消費者の生活にすっかり定着した(メッセージングアプリなどを使った)メールでのやり取り。しかし、かたや高級ブランド店に関しては、その対策に乗り遅れているのが現状だ。

 

Facebookの“Messenger”は、B2Cのメッセージングプラットフォームの中で最も有力なメッセージングアプリ。データ分析会社L2によるレポート「L2’s Social Platforms; Messaging Insight Report」では、81%のブランド店がこのMessengerを利用しているとのことである。しかし、顧客からの問い合わせに対し1時間以内に返信できるのがその中のたった50%、更にチャットボットを利用しているのは僅か10%にとどまった。

 

<参考>

チャットボットはECの未来にどのように影響を及ぼしていくのか - AIの進化と人間の暖かみの狭間で

【米国】Salesforce社、次世代の対話型サービス「LiveMessage」等、複数のチャットボットを発表

【米国】Starbucks、Amazon社の音声認識UI“Alexa”を利用しよりスムーズな注文を可能に

【米国】Domino’sピザ、Facebookメッセンジャーでの完全オーダーボットを発表

 

「我々の調査から言えるのは、アメリカのブランド店はメッセージングの可能性をまだまだ引き出せていない」とL2社シニア・アソシエイトのTaylor Malmsheimer氏は言う。

「理由の一つはFacebook Messenger以外にB2Cのメッセージングアプリとして使えるプラットフォームがないことが挙げられる。更に、ブランド店がMessengerアプリを使いこなすのに時間がかかりすぎていることだ」と加えた。

 

「我々の調査結果ではチャットボットを利用している企業は10%未満である。最も衝撃的な事実は、Messenger上にあるブランド店の中でたった半数の店しか顧客の問い合わせに対し1時間以内に対応することができなかったということだ。対応に1時間以上かかっているブランド店は、Messengerをメッセージングプラットフォームを利用しているのではなく、Eメールのようなただのカスタマーサービス窓口のチャンネル一つとしてしか認識していない」と警告した。

 

メッセージングとマーケティング

Twitterをカスタマーサービスとして利用しているブランド店は全体の66%。しかしブランド店からの返信率は半年間で13%も落ちている。

多くの会社がTiwtterを利用しているが、資力がありこのソーシャルメディアを有効に使いこなせる会社だけがそれに投資すべきなのかもしれない。

Twitter上のブランド店舗

Twitter上のブランド店舗

 

メッセージングアプリに対する消費者の依存が更に高まる前に、アメリカ国内のブランド店は中国のブランド店を参考にしていく必要がある。このトレンドに上手く乗り切れないと、競争に遅れを取る事になりかねないからだ。2020年までに約2,400万人の消費者がアメリカ国内でも中国のメッセージングアプリ“WeChat”を利用する、という予測も出ている。

アメリカのブランド店や小売業者はまだWeChatのような機能に対応していないが、決してアメリカのソーシャルメディアプラットフォームが遅れを取っているからではない。自国ではKik、Tiwtter、そして特にFacebookはなどのソーシャルメディアプラットフォームには、“購入ボタン”やチャットボットなどの商業利用の加速を促す購買機能を備えているのだ。

WeChat上のブランド店舗
WeChat上のブランド店舗

 

ブランド店がより上手にメッセージングを使いこなすことが出来れば、よりその会社らしい顧客体験をつくり込む事が出来るだろう。

中国からの教訓

中国消費者の間では生活の一部となりつつあるWeChat。L2による他のレポートによると、WeChatユーザーは2年間で2倍にも膨れ上がっている。

 

調査によると、96%のビューティー関連ブランドと90%の時計やジュエリー企業はWeChatで消費者と交流している。このプラットフォームは2017年までに9億人を超える見込みとのこと。WeChatを利用しないブランド店にとっては、非常に不利益な状況が続いている。(続きを読む

 

フランスのアパレルブランドChristian DiorはWeChatで、フォロワー限定のバッグを掲げ、ソーシャルメディアでの販売に乗り出した。これはWeChat限定の試みではないが、Dior社はWeChat上で初の高級ハンドバッグを売ったブランドとなり、「アプリで消費者に直接販売する」ということのポテンシャルの高さを証明した。(続きを読む

 

「アメリカ国内でメッセージングアプリを上手く使いこなせているブランド店は少ないが、中国ブランドによる利用数は爆発的な伸びを見せている」とMalmsheimer氏。

「WeChatを採用している企業はカテゴリーを問わず、洗練されたカスタマーサービスやソーシャルコマースを実現することができ、すべての取引がアプリ内で完結できる」。

 

「中国でのメッセージングアプリの成功は、アメリカでのメッセージングアプリ利用が今後も拡大し続けて行くことを示唆してる。というのは、Facebookなどの大手ソーシャルメディアが中国を模倣し、プラットフォームを改良し続けていくからだ。早期にこの機能をとり入れることは、ブランド店にとって有利に働く。このプラットフォームを今こそ試し、理解する事で、イノベーションリスクなしで活動できる将来がもたらされるのだ」。

 

「最後に、メッセージング機能は、消費者が望むような一人ひとりに特化したサービスを提供できると私は考えている。ブランドは独自のライブチャット対応の様なカスタマーサービスチームに多くの費用を費やさなくても、顧客一人ひとりに合った対応を可能にできるのだ。早期にメッセージング機能を取り入れたアルコールメーカーAbsolute Vodka、高級デパートのNordstrom、服飾ブランドBurberry、ビールメーカーBud Lightなどのブランド企業は、早々にチャットボットの利用を開始した。彼らは各々の顧客に合った対応を実現している」と語った。

 

 

※当記事は米国メディア「Luxury Daily」の2/10公開の記事を翻訳・補足したものです。