ECモール・マーケットプレイスで流通する偽造品を撲滅できるか - 国内外の取り組みから見える3つの方策

 

国内でもヤフオクなどのC2Cのマーケットプレイスにおいては、国外関連の出品者によるものと思われる偽造品を目にすることがある。また、各種スパムからの誘導先でも偽造品のみを取り扱っているECサイトに遭遇することもある。さらに、海外ではオンラインで流通する偽造品の存在が無視できない状況になっていることもあり、モールやマーケットプレイスを運営している企業は取り組みを強めてきている。偽造品の流通は、消費者の安全と真正品の売上・ブランドイメージを同時に脅かすものであり、決して許されることではない。今回はECサイトの拡大に伴って不可避となりつつある偽造品対策についての現状をまとめていく。

 

 

国内外における偽造品被害の現状

 

消費者サイドの調査データはないが、メーカー企業サイド側の調査データを見てみよう。今年の3月に発表された特許庁の模倣被害調査報告書によると、2014年4月1日~2015年3月31日に模倣被害を受けた企業のうち、インターネット上の偽造被害を受けた企業の割合は62.3%(全体の13.6%)。2010年度以降、インターネット上で被害を受けた企業の割合は増加傾向にあり、2012年度以降は6割を超える高い水準にある。

偽造被害内容の内訳としては、海外ECサイトによる偽造品の販売取引が48.2%と最も多く、国内インターネット通販サイトによる偽造品の販売取引が続いている。特に海外・国内の通販サイト・オークションサイトにおける模倣品の販売被害は被害の中ではかなり多いことが分かる。

 

一方海外では3月14日、アリババ創業者ジャック・マー氏が自社サイトに巣食う偽造品を一掃するため、社内の偽造品防止チームに無制限の予算と人材を投入することを約束した。次いで4月13日にアリババは偽造品プラットフォームのイメージを払拭するための一層の努力として、EC関連企業として初めて反偽造品国際非営利団体である国際反模倣委員会(IACC)に参加した。このようにグローバル市場へ本格進出したいアリババは、顧客の信頼獲得とさらなる市場拡大への足枷となっている偽造品の追放に本腰を入れはじめたといっていいだろう。

 

 

ショッピングモール運営企業による対策現状

 

では、ショッピングモールを運営している企業による偽造品対策の現状を見ていこう。

 

楽天市場

楽天市場は、万が一ブランド偽造品を購入してしまった際の保障として、「楽天あんしんショッピングサービス」を提供している。これは偽造品と思われる対象ブランド・対象品目の商品を購入した場合に楽天へ補償申請できるサービスだ。

 

Tmall

Tmallは偽造品を購入してしまった消費者向けの保険を導入している。偽造品を購入してしまった消費者に無条件の返品・返金を約束するものである。

 

サイト上に記載があるモールはかなり限られている印象だ。

 

 

マーケットプレイス運営企業による対策現状

 

次に、C2Cのマーケットプレイスを運営している企業による偽造品対策の現状を見ていく。

 

Amazonマーケットプレイス

Amazonの公式サイト内のAmazon偽造品の取り組みページで取り組みについて宣言がされている。そこでは、Amazonが偽造品を発見し、マーケットプレイスに出品されることを防ぐための方法を常に改善していくと記載されている。しかし、具体的な内容や手段については細かく記されていないため詳細は不明だ。

 

eBay

eBayは、知的財産保護プログラム(VeRO : Verified Rights Owner Program)を策定し実施している。これは知的財産権を侵害する内容が含まれる出品商品の削除をeBayに申請し、迅速に対応するためのプログラムだ。

 

ヤフオク

ヤフオクが行っている偽造品トラブル安心サポートは、一部のブランド品に限られるが、届いた商品が偽造品だった場合、被害相当(落札)額をTポイントで保障するという内容。落札者が落札後30日以内に申請すると、ヤフオクによる申請書類の審査と偽造品の送付・審査を終えて正式に偽造品であることが認められた場合にポイントが送付される。相手ストアに対してヒアリングも行われるため、1ヵ月~3ヵ月ほど時間を要するようだ。

 

メルカリ

メルカリの利用規約にて偽造品などについては各自が判断しメルカリは責任を負わないことを明言している。基本的には当事者間でのトラベル解決を呼び掛けているようだ。

 

