Googleは先週、EUとの独占禁止法に関する6年越しの戦いについての回答を提出した。これは「Googleの検索広告が不当に自身のショッピングサービスであるGoogle Shoppingを宣伝し、競合サービスを阻害している」とするEUのAmazonへの訴えに対するもの。

回答は、今夏欧州委員会がGoogleに送った追加の異議告知書に言及した。

Googleの法務部長Kent Walker氏によると、「委員会の元々の異議告知書は、価格比較ショッピングサービスを狭く定義しており、Amazonなどの競合サービスを考慮に入れていない。また、激しい競争にさらされているオンラインショッピングの大きな力学的要素を考慮に入れていない」とした。

「改訂版には新たな見解は加わっていないものの、Amazonのようなサイトはトラフィックの誘導のために価格比較サイトに対価を支払っている事もあり、Google Shoppingのライバルとは考えにくいと異議告知書は言及している」とも述べた。

しかしながら、「Amazonはこうした価格比較サービスから微々たるトラフィックしか得ていない」とWalker氏は加える。

 

Googleによる反論

「消費者は、例えば検索エンジンやECサイト独自のサービス、ソーシャルメディアやオンライン広告など、ECサイトを見つけ出すためにも様々な方法を利用している。消費者はECサイト独自のアプリなども利用しており、ヨーロッパではそれがもっともメジャーな方法になっている」とWalker氏は言う。

「欧州委員会は、オンラインの購買客は検索エンジン経由で品物を探し、価格比較サイトを見てからECサイトを訪れるとしているが、近年のドイツと米国での調査によるとこれらの国の購買客の多くは、まず初めにAmazonを訪れる」とした上で、「Amazonは消費者に品物の特徴や価格を比較させ、さらには、翌日配送のサービスで購買を促進しており、AmazonはGoogle Shoppingにとって他の価格比較サイトとくらべても非常に強大な競合だ」とも指摘した。

さらに彼は、「過去10年間、Googleの検索ページからのトラフィックはAmazonやeBay、または他の人気ECサイトへ急速な勢いで流入しており、Googleの検索サービスと価格比較サイトの実績の間には明確な相関関係はない。」と続ける。

「委員会の改訂版の異議通知書は、Googleがユーザーにとって最も適切な広告を表示させるためのアルゴリズムを使わず、代わりに価格比較サイトの広告を表示させるようにしていると述べているが、価格比較サイトに多くのクリックが流れるように操作することは、検索サービスを消費者にとって有益ではない。」と述べた。

 

Googleの立ち位置の解体

「Googleの主張は主として2つの領域に分けられる」とイギリスWarwick大学内Warwickビジネススクールの実務教授Mark Skelton氏。「一つ目は、価格比較サイトのような戦略的なデジタルビジネスがGoogleのサービスにとっていかに特徴的かということ、もう一つは、トラフィックを他のサイトに誘導するという媒介としてのGoogleの役割である。」

Skelton氏は当媒体に、こう語る。

「個人的に、Googleは消費者の選択に対する寡占と、市場規模という大きなポイントを見落としていると思う。Googleは公共事業体でも、そのように自身を位置づけているわけでもない。にもかかわらず、彼らがサービスの権威者とサービス提供者の間の微妙な線を歩いているため、彼らの検索のアルゴリズムそのものが問題を悪化させているのだ。トラフィックの量に関しての統計的な議論さえ適切ではない、なぜなら問題なのは公共施設と、スマートシティとスマート交通システムのための次世代IoT(世の中の様々な物体(モノ)に通信機能を持たせ、インターネットに接続し相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと)や5G(次世代移動通信システム)型のスーパーサービスと、大容量データシステムとの分断だからである。」

Googleは次のステップへの準備が整っており、EUは遅れを取っているとSkelton氏は主張。「Googleを解体することは自殺行為。EUの統一デジタル市場のアイデアは、皮肉にもGoogleに負けている」と言及する。

 

Googleへの圧力

欧州委員会のねらいはGoogleからお金を巻き上げ、自国で育った同様のサービスとの競争を回避することであると、Stratecast/Frost & SullivanプログラムマネージャーのMichael Jude氏は語る。続けて、「Googleはこの件で勝訴することはできない。」「Googleが競合の取引を阻害しようとしているというEUの主張は真実に近いが、完全に正しいとも言えない」と彼は加えた。

 

 

※当記事は米国メディア「E-COMMERCE TIMES」の11/7公開の記事を翻訳・補足したものです。