インターネット行動ログ分析によるマーケティング調査・コンサルティングサービスを提供する株式会社ヴァリューズは、一般ネットユーザーの行動ログとデモグラフィック(属性)情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用し、決済アプリ利用ログからキャッシュレス決済の利用実態とキャッシュレス決済の利用意向に関するアンケート調査を実施した。

 

この調査では、全国のヴァリューズモニターの20歳以上の男女を対象として、2019年5月31日~6月5日に「キャッシュレス決済サービスに関するアンケート」のウェイトバック集計調査と主要決済アプリの行動ログを分析。この行動ログは、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を使用している。アプリユーザー数は、Androidスマートフォンでのインストールおよび起動を集計し、ヴァリューズ保有モニター(20歳以上男女)での出現率を基に、国内ネット人口に則して推測。また、「LINE Pay」は決済機能単独でのログが取得できないため、主要決済アプリの対象外となっている。

 

キャッシュレス決済から見ていくと、アンケート調査では、キャッシュレス決済を「クレジットカード」、Suica、PASMOなど「交通系チャージ式電子マネー」、楽天Edy、WAONなど「交通系以外のチャージ式電子マネー」、PayPay、楽天ペイなどの「QRコード式」、iD、QUICpayなどを「後払い式」、「デビットカード」、「仮想通貨」に分け、店頭での利用経験を調査した。最多は「クレジットカード」で86.7%。現在最も利用頻度が高い手段も、「クレジットカード」54.7%が群を抜いている。次いで利用経験者が多いのはチャージ式でSuicaやPASMOなどの交通系電子マネー64.6%、楽天EdyやWAONなど交通系以外が48.5%となった。

2018年12月のPayPayのキャンペーン等で話題になったQRコード式の決済アプリは24.9%と4人に1人が利用経験ありと回答したが、「最も利用」だと約5%程度にとどまった。

なお、デビットカードは15.8%が利用経験がありながら、現在「最も利用」は1.4%。「特に利用していない」現金主義の回答者も9.0%と、まだキャッシュ利用者は一定の割合で存在している。

 

続いて、ネット行動ログとユーザー属性情報を用いたマーケティング分析サービス「VALUES eMark+」を用いて、主要なキャッシュレス決済アプリの利用ユーザー数と所持ユーザー数を調査した。アプリに関してはPayPay(2018年10月リリース)、d払い(2018年4月リリース)、楽天Edy(2016年12月リリース)、楽天ペイ(2016年10月リリース)と、新サービスほどユーザーが多い傾向で、行動ログでは、アンケートに比べてチャージ式よりもQRコード決済アプリの所持ユーザーが多い結果となった。一方、物理カードからサービスを開始しているチャージ式や後払い式電子マネーは、まだまだアプリ利用よりもカード利用が多いと推察される。

 

アプリ利用のユーザー数でみると、PayPayがトップで、6月の利用ユーザーは851万人超。続いて、チャージ式の楽天Edy752万人がこれを追い、3位はQRコード決済ブームにあやかって急増したd払い663万人となっている。また、楽天ペイは同じくチャージ式のモバイルSuica536万人よりも低い525万人となった。QRコードはいずれも2018年11月から2019年6月の8ヶ月間右肩上がりで、PayPayは12.4倍、d払いは2.7倍、楽天ペイは2.5倍、Origamiは2.6倍にユーザーが増加している。もともと利用が多かったチャージ式の楽天EdyやモバイルSuicaも、アプリユーザーが1.1~1.2倍になっているが、QRコードに比べると伸びは控えめである。

 

では、伸び率の高かったQRコード決済のユーザー利用頻度はどうなのか。QRコード決済の利用経験者2,283名のうち、最も多いのは「週に1~2日」の利用。「毎日」使う人は3.7%にとどまったが、53.2%は週1回以上利用し、生活に定着してきている。「週に1~2日」に次いで多かったのは「1カ月に2~3回」で、「1カ月に1回未満」は11.0%にとどまり、利用経験者の約9割はある程度定期的にQRコード決済を使用していることが分かる。

 

また、QRコード決済を使う理由について調査したところ、「キャンペーン中の利用でキャッシュバック/ポイント還元」が49.0%、「普段の利用でキャッシュバック/ポイント還元」が42.5%。一方、「キャンペーン中の利用で購入時の支払い金額割引」は16.4%で、同じおトクキャンペーンでも、割引よりキャッシュバック/ポイント還元のほうが支持されていることが読み取れる。その他もみていくと、「普段よく買い物をする店舗で利用できる」は27.2%、「利用できる店舗が多い」は12.1%と、店舗対応はおトク感に比べると控えめな利用動機となっていて、利用可能な店舗が限られる、あるいは利用可否がわかりづらい面もあるのが原因かもしれない。

では、注目されているのにも関わらずなぜQRコード決済利用者はそこまで多くないのか。その促進を阻む要因をQRコード決済を使ったことがない7,535人を対象に、アンケートで聴取したところ、「QRコード決済サービスがよくわからない」27.6%、「使い始めるきっかけがない」27.5%が横並び。3番目に多かったのは「どのQRコード決済サービスを使えば良いかわからない」が19.6%となった。

 

QRコード決済の浸透率を上げるには、還元率や対応店舗数以外の差別化要素を見出す、LINE Payが実施した「お友だち同士で送金」のような「家族や友人からのクチコミ」を誘発するキャンペーンなどが有効的かもしれない。また、サービスがよく分からない、きっかけがないという様子見層に対しては、交通系ICカード並みに誰でも使っていてカンタンというような最初のハードルを下げることが重要といえるだろう。