顧客データプラットフォーム(CDP)は、単に顧客データを結びつけるだけでなく、適切なソリューションを利用することにより、さまざまな方法で目立った変化をもたらすことができる。
ブランドは、新型コロナウィルス感染症の影響により、総力を挙げてデジタルに取り組まざるを得なくなっている。そして顧客データを結び付ける必要性は、かつてないほどに差し迫っているのだ。
「現在の環境は、カスタマーエクスペリエンスを管理するうえで、最も困難であり興味深い時期の一つだ」と、Tealium(米国のリアルタイムマーケティングサービス企業)のCDPソリューション向けソリューションコンサルティングのディレクターであるElizabeth Marshall氏は話している。Marshall氏によると、顧客の期待は高く、従来の消費者エンゲージメントのトレンドは急速に変化しており、ブランドは、デジタルファーストのアプローチを取り入れることを強いられているという。
「この状況は、我々皆が新型コロナウィルスの世界を生きていることにより、明らかに悪化しており、人間行動のダイナミクスに劇的なエスカレーションが起きている」。「この状況を加速させているもう一つの主要な要因は、人々が、以前は手間だと感じでいたことを、どうすればデジタルで行うことができるかについて考えているということである」と、Marshall氏は話す。
Marshall氏は、Discover MarTechでのプレゼンテーションにて、大きな混乱の最中に、CDPを活用することにより、ブランドがパーソナライズされたエクスペリエンスをリアルタイムで提供し、オーディエンスとの関わりを改善するあらゆる方法について述べた。
マーケターの課題と使用しているツールのずれ
Marshall氏は、CDPが、ブランドのマーケティング活動を高める特定の方法について掘り下げる前に、CDPの本当の利点が、顧客行動の全体像を提供する統合データセットを作成できることにある点を強調した。
「この一つの統合されたデータセットに基づいて、データ駆動型の施策を行った場合、顧客に対するインサイトと理解が深まり、すべてのコミュニケーションがより良く、より高度なものとなる。その基礎となるデータ根拠を手に入れることが重要である」と、Marshall氏は話している。
サイロ化(情報システムが他のシステムと連携せず孤立してしまっている状況)したデータシステムが、依然として、ほとんどのMarTechスタックおける一般的な悩みの種であり、カスタマージャーニーの統一された全体像を作成することを難しくしていることは周知の話である。 Salesforce(クラウド型のビジネスアプリケーションを提供する米国企業)による最近のState of Marketingレポートによると、リアルタイムで顧客を引き込み、チャネル全体で一貫したカスタマージャーニーを作り出し、顧客データソースを統合し、ビジネスユニット間でその統一見解を共有することは、マーケターにとって最大の課題の一つである。
しかし、Salesforceが、このレポート調査対象となった約7,000人のマーケターに対して、最も人気のあるマーケティングデータ管理ソリューションのランキングを質問したところ、上位3つは、顧客関係管理(CRM/Customer Relation Management)プラットフォーム、メールサービスプロバイダーと広告プラットフォームであった。顧客データプラットフォーム(CDP)は、データ管理プラットフォームに次いで5位にランク付けされ、マーケターが直面している課題と彼らが使用しているテクノロジーとの間のずれを明確に示している。
「すべての顧客データを自動化された集中的なソースとすることにより、企業は包括的な顧客プロファイルを構築し、あらゆるタッチポイントでリアルタイムの顧客体験を提供できるようになる」と、Marshall氏は述べている。
CDPがビジネスの取り組みに影響を与える3つの方法
Marshall氏は、CDP導入のための3つの特定のマーケティングのユースケースについて概説した。それは、コスト削減策の作成、増収の達成と顧客基盤との信頼構築である。Marshall氏は、コスト削減のために、マーケターがCDPを用いて、広告キャンペーンからオーディエンスセグメントを絞り込み、関連性がない顧客グループに対し広告費が費やされないようにする方法を共有した。
プレゼンテーションの聴講者に対し、一連のステップを具体的に示しながら、CDPが統合を通じてオフラインとオンラインの行動をどのようにつなげられるかを示したMarshall氏は、次のように説明している。
「たとえば企業は、通常、店舗で商品を購入した顧客をリターゲティングキャンペーンから除外したいと考える。しかしPOSデータを収集するシステムは一般的に、広告を配信するシステムやそのユーザーのウェブサイト上での行動を追跡するシステムとは別ものである。我々は、オフラインのPOSデータを使って、オンラインのリターゲティングキャンペーンリストからオフラインでの購入を除外するアクションルールを作成するべきである」。
Discover MarTechでのMarshall氏のプレゼンテーション「CDPがビジネスにすぐに役立つ3つの方法」を見る。
Marshall氏のプレゼンテーションで概説された2番目のユースケースは、CDPがパーソナライゼーションとリアルタイムのマーケティングの取り組みを通じて増収を生み出す方法に、焦点を当てている。Marshall氏によると、CDPを使用すると、複数のチャネルにわたる顧客獲得キャンペーンを調整し、顧客データの価値を評価して、高度な顧客セグメントに基づいてキャンペーンを確実に実行できるようになるという。
3番目の事例、すなわち顧客基盤との信頼構築は、以前から、ブランドの間で関心が高まっていることである。「顧客のシングルビューを実現することにより恩恵を受けるのは、マーケターだけではない。データプライバシーの実務者もまた、新たなプライバシー規制をより容易に遵守するために、顧客データやすべてのチャネルにわたる顧客データの単一ビューを求めているのだ」と、Marshall氏は語る。CDPを使用した顧客データのシングルソースを作成することにより、顧客のプライバシーに関する選択を確実に維持することにつながる。
顧客データ基盤は、より多くの機会を創出するための鍵である
Marshall氏は、顧客データの統一的なソースの構築にあたり、CDPがどのように必要な基盤をもたらし、大きな変化が起こっているときにピボットを可能にするかを強調して、プレゼンテーションを終えた。
「データ基盤は、企業に選択肢を与えるだろう。これは、不確実な時代にあっても、特に顧客基盤がこれまでにない速さでデジタルに移行している時期の、機会の創出に役立つ。データ基盤によって、すばやくピボットするフレキシビリティを確実に手にすることができる。これは、機会が訪れた時に、それを利用するために非常に重要なことだ。そして、その機会が訪れた時には、チャネルを超えてリアルタイムでその顧客と対話できるようになるだろう」と同氏は語った。
※当記事は米国メディア「Marketing Land」の6/4公開の記事を翻訳・補足したものです。