同人誌のECサイトで女性客に反応が良い後払い決済

 

同人誌や漫画、キャラクターグッズなどを扱う「とらのあな」を全国各地に25店舗運営する株式会社虎の穴。自社ECサイトでの通販事業も行い、年間売上200億円を誇るエンターテインメント系コミック業界のリーディング・カンパニーだ。

今回はとらのあな通信販売課の成川雄大氏と清田隆史氏にお会いし、オンライン施策の経緯や戦略、さらには売上を上げるために行ってきたことについて話を伺った。

 

 

「とらのあな」が作ってきた同人誌のオンラインマーケット

 

1994年、秋葉原の路地裏に1号店をオープンした「とらのあな」は、そのわずか2年後に通信販売部を開設し、早くからEC事業を展開してきた。そして、漫画・アニメ好きから絶大な支持を得て、インディーズ・コミックの取扱量世界一を誇るまでに成長。現在は8〜10万点もの作品を取り扱い、月に4〜5万アイテムが売れているという。

カテゴリ的には、同人誌と呼ばれる個人出版物が8〜9割を占め、簡単な審査を通れば誰でも簡単に委託販売することが可能だ。「とらのあな」の最大の特徴は、クリエイターと直接交渉し、問屋を介さずエンドユーザーに商品を届けている点だろう。コミックマーケットしか販売場所がなかった時代から現在のような委託取引を始め、1996年にはECを立ち上げた。今でこそ、店舗やオンラインでの多くの販売チャネルが存在するが、当時は皆無。時代に合わせて受注や配送、決済方法も進化させ、右肩上がりで成長を遂げてきた

しかし、法人設立後12期連続で増収、増益の黒字経営を続けてきたにも関わらず、2008年6月期には創業以来初の赤字転落を経験したという。そこで基本的な改善を重ね、全社一丸となって業績回復に向けて取り組んだ結果、過去最高売り上げで黒字復帰。2010〜2011年頃にはEC事業が伸びを見せ、売上の比率は実店舗と半々になった。当時は一大ムーブメントを起こした『東方Project』をはじめ、二次創作が盛んな作品が多く、同人業界は盛り上がりを見せていた。そしてここ4、5年は、新たな動きとして女性客の利用が増えているという。

 

 

女性客の売上で10億円の成長

 

「2015年から2016年にかけて、女性のお客様の売上が10億ほど伸びました。『TIGER & BUNNY』や『ヘタリア』などの作品がネット上で盛り上がり、同人誌を書く人が増えたのも要因だと思われます。当時は『刀剣乱舞』をはじめとしたソーシャルゲームが台頭し、ユーザーが一気に拡大してそれと共に作品数も増えていきました。そこから『黒子のバスケ』や『おそ松さん』など女性を狙ったアニメも増え、一定した需要が続くようになったのです。社内でも女性向けを推す声があり、女性向けアイテム専門フロアを設置した秋葉原店Bや池袋店Bを展開するなど、会社としても取り組んできました。ECでも女性向けサイトの「とらのあなJYOSHIBU」を立ち上げ、順調に売上を伸ばしてきています」(成川氏)

 

 

女性客の増加と後払い決済との高い親和性

 

女性客の増加とちょうど時期を同じくして「とらのあな」では2015年に株式会社キャッチボールが提供する決済サービス「後払いドットコム」を導入。当時はECの伸び率が良く、いろいろなことにトライしていこうという時期でもあったため、新たな決済方法を検討した。後払いドットコムは、商品到着後に後払い(コンビニ決済、銀行振込、郵便振替から選択可)できるサービスだが、女性客が伸びていたタイミングとうまく合致し、導入は功を奏した。

「導入前は決済方法に困っていたわけではありませんが、新たなことを模索していた時期ではありました。同人誌は発売日が設定されていないため「とらのあな」では注文時ではなく発送時に金額をご請求するという形を取っています。すると商品が用意できたこちらのタイミングでご請求することになってしまうため、お客様の都合に合わせられないという点がネックでした。それを解決してくれたのが後払いドットコムのサービスです。今は請求書の発行から支払いまで長目の期間を設けることができているので、支払い関係のお問い合わせはほとんどありません。手元に現金がないからといって購入時に躊躇するようなことも減り、売上にも繋がっているのではないでしょうか。同人誌はどこにでも流通しているものではないので、見つけたタイミングで購入しないとすぐになくなってしまいます。そういった点からも、後払いの導入は正しい選択でした」(成川氏)

 

