更新する際には、ターゲット層をプロファイリングすることに問題ない。

 

これには、カラーやテーマだけではなく、用語の選択も含まれる。ある法律事務所には、優秀な「attorney;法曹資格試験に合格した弁護士」が揃っているが、その顧客層や地域によっては、潜在顧客は、「attorney:弁護士、法定代理人」ではなく「lawyer:法律の専門家」という用語によってオンラインで検索している可能性がある。同じようなことが、「accident attorney:事故弁護士」と表記するか、「injury lawyer:傷害専門弁護士」とするかという問題にも当てはまる。つまり、自動車保険を販売しているのであれば、サイト上の表現を「auto insurance」ではなく「car insurance」に変更した方がより成功するだろうということである。

 

ターゲットを絞ったウェブサイトデザインの良い例として、ホームサービス事業、特に窓周りの装飾デザイナーであるクライアントのために開発したサイトを紹介しよう。訪問者が初めてサイトにたどり着いた瞬間から、窓周りの装飾サービスであることを明確にした。カラーパレットからナビゲーションアイテムに至るまで、サイト全体のイメージやコンテンツにブラインドやシャッター、ドレープが登場。彼らのクライアントのほとんどが女性であることから、デザインはその層に好まれる美的感覚を重視している。ホワイトスペースに、淡いティール色でアクセントをつけ、サンセリフ体のフォントを使用し、モダンな印象を与えているのだ。

 

ウェブサイトを構築する際に考慮すべきもう一つの側面は、オーディエンスが誰であるかだけではなく、なぜサイトを訪れているのかということ、つまりユーザーインテント(検索意図)だ。すべての商品やサービスを紹介するカタログにすることを重視する必要はない(するべきではない!)。顧客の大半が何を求めてウェブサイトにやってくるのかに焦点を当てよう。

 

例えば、人々がカイロプラクティックに通う理由はさまざまだが、各治療院には、同じような治療を受けに来る患者が多くいると考えられる。我々のあるクライアントは、ユニークな治療法を得意とするカイロプラクターだ。彼らのウェブサイトを見るだけで、患者の大半が神経痛の治療のために来ていることが明確にわかる。同治療院のホームページを訪れた瞬間に、特に複雑性局所疼痛症候群、エーラスダンロス症候群、線維筋痛症などの神経痛の緩和治療を得意とすることがわかる。サイトは、心を落ち着かせるトーンで、ゆったりとしたスペースをとって、テーマごとにスクロールしやすくなっている。患者の多くが女性であることは、サイト内の写真や動画にも反映されている。このサイトを構築する際、すべての要素はエンドオーディエンスとそのニーズを念頭に置いているのだ。

 

一方、我々のクライアントである別のカイロプラクティック院では、まったく異なる顧客層を対象としている。彼らの患者層は、交通事故に遭った人々で、負った怪我の治療を目的としている。こうした人々は、定期的なサービスを求めておらず、一度治癒すれば、もう戻ってくることはないだろう。そのため、サイトはむち打ち症、椎間板ヘルニア、坐骨神経痛、局所的な痛みなどの情報を中心に構成されている。画像の大半は、男性顧客が写ったものだ。

 

ビジネスの成長や進化とともに、ウェブサイトやデジタルプレゼンスも進化させていく必要がある。ウェブサイトやデジタルプレゼンスは完成するものではなく、常に進化し続けるものだ。顧客層を知るにつれ、機能、用語やイメージに関する構造的なABテストを行うことにより、コアなオーディエンスに最も適した要素を特定することが可能となる。しかし最終的には、ターゲット層を最優先し、彼らに応えるというビジネスマインドを持ち続けていれば、その効果を実感できるはずなのだ。

 

※当記事は米国メディア「Marketing Land」の3/11公開の記事を翻訳・補足したものです。