WARC(世界広告研究センター)の新しい調査によると、世界の広告費は、今年は4.4%、2024年にはさらに8.2%の伸びを示し、2024年に初めて1兆ドル(7,886億円)を突破する勢いだという。

8月24日に発表されたこの分析は、WARCが独自に世界100市場のメディアオーナー、業界団体、広告代理店、調査機関を対象に行った調査のデータと、大手メディアオーナー40社の広告収入データを初めて組み合わせたものである。


このデータによると、AlibabaAlphabetAmazonBytedanceMetaのわずか5社が、今年の世界の広告費の半分以上(50.7%)を占め、2024年には51.9%のシェアを獲得してその地位を固めると予想されている。これら5社の広告収入は、今年は9.1%、来年は10.7%増加するとの予想だが、その他の媒体各社の広告収入の合計は、今年は横ばいとなる見込みだ。


ソーシャルメディア市場が復活し、支出全体の5分の1を占めるようになれば、2024年に向けて成長の原動力となることが見込まれる。さらに、この調査で初めて測定された「リテールメディア」や「コネクテッドTV(CTV)」などの新興チャネルも、今後18か月の間にブランドからの投資増加が見込まれているという。


「高金利、高騰するインフレ率、軍事衝突、自然災害など、この12か月間はまるで苦いカクテルのようなものであったが、最新の決算シーズンでは、広告市場がこの混乱に耐え抜き、今や回復傾向にあることを示している」と、WARCのデータ・インテリジェンス・予測担当ディレクターで、本調査の著者でもあるJames McDonald氏は語った。「私たちの新しい測定結果は、わずか5社の運命が業界全体の見通しにいかに大きな影響を及ぼしているかを示している。また、これらの企業は今後数か月の間に大幅な業績拡大を記録する見通しである」。

「効果的な広告チャネルとしてのリテールメディアの確立、従来の動画消費の次なる進化としてのコネクテッドTVの登場、そして、ソーシャルメディアと検索の継続的な成長により、広告主がファーストパーティデータを活用して、適切なメッセージを適切なタイミングで適切な人物に向けることに価値を置いていることが、改めて明らかになっている」と、同氏は続けた。


2024年の市場成長は、米国大統領選挙(来年の政治支出は全世界で155億ドルに達すると推定される)、オリンピックやUEFA EURO(男子サッカー欧州選手権)などのスポーツイベント、そして特に中国における取引条件の改善によって後押しされるだろう。


予測によると、ソーシャルメディアが最も急成長するメディアとなり、来年の広告費は総額2,272億ドル(総広告費の21.8%)に増加するという。InstagramFacebookWhatsappのオーナーであるMetaは、ソーシャルメディア市場のほぼ3分の2(64.4%)を支配しており、来年の広告収入は1,463億ドルになると予想。TikTokのオーナーであるBytedanceがこれに続き、2024年の推定広告収入は399億ドル、シェアは17.6%に相当し、Metaの3.5分の1ほどとなる。


リテールメディアもまた、予測期間中に最も急成長する広告チャネルのひとつである。リテールメディアへの支出は、今年10.2%、来年には10.5%増加し、総額1,417億ドル(全支出の13.6%)になる見込みだ。この中では、Amazonが圧倒的な強さを誇っており、来年はリテールメディア全体の37.2%(527億ドル)に相当すると予想される。Amazonがシェアを拡大する一方で、中国の既存企業であるAlibabaは、競争が激化する中国市場において、Pindoudou(来年の世界のリテールメディア支出の14.4%)、JD.com(9.9%)、Meitaun(3.7%)に押されつつある。


コネクテッド TV(CTV)も今年(11.4%増)、来年(12.1%増)と順調に成長し、総額は330億ドルに達すると予測。これは全支出の3.2%に過ぎないが、プレミアムビデオ支出(CTVとリニアTVの合計)の16.2%を占めている。CTVのメディア・オーナーは、ソーシャルなどのデジタルチャネルからの支出シェアを獲得したり、リテールメディアのような新たな予算にアクセスしたりするのではなく、ほとんどが既存のテレビ予算の取り合いをしている。WARC Mediaの最新グローバル広告トレンドレポートによると、リーテルメディアは10年で10倍に成長したが、その間にCTV広告市場の規模は3倍にしか成長していない。

