依然として小売りのオンラインシフトは鮮明に

 

実店舗が営業再開されたとはいえ、オンラインの成長率が二桁台という状況は今後も続くだろう。Adobeによる最新の米国のEconomy Index reportでは、今年の4月と5月のオンライン購入について調査しており、デジタルショッピングアクティビティが2019年の年末のホリデーシーズンよりも7%増加したことが明らかとなり、売上高は前年同月比で520億ドル増加したと公表した。

 

こうした状況下で、より多くの小規模販売事業者がこれまで以上にデジタルコマースを推進。Amazonと米国発の世界最大スーパーマーケットチェーンWalmartの両社が、そのような小規模企業を取り込もうとする動きがみられる。

 

SMB(中小企業)向けの融資と流通

Amazonは、米国の金融系企業グループGoldman Sachsとの未発表の新たな提携を通じ、SMB( Small and Medium Business:中小企業)に最大100万ドルの融資枠を提供している。Amazonのライバル社であるWalmartは、カナダ発eコマースプラットフォームShopifyとの提携を発表。これにより、Shopifyを利用し販売活動を行うSMBは、Walmartのマーケットプレイスを通じて、月間1億2千万人のWalmart.comビジターにアクセスできることになる。Walmartは今年、1,200のShopify販売者を追加する見込みだ。

 

この動きは、小売販売がオンラインにシフトするにつれ、大手オンラインマーケットプレイス間の競争が激化することを示している。AmazonとWalmartに加え、競合他社はeBay(米国のグローバルEC企業)、Google Shopping(Googleがオンラインで運営する商品価格検索サービス)、Facebook Marketplace(Facebookが展開し、個人間での商品売買を行う)、Etsy(手芸や小物、独自の工場生産商品を取り扱うECサイト)など多数存在する。ただし、総商品額では、世界最大のマーケットプレイスは、中国に存在する。

 

店舗再開に伴いBOPIS取引は減少

ソースにもよるが、現在米国のeコマース市場規模は、小売支出全体の12%〜16%(2019年は約6,000億ドル)だ。ロックダウン中、実店舗が閉鎖している期間は、その割合が増加した。また、2020年のホリデーシーズンには、デジタルコマースが米国の総小売支出の20%以上に達する可能性も十分に考えられる。コロナウイルスの大流行が起こらなければ、こうした成長を遂げるまでにもう何年もかかっていたかもしれない。

 

BOPIS(店舗受け取り)は横ばいとはいえ195%増

米国の位置情報分析会社cuebiqロケーション分析データでは、店舗再開に伴い消費者が徐々に実店舗での買い物に戻りつつあることを示している。adobeは、オンラインで注文し店舗で商品を受け取る(BOPIS:Buy Online Pick-up In Store)が「plateau(停滞期)」に入り始めたと報告した。5月のBOPIS成長率は、200%超となった4月のピークを下まわり、前年比195%。adobeが同時に実施した消費者調査によると、「オンライン消費者の23%は、オンラインで購入し、店舗での受け取りまたはカーブサイド・デリバリーの利用を好む」ということが明らかになっている。

 

 

問題を抱えた従来型小売業者の多くは、最終的に失敗することが予想できるが、オンラインとオフラインのデータやエクスペリエンスをより適切に統合できる小売ブランドは、専業競合他社(Amazonを除く)と比較して最も強い立場となる。デジタルマーケティング等に関する市場調査会社であるeMarketerのデータによると、適例として、Walmartのeコマース売上は5月に初めてeBayを上回ったことが挙げられる。eBayはそれまで業界ナンバー2のオンラインマーケットプレイスであった。

 

最後に、adobeはスマートフォン利用によって5月のオンライン販売シェアが増加し、eコマース総収益のおおよそ40%に達したと明らかにした。やや驚くべきことに、同社は「初めてオンラインショッピングをする新規消費者は、スマートフォンから購入している」と述べている。

 

気にかけるべき理由

小売業は、オンラインにシフトしつつある。オフラインでの販売が引き続き優位ではあるとしても、小売業者、特に大手小売業者は、成長のストーリーがあるオンラインという場所に、今後ますますフォーカスした取り組みを行っていくだろう。消費者は、信頼と信用が与えられている限り、どこで購入するかについては無関心になりつつある。オンラインマーケットプレイスと販売者の間では、Amazonだけが従来型小売業界のリーディングネームを打ち負かしている。しかし、リアルタイム在庫と実店舗は、適切に管理・実行されていればまだ競争上の優位性を残している。

 

※当記事は、英国メディア「Marketing Land」の6/15公開の記事を翻訳・補足したものです。