ドローンによる玄関先への荷物配送は遅々として進んでいないが、2024年はついにこの技術が実現する年になるかもしれない。

 

Yahoo Financeのレポートによると、米国サンフランシスコにあるドローン配送会社Ziplineは、2024年に米国の都市でいくつかのドローン配送計画に着手しており、2025年までには15市町での飛行を予定しているという。

 

ドローンを使った配送は、10年以上にわたって世界中で実施されているが、ほとんどは緊急時や医療品の配送に限定されたニッチなビジネスであった。しかし、FAA(アメリカ連邦航空局)は2023年9月に無人航空機に関する規則を変更し、利用に関する門戸が大きく開かれた。

 

それまでFAAは、ドローンで配送する際、飛行ルート上に地上監視員を置き、その目視範囲内での飛行を義務付けていた。2023年秋、FAAは、Ziplineと他2社に対し、地上監視員無しでの商業配送を行えるように目視内飛行の免除を認可したのだ。

 

米国オレゴン州ベンドにあるアドバイザリーサービス企業Enderle Groupの社長兼主席アナリストであるRob Enderle氏は、今回の規則変更について、「最終的には自律型ドローン配送への扉を開くものであり、コスト面でも人員確保の面でも、この技術を拡大するために不可欠なものとなる」と言及した。

 

「今回のFAAの免除は、米国でのロジスティクスと公平なアクセスのための歴史的な転換である」とZiplineは同社のWebサイトでの投稿で力説している。

 

これによりZiplineは、何百万人もの米国人に食品、医薬品、消費財その他物資をオンデマンドでかつ環境に配慮した方法で配送し、その結果、ガソリンエンジン車と比較して1回の配送あたりの排出ガスを97%削減することができる、と付け加えた。

 

必要なのは「免除」ではなく「規則」

一方で、米国ユタ州のプレザントグローブにある空域認識、セキュリティ、防衛企業Fortem Technologiesの最高技術責任者であるAdam Robertson氏は、「免除」が長年にわたって業界の発展を妨げてきたと主張する。

同氏は「ドローンによる配送の実現には、技術コミュニティが想像していたよりもはるかに長い時間がかかっている」と語っている。「ドローン配送が主流になるためには、特別な免除によって飛行するのではなく、規制が必要なのだ」。

 

ドローン配送が急速に発展すると構想していた人の中には、AmazonのCEOであるJeff Bezos氏もいた。10年ほど前、米国の三大テレビネットワークの1つCBSのニュース番組「60 Minutes」で、彼はAmazonがドローン配送に必要なFAAの認可を「4~5年以内に取得するだろう」と予測していた。

「彼はFAAの動きの遅さを見誤っていた」と語るのは、米国バージニア州バージニアビーチのドローン配送企業DroneUpの創業者でCEOのTom Walker氏。

「規制の対象がどこになるのかについての認識が不足していた」と同氏は語る。

「このプロセスで最も遅いのは、これまでも、そしてこれからも規制環境だ」。

 

さらに「現在、米国でドローン配送をしている企業は、規制の適用免除によってのみ実施している」と続けた。「FAAは有人飛行の安全性においては優れているが、ドローンによる配送を安全に領空域に組み込むには、まだやるべきことが多くある」と加える。

「現行の制限を免除するのではなく、規制に従ってドローン配送しなければならない」。

 

航空交通管制問題

とはいえ、オペレーターの目の届かないところでドローンによる配送を許可するというFAAの決定は、この技術を拡大する上で重要な意味を持つだろう。

 

「現在、400万人の顧客に配送しており、最大の課題は配送1回あたりのコストを下げることだ」とWalker氏は語った。「そのためには、遠隔操作で目視外の視界を確保しなければならない」。

「2024年の第3四半期までに、我々は目視外での配送を開始し、規模を拡大し始める予定だ」と同氏は予測した。

拡大が問題だ、とEnderle氏は同意した。「FAAの規則や、この技術の重量や参入制限のため、まだ費用対効果が高いとは言えない」と彼は言う。

ドローンのハードウェアは順調に進歩しているが、航空管制問題が残っている、と同氏は付け加えた。

「既存の航空管制システムは人員確保に苦労しており、民間航空機を扱うのがやっとのようだ」と彼は説明する。「何千機ものドローンを集中管理することなく飛ばすことになれば、非常に危険で、命にかかわる可能性もある」。

 

需要に疑問

米国カリフォルニア州サンノゼでテクノロジーアドバイスや調査を行うSmartTech Researchの社長兼主席アナリストであるMark N. Vena氏はドローンの消費者への荷物配送の需要について懐疑的な見方を示した。

 

「Amazonをはじめとする企業は、すでに多くの商品で即日配達を行っており、ドローンを使って即日配送しなければならない商品はほとんどない。したがって、このような機能に対して実質的な需要があるか定かではない」と語った。

同氏は「定期的な配送については、既存のシステムで十分であることが多く、ドローン導入の緊急性は疑問視されている」と述べた。

さらに「確立された配送方法は、都市環境における消費者のニーズを十分に満たしている可能性があり、ドローン配送の複雑さとコストの増加によって、本質的な消費者の需要に合致するかという疑問が生じている」と付け加えた。

 

ただし、スピーディーな配送が必要な分野が一つある。それは食事の配達だ。

 

「我々はファストフードレストランの配送をしている」とWalker氏。「その再注文率は90%で、注文を受けてから15.9分で配達している。ドローンにチップは必要なく、消費者にはそれがかなり好評だ」。

 

同社が発見したドローン配送のもうひとつの利点がある。「米国人の5人に2人が玄関先に配達された荷物の盗難を経験している」と同氏は述べた。「我々は裏庭に配達しており、盗難は報告されていない」。

Ziplineの住宅裏庭への荷物配送シミュレーション

 

ラストワンマイルの配送

ドローン配送の拡大を歓迎する経済セクターがあるとすれば、それは荷物配送業者だろう。このテクノロジーは「ラストワンマイル」にかかる配送コストを大幅に削減する可能性を秘めているからだ。

「ラストワンマイルは割高で労働集約型なうえ、盗難や暴力の増加により、ドライバーにとっては安全でなくなりつつあり、荷主にとってはコストがかかる」とEnderle氏。

Walker氏は現在、近隣に配送される荷物の90%は重さが8.5ポンド以下であり、その90%は家から5マイル以内の棚に置いたままになっている、と指摘した。「それでも、老朽化したインフラ上を6トンや10トンのトラックを運転して配送しているため、燃料費と人件費は上昇している」と同氏は語った。

同氏は「ドローンを利用すれば、最大10ポンドまでの荷物を配送可能で、16ドルから20ドルかかっている配送料が3ドル以下で済む」と続けた。

 

さらに「現在2023年のクリスマスシーズンだが、私が購入したクリスマスの買い物の多くは、宅配トラックから玄関までドライバーが走って荷物を持ってきて、玄関先に置き、写真を撮ってベルを鳴らすという作業を経て配達されている」とRobertson氏。

「ドライバーの作業量は膨大だ」と同氏は語る。「各家庭までの最後の1~2マイルは、時間もリソースもかかる。ドローンがそれをより速く、より安く、あるいは効率的に行うことができれば、突然経済的な実行可能性を持ち、現在の人間中心のラストワンマイル配送に取って代わり始めるだろう」。

 

※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の12/19公開の記事を翻訳・補足したものです。