オンラインからオフラインへ - 顧客の買い物場所を把握するためのビックデータ活用法 | EC業界ニュース・まとめ・コラム「eコマースコンバージョンラボ」
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マーケティング
更新日2018/03/16 公開日2018/03/15

オンラインからオフラインへ - 顧客の買い物場所を把握するためのビックデータ活用法

eコマース企業は、顧客が望むロケーションに実店舗をオープンするためにビッグデータを利用している。

アメリカのメガネブランドであるWarby Parkerは、3年をかけて顧客のニーズを満たす方法を見出した。

2010年の創業当初、オンラインのみで販売を行っていたWarby Parker。同社は買い物客に洗練されたデザインのメガネフレーム5本を郵送し、買い物客は自宅で試着し、気に入ったものを選び、返却することができるサービスを提供した。2日間でサンプルの在庫がなくなってしまった時、当時Wharton大学の学生だった創設メンバー達が住んでいたキャンパス近くのアパートを訪問して、メガネフレームを試着したいという電話が買い物客から掛かってきた。(彼らは、その依頼を了承した。)その後、2011年にWarby Parkerがマンハッタンのビルに入居した時には、何千人もの買い物客が人気のメガネを試着するために殺到した。その結果、Warby Parkerの買い物客がエレベーターを独占してしまい、ビルの貸主から退去警告を受けたほどだった。

 

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そして2013年、Warby Parkerはついに解決策を見い出した。創業間もなく有名なeコマースブランドとなっていたWarby Parkerが、初のオフィシャル実店舗をオープンさせたのだ。2016年末には36店舗をオープンし、実店舗での売上げが全体の半分(推定2億5000万ドル)を占めた。現在、米国とカナダに合計63店舗を展開し、2019年までには90店舗を達成する計画だという。

 

小売業は消滅するだろうというニュースが盛んに報じられていた時期に、Warby Parkerは実店舗の展開における画期的な成功を収めた。世界最大の不動産サービス会社であるCushman Wakefieldは、2018年に閉店する実店舗数が12,000店舗に達し、2017年に閉店した9,000店舗から大幅に増加すると見積もっている。しかし、実店舗展開を試みる小売ブランドはWarby Parkerだけではない。化粧品サンプルサービスのBirchbox、アパレルブランドのEverlane、紳士服ブランドのBonobosのようなeコマースのリーダー的企業も、実店舗展開への出資によって次のステップの成功を目指している。

 

実店舗展開で成功する企業と、他社との違いは何だろうか?

まず挙げられるのは、顧客が存在している場所を正確に特定できているかという点である。

 

デジタルからスタートしたWarby Parkerは、創業当初から価値のある顧客情報を集めている。最初に収集すべき最も重要な情報は、顧客の住所である。顧客の住所を把握していることは、店舗ロケーションの決定時に非常に優位となる。出店候補地のトラフィックと売上高を最大化するために、Warby Parkerの担当部門は大量のデータポイントをレビューし、最も理想的なエリア内の最適な通りとブロックを見つけ出す。対象エリアを総合的に評価するために、人口密度、メガネを購入する消費者の数、および、過去のeコマースの売上実績なども検討事項の一部となる。そして、近隣店舗の売上比較データ、小売店舗用の空き物件状況、近隣の景観、Warbyストアが売上に影響を及ぼす同じブロック内に、カフェがあるかどうかといった要因も検討する。

 

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Warby Parkeが使用するデータの大部分は、自社で管理する顧客行動情報と独自の統計モデルのデータであるが、携帯電話会社が販売する匿名化されたユーザー行動追跡データも利用している。買い物客は常に住んでいる場所の近くで買い物をするわけではなく、職場の近くの店舗を利用する消費者ももちろん存在する。これは店舗のロケーションを確定する際に、理解しておくべき重要事項である。

 

「我々はビックデータではなく、ディープデータを重要視する」と、Dave Gilboa氏と並び共同設立者であり共同CEOであるNeil Blumenthal氏は述べた。

 

もちろん、Warby Parkerは、今や完璧な店舗ロケーションを特定するための社内データ部門を作れるほどの(大きな)企業である。しかし、創業間もない企業であってもWarby Parkerのやり方を手本とすることはできる。Shopifyは、スタートアップだけでなく既存企業にも人気が高いeコマースプラットフォームを提供する。Shopifyを利用することにより、消費者の行動データにアクセスすることが可能となり、企業担当者は実店舗の拡大を検討する際に、信頼できるデータを活用することができるのだ。

 