CTVへの支出増は、今年のリニアTVへの支出減(5.4%減)を相殺するには不十分だが、政治・スポーツイベントは2024年にリニアTVへの支出を3.5%増加させるだろう。リニアTVは依然として世界第3位の広告媒体であり、シェアは15.6%、2024年の広告主支出額は1,630億ドルになると予想される。


その他、検索は2024年には総額2,292億ドルにまで成長する見込みで、これは当時の全広告費の22%に相当する。Googleは依然として圧倒的な存在であり、2024年の検索市場におけるシェアは83.1%で、2023年の82.6%から上昇し、広告収入は1,905億ドルに相当する。中国の百度の広告収入は若干増加する見通しだが、そのシェアは来年には6.5%にまで落ち込むだろう。一方で、検索市場におけるBingのシェアは、来年の売上高が136億ドルに拡大するにもかかわらず、6%にとどまると見られている。


アウトドア(7.3%増)、映画(5.2%増)、オーディオ(3.3%増)も来年は広告費が増加する見込みだが、出版メディア(1.9%減)はニュースブランドが1.6%減、雑誌ブランドが2.5%減となるなど、赤字が予想されている。


金融サービス(11.5%増)、テクノロジー&エレクトロニクス(11.3%増)、医薬品&ヘルスケア(11.0%増)が、来年最も急成長する消費者セクターと予測される。政治支出は2024年には少なくとも155億ドルに達するとの予想だ。


地域別では、米国が世界の支出額の31.3%を占めると予測されており、米国市場は今年2.2%増の3,036億ドル、2024年にはさらに7.6%増の3,267億ドルになるとのこと。


欧州の広告費は今年、わずか0.6%の増加にとどまる見通しだが、経済の逆風が和らぐにつれ、2024年には成長率が3.6%に上昇する見通しだ。ただし、中央ヨーロッパと東ヨーロッパの見通しはさらに厳しい。4.6%のシェアを持ち、この地域最大の単独広告市場である英国は、米ドル換算で今年1%の落ち込みが予想されている。スペイン(2023年に5.6%増)、イタリア(3.2%増)、ドイツ(2.7%増)はいずれも今年と来年に成長を記録すると予想されている。


中東は世界全体の支出額のわずか0.7%と最も支出規模の小さい地域のひとつだが、予測期間中に最も急成長するとされている。2023年には10%、2024年には6.2%増加し、広告市場規模は69億ドルに達するとの予測だ。


南アジアでの支出も、好調なインド市場に後押しされて急成長している(今年は8.9%増、来年は12.1%増)という。インドの広告費は今後1年半で2桁成長し、2024年には総額137億ドルに達すると予測されており、これは世界の広告費の1.3%に相当するとのこと。


東南アジアの成長率は今年4.8%、2024年には4.6%と予測され、シンガポール(2023年9.1%増、2024年5.0%増)とインドネシア(それぞれ5.1%増、7.8%増)は他の地域よりも成長速度が速く、結果としてシェアを拡大している。タイ(2023年に4.5%増)、マレーシア(3.4%増)、フィリピン(3.2%増)などを含む、この地域のすべての主要市場で、成長が記録されるだろう。


一方でアフリカは苦戦を強いられており、消費額は11.6%減少する見込みだ。しかし、来年の南アフリカの6.1%増に後押しされ、2024年には成長が回復するだろう。ラテンアメリカも、2024年に成長率が高まる(5.2%増)までは、今年の成長(0.8%増)は緩やかなものになりそうだ。


※当記事は英国メディア「Mobile Marketing Magazine」の8/24公開の記事を翻訳・補足したものです。