カタログ通販大手のネット通販への取り組み

 

カタログ通販と言えば、インターネットが浸透するだいぶ前から主婦層を中心に幅広く浸透していた。しかしネット社会の到来と共にカタログ経由での売上は徐々に下がっていき、ネット通販への取り組みを本腰を入れて行ってきた。そんな中、昨年千趣会では58.7%の売上をネット通販で立てるなど既にカタログを上回っているサービスも存在している。カタログ通販からネット通販へ、カタログ通販各社の取り組みを見ていく。

 

 

 

ニッセン

 

ニッセンは呉服のカタログ通販からスタートした、1970年設立の京都の通販会社だ。

 

 

売上高は1964億6,700万円(連結・2013年12月期)、会員数は2013年末時点で3,160万人で、うち約9割が女性で30〜40代が中心となっている。ニッセンでは、春、夏、盛夏、秋、冬の年5回5,000万部を発行しているメインカタログの「nissen」と、顧客の年齢やライフスタイル別に編集した14種類のスペシャルカタログを組み合わせて顧客に届けており、総発行部数は年間2億冊にも上る。顧客の情報に応じて用意するカタログのパターンは数百にもなり、例えば3世代が同居する世帯には本人宛てに加えて子ども向けとシニア向けを一緒に送る、といった工夫をしている。

書店などでも無料カタログを配布していてカタログ通販のイメージが強いニッセンだが、ECへの取り組みは2000年からと早く、2010年上半期にオンラインでの売上が全体の半分を超えたのを境に、現在もその比率を伸ばし続けている。2007年にはECサイト「ニッセンのオンラインショップ」の会員向けに、SNSを採用した顧客参加型コミュニティサイト「ハピテラ」を開設。会員によるリアルな口コミをチェックできるほか、会員同士のコミニュティなども用意した。

また同社では、SNSへの書き込みなどのソーシャルグラフ情報にアクセスするため、ECサイトをFacebookやTwitterなどのソーシャルIDによってログインできるように改善。それにより、購買履歴やWebログの分析では知ることのできなかった個人の趣味嗜好から、結婚、出産、引っ越しといった人生の節目となるイベントまで把握することが可能となり、カタログ送付やレコメンデーションに応用することで一定の成果を上げ、商品の改善や新商品の企画開発にも役立ててきた。ほかにも、2011年にはYouTube内にECサイトと連動した公式チャンネル「nissen Official チャンネル」をオープン。モデルが出演する動画が公開され、動画上に表示されるリンクをクリックするとコーディネートをまとめてECサイトから購入することが可能となっている。

このようにさまざまな施策を打ち出す一方で、主力であるカタログ通販の売り上げは減少し、2013年度は33億円の営業赤字に転落した(12年度は6億円の営業黒字)。販売効率を上げるために販促費を削減して商品点数を絞り込んだことが裏目に出たり、海外で製造した商品を輸入して販売するニッセンにとってはアベノミクスによる円安も逆風となってしまったのだ。それに加え、ファストファッションの隆盛やネット通販の普及もあって総合カタログの発行時期と季節感が合わず、売り上げが伸び悩んだ。

ニッセンの会員数は現在3,160万人だが、実際に注文をした顧客は1年間で延べ460万人ほど。絶対数は減少の一途をたどっている。そこで2013年12月、ニッセンはセブン&アイ・ホールディングスの傘下に入ることを発表。これまで店舗を持っていなかったニッセンは、通販とセブンの店舗網を融合させれば成長が見込めると判断し、セブン&アイ・ホールディングスの子会社となった。今後は、購入を促す商品戦略や、より的確な販促の展開で稼働客数の減少に歯止めをかけるほか、Tポイント導入による販売経費改善、カタログ発行回数の増加などを進め、2015年度には黒字転換を見込んでいる。

 

 

千趣会

 

千趣会は“ウーマンスマイルカンパニー”を企業ビジョンに掲げ、女性に特化したカタログ通信販売で支持されている通販大手だ。

 

売上高は1,415億5200万円(連結・2013年12月期)、「ベルメゾン」のブランド名で知られる同社は元々こけしの頒布販売から始まり、現在は1,400万人の会員を有する。カタログ掲載商品の7~8割は千趣会独自開発の商品で、その数は年間2万7000点を超える。同社は、インターネットがまだ一般的に普及していない1995年からデジタルコンテンツへの取り組みを開始。2000年にはECサイト「ベルメゾンネット」の運営を開始し、カタログに掲載しているほぼ全商品をECサイトで販売するようになった。

当初はカタログの補完、注文ツールとしての機能が強かったEC事業だったが、2006年頃から徐々に方向転換を行い、カタログと連動させずにWebのみで販売する商品の開発などに着手してきた。その結果、ECサイト経由の売上は伸び続け、2009年にはカタログ事業全体の半数以上を占めるほどになる。同社はさらにカタログとインターネットの連動に本腰を入れ、2009年度の事業計画に“ネットへのさらなるシフトと、カタログ配布効率化による媒体費用削減”を掲げ、前年度よりカタログを750万部カット。2010年からは新たに組織体制も変更して急速にEC事業への最適化を進めてきた。

さらにグループ成長戦略として、新しいベルメゾンの創造とネット事業の強化、ブライダル事業の拡大などを掲げ、2011年12月期を初年度とする3カ年の中期経営計画をスタート。商品ジャンルなどで分断されていた商品開発機能を集約させ、組織の運営管理を一元的に行えるようにした。また、新たな試みとしてテレビCMや新聞折込などを活用したクロスメディアプロモーションの展開を開始。ブランドの認知度を上げ、新規顧客の開拓にも力を入れた。