Shopify社の社員でもあり、カナダに拠点を置く茶葉販売を行うTease Teaの創設者兼CEOであるSheena Brady氏は、オタワの小規模な地元市場の商品を販売するオンラインストアを立ち上げた。Brady氏も驚くことに、1年後にはサイトをたまたま見つけた米国中の買い物客から注文が舞い込んだ。そして、詳細な調査を行ったところ、Tease Teaがニューヨーク地区で強力なファン基盤を持つという事実を発見した。「Shopifyのレポートデータを検討し、ニューヨークでポップアップショップを出店することにした」とBrady氏は言う。ミートパッキング地区での屋内マーケットへの出店した時の売上がかなり好調だったため、ニューヨーク市内には営業時間を延長した2店舗目をオープンしている。

 

また、イギリスに拠点を置くスポーツ用品ブランドであるGymsharkは、ロサンゼルスからの注文が多いことを発見した。そこで、売上データを精査すると同時に、最も積極的で熱心なソーシャルメディアフォロワーの住所を調査し、同社はサンタモニカに、1月の週末に一度きりのポップアップストアを出店することを決めた。「出店は、ブランド認知度に多大な効果があり、大成功だった」と、Gymshark社IT部門ディレクターSeb Mills氏。2012年創業のGymshark社は、ポップアップショップ出店の成功にも拘らず、常設の実店舗への投資に対しては慎重だ。「実店舗オープンの可能性は常にある。将来的に実店舗開設することがあれば、データを最重要視してロケーションを決定するだろう」と、Mills氏。

 

一方、伝統的な小売業者は、若く機敏な競争相手から取り残され、業績が悪化。彼らのビジネスの本質がマイナスに働いているのだ。多くの昔からある小売業者は、在庫と高額な店舗賃料に悩まされているだけでなく、小売店舗の性質上、有益な顧客データを収集していないのだ。

 

依然として、小売業界関係者からの警告も発せられている。残念なことだが、ディープデータを活用して、不動産に関する決定を下す時代は始まったばかりだ。Foursquare(ロケーションテクノロジー企業として再編されたソーシャルネットワーク)のCEO、Jeff Glueck氏のチームは、積極的にデータの可能性を極限まで探っている。Foursquareは、複数の企業と連携し、リアルタイムで140ヶ国以上の人口統計情報とフットトラフィック(歩行者交通量)などを含む広範なデータを、同社の持つデータベースに収集するパイロットプログラムを実行している。「非常に有益なプログラムである」とGlueck氏は主張。しかし、さらなる高度化が必要であることも事実だ。大手ヘッジファンドが上場企業の収益予測にフットトラフィックを使用できるのは、データを処理する能力があるからだ。Glueck氏は、小売業者がリースできるフットトラフィックのようなデータを活用できるツールボックスが提供されるのは5〜10年後であろうと述べている。

 

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とは言っても、オンラインと実店舗の融合が可能な企業には、実店舗で顧客と実際につながると同時に、有益なデータへのアクセスが可能になるという利点がある。オンラインと実店舗のバランスをうまくとれば、オンラインと実店舗が互いに情報を提供し合うという共生関係を生み出すことできるのだ。Accenture Strategy傘下のKurt Salmon(グローバルマネジメントコンサルティングファーム)のマネージングディレクターFrank Layo氏によると、デジタル小売業者が実店舗をオープンしたエリアにおいて、インターネットユーザーのトラフィックが25%から100%増加すると言う。これは、業界全体にも当てはまる。同氏は「どうすればさらなるタッチポイント(顧客との接点)を見出せるか?」という重要な問題を、実店舗をオープンにより解決することが可能であると指摘する。

 

オンラインストアで収集不可能なデータを、実店舗でも収集することができる。例えば、Warby Parkerはロウアーマンハッタンに位置するショッピングモールBrookfield Placeの中央に、キオスク形式のポップアップショップを試験的にオープンした。(モールへの出店は、路面店とは全く異なる。売上が見込めない時間帯にも店を営業する必要があり、異なる顧客層に対応しなければならない。)Warby Parkerは、モールへの出店から予期せぬことを学んだ。買い物客は度付きメガネを公の場で試着することを好まない。「なぜならそれはとても私的なことだから」とBlumenthal氏。一方で、サングラスの売上げは非常に好調だった。Warby Parkerはこの新しい見識を、自社の所有する大規模なデータに追加している。

 

「顧客を第一に考えることを戦略と捉えて、重要視していれば、より良い体験を創造する方法が見つかる。そしてそれが、いずれ有効なデータにつながるだろう」と、Blumenthal氏は加えた。

 

※当記事は米国メディア「Entrepreneur」の3/5公開の記事を翻訳・補足したものです。

 

 

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