プレロール広告(動画コンテンツの前に挿入される動画広告)の実験段階にいるFacebook。ニュースフィード上ではなく「Watch」内で限定的に展開する予想
FacebookのCEO Mark Zuckerberg氏は動画にプレロール広告を挿入する事に長年否定的なスタンスだったが、この度Facebookがプレロール広告をテストする計画があることを米広告専門メディアAdAge社が報道した。
Facebookの広報担当者はこの報道に関してコメントを控えているが、この件に関し詳細を知る人物によれば、プレロール広告はFacebookの新しいビデオハブ「Watch」内に限定し、ニュースフィードには挿入されないと言う。
Facebookのプレロール広告の採用は、経営幹部の過去のコメントからすると衝撃的なものかもしれない。しかしこれらの否定的なコメントは、対ニュースフィードに限定した意見だ。同社の2016年第2四半期の業績見通しで、Zuckerberg氏は「(プレロール広告が)ニュースフィードには良い効果をもたらすとは考えていない」と述べている。その当時(2016年7月)は、Facebookの唯一のビデオ体験がニュースフィードだけであった。同社はまだスマートテレビ向けのアプリを展開しておらず、TVスタイルの番組専用のビデオハブ「Watch」を発表する前であった。
しかし、Facebookはその動画広告から得る収益は重要だと考え 、妥協の道を選んだ。 Zuckerberg氏によると、プレロール広告でビデオ再生を始める(そうすれば利用者がポスティングしたビデオを観覧する人は多く失われる)代わりに、(動画の中盤に流れる)ミッドロール広告(Ad Breaks)を挿入する事にした。そうする事で視聴者の関心を獲得した後に、Facebookや広告主が制作した20秒以上の広告動画を視聴させる機会が与えられるというわけだ。
それでも、Facebookのミッドロール広告はそれほど利益があるとは証明されていない。Digidayによると、広告挿入による収益の一部を受け取ったサイト運営者は、Facebookからは多くの収入を得てはいないという。YouTubeやSnapchat、Amazon、Netflix、Huluなどのビデオサービスが、オリジナル番組の制作競争を激化する中、この現状は Facebookにとって望ましい状況ではない。このようなデリケートな時期にFacebookの広告収入の伸びを悪化させる可能性もある。
Facebookは、ユーザーのニュースフィードへの広告はこれ以上挿入できないと考えている。その広告負荷の問題は、同社の広告収入の伸びを停滞させると予想され、Facebookのミッドロール広告には複雑な問題しかない。ビデオ広告は通常他の広告フォーマットよりも高価だが、インストリームのビデオ広告は特にプレミアムと見なされる。しかしFacebookのミッドロール広告は同社の平均広告価格を大幅に引き上げできず、広告供給が追いついていないのだ。FacebookのCFO、David Wehner氏は11月に「人々がビデオを視聴しているときに与える広告の印象は少ないので、ビデオ消費が増すにつれ、より問題になっていく」と述べている 。
人々が動画を見る前に広告を見るようにすることで、Facebookは広告の「印象」と「収益」を補うことができる。また、広告主の購買率を向上させ、動画広告に注目しているブランドにとってビデオ広告をより魅力的にすることもできる。これは、人々がプレロール広告を我慢して見ることを 前提としている。そのことからFacebookは、TVを起動したりYouTubeを開いたりしたときと同じように、動画を自分の意思で視聴する消費者のみを対象にすべく、広告をWatch 内にしぼった。これらのプラットフォームの視聴者は、動画を中断して広告を先取りする手法に慣れている。Facebookのプレロール広告は、今のところWatchだけに限定されているが、いずれはFacebook全体でもそうなっていくだろう。
※当記事は米国メディア「Marketing Land」の12/1公開の記事を翻訳・補足したものです。