偽造品対策は出品者が悪意をもった商品を出品しやすいマーケットプレイスの方がモールよりも課題意識が高いようだ。

 

 

偽造品対策サービス

 

ショッピングモールやマーケットプレイス運営企業以外の企業においても偽造品撲滅のためのサービスの提供を行っている。

 

模倣品画像検知システム

株式会社イー・ガーディアンが提供する人工知能型画像認識システム「ROKA SOLUTION」では模倣品画像検知フィルタを提供している。

あらかじめ目視で分類した大量の画像や動画データを「教師データ」として学習し、インターネット上で出品された対象となる画像や動画を画像解析することで偽造品の出品を発見できるサービスとなっている。加えて、過去に不正利用された画像と完全一致した画像だけでなく元の画像から加工された画像まで発見することができるというもの。

正しく判定できるかどうかを数値で評価し、間違っていれば自動学習するという作業を繰り返し行う事で、判別能力も向上させるという人工知能ならではの強みを持つ。さらに機械によって自動判定されるため、スピーディに判定結果(0.3秒/枚、データの受け渡し時間3~5分程度)を出すことができる。目視では真贋判定が難しい商品も、画像処理の影響を受けずに豊富な画像データから一発で真贋判定することができる点が大きな武器になっている。

 

ブランドマネジメントソリューション

トムソン・ロイターは、インターネット上に出品される偽造品を探し出す模倣品対策ソリューションの提供を行っている。

世界で最も利用の多いECサイトの95%を24時間モニタリングし、検知した商品の削除申請を一括で自動送信し、削除申請後も定期的な監視が可能となるもの。商品の真贋判定、偽造品告発の自動化、専門スタッフのアドバイス、効果測定レポートの作成、継続監視を通して、包括的なブランド構築・保護を実現することをサポートするものだ。

 

 

国内外の取り組みから見える3つの方策

 

ECモール・マーケットプレイスにおいての現状を見てみると、基本的には消費者自身が偽造品であることを発見・申告してから運営会社側が動くという対症療法的な対応がメインのようだ。問題のある商品を運営会社側がパトロールするような取り組みは現状ではほとんど行われておらず、アリババのようにECモール・マーケットプレイス運営側が大規模な投資と体制の確保を約束するのは極めて異例といえる。そして、ここで紹介した偽造品監視サービスについても、偽造品対策を講じても実際にどれだけ被害が減少したかをはっきりと数値で捉えることが難しいこともあり、費用対効果の面から対策を諦めてしまう企業もあるという。そのため結果として偽造品が流通した場合でも消費者による自己申請型となっている側面もありそうだ。

この傾向は悪質な偽造品業者とのいたちごっこを助長するものであり、決して効果的な対策とはいえない。しかし一部のマーケットプレイス、特にメルカリをはじめとする新興のフリマアプリの場合、フリマアプリ運営者が取引の仲介(エスクロー型)を行うことで購入者に商品がわたってから料金を支払うシステムになっている。そのため「料金を支払ったのに商品が届かない」というトラブルの防止だけでなく、受け取った際に購入者が偽造品と見抜くことが出来れば、偽造品被害を水際で防ぐことも可能だろう。このように偽造品が流通しても購入者が被害を受けないエスクロー型のような仲介の仕組みをECモール・マーケットプレイスも導入することが出来れば被害は少なくなるだろう。

際限なく現れる偽造品は、それにより利益を得ることができるかぎり出現を完全に根絶することは難しい。しかし偽造品業者は仮に出店できたとしても、消費者自身が商品が偽造品であることを見抜いて買わない判断をすれば、十分な収益をあげることができずに自然消滅していくはずだ。したがって消費者が自主的に真贋判定を行えるようになることで偽造品を買わなくなるように環境を整えることも重要だ。しかし残念ながら消費者目線での真贋判定ツールは十分に普及していない。第三者機関による現存の模造品対策サービスも基本的には法人向けなので、消費者がもっと主体的に正規品の真贋判定を行うためのサポートとなれるサービスも必要となってくる。

このように、ECモール・マーケットプレイスから偽造品を撲滅するためには、運営企業による出品商品のパトロール、取引形態のエスクロー化の促進、購入者による真贋判定を支援するサービスの拡充の3つの方策を進めていくのが現状では最善解のようだ。誰しもが安心して購入出来るECモール・マーケットプレイスとなっていく取り組みの拡充に期待したい。