さらに、「ベルメゾンネット」の強化とともに、「モバコレ」や「イイハナ」などその他ネット事業の拡大を推進。「モバコレ」ではPCとモバイルを両輪としたファッションブランドECサイトとして展開の拡大を図り、「イイハナ」ではフラワーギフトの専門サイトから総合的なギフトECサイトへの転換を進めてギフトに関する専門性を持たせた。同社はゲストハウス式結婚式場の運営を行うディアーズ・ブレインへの投資も行っているが、この基盤をもとに列席者にカタログ配布などを行ってベルメゾン事業への送客を図るほか、引き出物用ギフトカタログの「MUSUBI」についても商品力を高めると発表。さらにベルメゾン会員向けの結婚式場紹介サイト「ベルメゾン・ウェディング」の内容を充実させ、全国の式場との関係を強化していくとしている。

2011年からは、ニッセンと同様にユーザーが動画を見ながら買い物を楽しめる「ベルメゾン動画ショッピング」を開設。レポーターやモデルが番組風に商品を紹介する動画を公開し、着用した時のイメージをより明確に伝えている。また同社はアプリの提供にも力を入れており、現在はショッピング系無料アプリとして「ベルメゾンデジタルカタログ」「ベルメゾンお得情報」「ベルメゾンカタログプラス」「ベルメゾン商品検索」の4種類を用意。カタログに掲載されている商品にスマートフォンをかざすだけで使用シーンを動画で確認したり、カタログ掲載以外のファッションコーディネートといった追加情報を見ることができる「ベルメゾンカタログプラス」、人気商品ランキングやtwitter上の注目アイテムなどを検索できる「ベルメゾン商品検索」などバラエティに富んでいる。また、購入を促す付加価値サービスとして、同社では衣料品やブーツ、布団のクリーニングサービスを行っている。いずれも宅配便を活用した通販型のサービスで、最大8ヶ月の長期保管を用意。オフシーズンの衣料品などを預け、自宅の保管スペースを確保したいという顧客から支持されている。

 

 

ベルーナ

 

ベルーナは、ミセス向けのファッションカタログ「ベルーナ」「ルフラン」、20~30代向けファッションカタログ「ルアール」「リュリュ」などを運営する通信販売会社だ。

 

 

同社は50~60代の中高年層が顧客の中心ということもあって他社に比べてECへの対応は遅れていたが、2011年3月期のネット販売売上高は前期比36.4%増の98億9000万円とこの頃を境に大幅に成長した。低価格帯商品やリピートしやすい日用品・買い回り品などの充実と、サービスの強化によって飛躍的にECが伸びたのだ。中でも、低価格帯商品の比率は数年前の5%から約20%まで上昇。一方で、商品点数の増加やレコメンドエンジンの導入で1回あたりの購入点数が増えており、売り上げ増に貢献している。

また、2010年1月には基幹システムを刷新し、注文から配送までの日数を短縮するなど、サービスレベルを大幅に向上させた。また、ベルーナでは他社がこぞって行っているタレント起用のCMには手を出さずにきたが、2012年8月から元AKB48の篠田麻里子を起用したリュリュのCMを開始。これによりブランドの認知度が高まり、若年層のユーザーの取り込みにも成功した。

同社は2014年3月期から3カ年の短期経営計画を発表。最終年度となる2016年3月期の連結売上高は1600億円(13年3月期比35.7%増)、営業利益は120億円(同69.5%増)を目指している。主力となる総合通販事業ではミセス層向け通販を中心に売り上げを伸ばすほか、2011年頃から力を入れてきた店舗事業の大幅な拡大を見込んでいる。現在は北関東に衣料品関連のテスト店舗を3店開設しているが、今後は店舗を10店まで増やす予定で、首都圏を中心として横浜などの南関東にも出店する計画だ。

 

 

カタログ通販からネット通販への移行

 

実はカタログ通販とネット通販は親和性が高い側面を持っている。オンラインでモノを販売する際、そのターゲットやコンセプトをしっかり作りこみ店舗を構築していくことが基本となる。各社はカタログ事業でも、ターゲット毎に複数のブランディング化された紙媒体を発行している。そのためオンラインにおいても同様の切り分けを行い、複数のサイトを立ち上げ運営するということを違和感無く行えるのは強みだ。また、通常はサイトに掲載する商品写真や商品訴求写真の品質や枚数などが追いつかなくなり、サイトで十分に商品の強みを訴求出来ないケースが目立つ。しかしカタログ上では、従来からオンライン以上に豊富な写真を使用しているため、ECサイトに掲載する素材は豊富に存在し、撮影のノウハウも蓄積されている。紙媒体とオンラインの違いもあるため、そのまま素材とノウハウを使うことは出来ないが、アドバンテージになっていることは間違いない。

従来カタログ通販事業では、ターゲットの年齢層が高いため、ECの対応の優先度はそれほど高くないと考えられていた。しかし、各社の取り組みを見てみると、早期からインターネット対応に取り組んだおかげで、その地位を守っていると言える。そしてこれらのカタログ通販各社の主要ターゲット年代も時代と共にネット世代、ソーシャル世代となってくる。カタログ通販で培ったCRM手法をオンラインマーケティングにおいても同様の質で展開することが重要になってくるだろう。また豊富な顧客情報が保持されていることから、それらのデータを活用したプライベートDMPやマーケティングオートメーションと言った新しい概念の効果も大きいいだろう。

売上高は一番高いものの赤字となったニッセンはECの売上高シェアが32%と千趣会と比べるとかなり低いことが読み取れる。このようなことからもカタログ通販のノウハウをオンライン上に上手に展開し、事業全体の利益を確保していくことが重要になってきていることがわかる。カタログからネットへの移行をどのように進めていくのか、今後の各社の取り組みを注目していきたい。