導入当初は、メール便での発送についても後払いサービスを対応していたのだが、配達記録が残らないため、苦心したそうだ。メール便をやめてからは大きなトラブルもなく、順調だという。

導入前はクレジットカードと代引きの割合が8:2だったが、現在は後払いが全体の12%を占め、クレジットが75%。代引きは13%となっている。後払いは年間で約10万人が利用しているそうだが、興味深いのはその利用層だ。

 

 

後払いユーザー10万人のうち、88%が女性客

 

「10万人のうち、女性のお客様は88%も占めています。手数料は取られますが、やはり自分のタイミングで支払えるというのが重宝されている理由ではないでしょうか。後払いのリスクは運営元のキャッチボールさんが背負ってくれますし、ニーズは思った以上にあると感じています。後払いドットコムは管理画面がしっかりしていて、利用状況がダウンロードできたり画面上で支払いサイクルを確認できたりと、使い勝手が良いと社内の評判も良いですね」(成川氏)

最近では、ECで購入した商品の支払いを店舗で行える「通販店頭支払い」も導入したという同社。始めたばかりということもあってまだ全体の0.2%ほどだが、今後のその辺りは変わってくるのではと成川氏は話す。さらにLINE Payなど他の決済も視野に入れているということで、よりユーザーに寄り添ったサービスが期待できそうだ。

 

 

苦労する物流量の波

 

ここでECサイトを運営する上での苦労について尋ねると、「物流運用とクリエイター様とのやり取り」という返答が返ってきた。

「年に2回大きなコミックマーケット開催され、その時期は業界全体が大変盛り上がります。弊社では1日平均1万件ほど出荷がありますが、繁忙期と閑散期では配送量に倍の差が出てくるのが現状です。物流スタッフは閑散期であれば100人以下、繁忙期は短期アルバイトや派遣も入れて300人体制でしのぎますが、その落差にはいつも頭を悩まされていますね。台風などの諸事情でイベントが中止になった場合にもその余波が来て、売り場を失ったクリエイターさんたちから大量に商品を持ち込まれます。そうなると、出荷件数は通常の2倍に跳ね上がり、予期せぬ大量発注で現場は混乱します」(清田氏)

販売する商品については一般的なメーカーだけでなく、クリエイターとの直接のやりとりもあるため、クリエイターの気持ち、事情も加味しながらお客様にご案内しなければいけない。納期が遅れることも多々あり、そうなると「お客様へ謝罪の嵐になる」と話す。

 

 

※この記事は決済サービス「後払いドットコム」を展開する株式会社キャッチボールの協力の元インタビューを行い作成したものです。後払いドットコムに関するサービス資料は以下からダウンロード下さい。

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「とらのあな」のこれから

 

創業以来20年以上にわたって続けてきたECは、2018年6月にサイトを大幅にリニューアルした。リニューアルではスマホ完全対応やおまとめ配送を強化し、カップリング一覧ページなどには多くの女性スタッフの意見を取り入れて、お客様がより早く好みの作品と出会えるよう常に整備・更新している。また、完売作品は再販希望ボタンを押すことで再販をリクエストすることができるほか、再入荷の通知も設定可能。お気に入りのサークルに対して入荷アラートを設定できるようにもなっている。良作が埋もれないようにするためには、商品を細かくカテゴリ分けするほか、作品ピックアップ、特集ページにも注力しているそうだ。

また、同社では結婚相談所などのユニークな新規事業も始めている。独自のオタク診断カウンセリングを実施し、趣味や感性の近い方とのマッチング確率を高め、成婚だけでなく、成婚後の幸せも応援するという「とら婚」。これだけでなく、今後は新たにクリエイターとお客様を繋ぐような、クリエイター寄りのサービスも検討しているそうだ。海外進出の第1弾店舗である台北店の売上も順調で、今後は連携なども視野に入れているとのこと。さらなる事業拡大が見込まれる。

 

 

「とらのあな」に導入されている「後払いドットコム」とは

 

株式会社キャッチボールが提供する決済サービス「後払いドットコム」は、購入者が商品の中身を確認後、コンビニ・銀行・郵便局でお支払いができる、後払い決済サービスだ。

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クレジットカードがなくても利用可能で、購入者の安心・便利のニーズを満たすことができる。女性を中心に幅広い年齢層のユーザーの購入機会を高め、新規ユーザーの獲得に貢献。一方で、未回収リスクは100%後払いドットコムが保証するなど、EC事業者にとってもありがたいサービスだ。