米国のソフトウエア開発企業AiBUYがオンラインライブ販売用の人工知能を開発。動画上で直接商品を購入できるショッパブルビデオで新しいレベルの顧客エンゲージメントをもたらしている。
業界調査によると、約96%の消費者が、動画上で直接商品を購入できるショッパブルビデオは購入の意思決定を容易にするeコマース機能として望ましいと考えている。一方、販売側では、72%の企業が動画によってコンバージョンレート(CVR)が改善された、と回答している。
米国のソフトウエア開発企業AiBUYは、オンライン小売ショッピングへの新しいアプローチに対する消費者と企業の関心の高さを背景に、ライブコマースに大きな影響を与える独自の技術をフルに活かそうとしている。
小売業者は、以前にもショッパブルビデオを活用しようとしたことがある。期待されていたものの、ニッチな層を超えて普及するほど進化を遂げていないのが現状だ。使用するプラットフォームによっては、このコンセプトで成功を収めているマーケターの例もある。
ショッパブルビデオやライブコマースとは、販売者のウェブサイト上で、潜在的購入者にチェックアウトオプションのリンクを含む製品動画を見せるものである。この手法は、消費者主導で消費者中心の商品発見をベースとするライブコマースの目的を取り入れている。
2007年にテキサス州で設立されたAiBUYは、小売業者と消費者にほかの場所では入手できないものを提供する革新的なマーケティングとコマースプラットフォームをコンセプトとしている。同社は、ビデオショッピング技術のプロバイダで、小売市場分野においてB2Bのサービスを提供している。
AiBUYのCEOであるRandy Bapst氏によると、同社のプラットフォームは、35か国で83件の特許を元に構築されているという
AiBUYのVPであるDalaney Thompson氏は「これまでに、多くの企業がショッパブルビデオに挑戦してきた。私たちは、現時点で長年にわたって、これまでにない大きな規模で、よりシームレスに、誰もが使えるようにするべく取り組んできている」と語った。
変化をもたらす可能性
このライブコマースの革新的な技術は、新しいプラットフォームのチェックアウトの段階で力を発揮する。Thompson氏いわく、それこそがAiBUYが開発した特許技術であるという。
AiBUYのこのショッピング技術は、人々を販売により近づける。そのソリューションは、現在利用可能な他のものとはまったく異なっている、とBapst氏は付け加えた。
「我々は、小売業者がコンテンツを収益化できるようにし、コンテンツ内に販売するアイテムを配置し、コンテンツから離れることなく購入、チェックアウトを可能にする機能を提供する」と同氏は語った。さらに、「これらは、新しいプラットフォームがもたらす効果の重要な利点である」と述べた。
コンテンツ内販売を可能にするこの要素は、人々のかかわり方にどう変化をもたらすか、ということである。そして、Bapst氏は将来、さらに多くの人々がコンテンツ内販売を利用するようになると考えている。これにより、マーケターは視聴者の衝動買いに依存したり、購入のためにリンクをクリックさせるような動画を作成することに悩んだりしなくて済む。代わりに、販売者がコンテンツを作成できるようになるのだ。
「それは、商品を並べることや、人々がブランドを認識し、店舗へ行って購入してくれることをただ期待して祈るより、もう少しアグレッシブだ」と同氏。
コンテンツ内販売は、エンドユーザーに影響を与える機会をもたらすだけではない。その反応は小売業にとっては重要で、特に、コンテンツ制作者、インフルエンサー、さらにはエディトリアルなデジタルコンテンツを扱う今日の市場において大きな意味を持つ、と同氏は語った。
買い物客はより便利に、販売者には新しい収益を
Bapst氏はこの新しい販売プロセスについて次のように説明した。消費者は商品に関するオンライン記事をそのまま読み、ショッパブル広告が組み込まれたストリーミングコンテンツを視聴することができるようになった。画像をクリックすると、記事や動画から離れることなくチェックアウトプロセスをシームレスに完了することができる。
動画コンテンツ内の任意の場所で商品を紹介できるAiBUYの「Hot Spots」機能
「そのほうが便利だ。この機能はコンバージョンにより近くなる。その結果、支払いを集約するためにトラフィックを失うことなく、複数のベンダーから複数のコンバージョンが得られる」と詳述した。
視聴者を獲得するのは大変なことであるため、パブリッシャーだけでなく、動画やコンテンツの制作者にとっても、その価値は大きいと同氏は考えている。
「つまり、あなたのコンテンツに興味をもった人がいれば、これまでになかった方法で収益源を確保し、コンテンツを収益化できるのだ」と語った。
真のコンテンツ内ショッピング
AiBUYのプラットフォームは、購入を完了するために消費者のトラフィックをリダイレクトすることはない。多くの企業がショッパブルなコンテンツであると謳っているが、完全にそうであるとはいえない。Amazonでさえ、買い物客が複数の商品をショッピングカートに追加したい場合、追加購入を完了するためにチェックアウトページに移動しなければならない。
AiBUYのAI駆動ディスプレイプラットフォームの場合は、そんなことにはならない、とBapst氏は強調した。同社は、他社がやろうとしていることを実現しているのだ。
例えば、動画を観て、画面上の人物が履いている靴、別の人が着ているジャケット、そこに置かれている植物も気に入った視聴者がいるとする。その視聴者は、その動画から離れることなく、複数のベンダーからすべての商品を購入することができる。チェックアウトのために外部のページに移動しないので、オファーとコンバージョンの間での視聴者の離脱をすべて無くすことができる。
技術をロックインしない
AiBUYの技術は、ベンダーが使っているさまざまなオプションや既存のソフトウェアシステムの利用可能性を担保している。
AiBUYでは、特定のユーザーが望む機能の作成に、数週間かかる場合がある。しかし、いったん設定が完了すれば、コンテンツ内販売ソリューションを使うプラットフォームはどれでも構わない。ベンダーの選ぶオプションや既存のソフトウェアプラットフォームによって利用可能な機能は異なる。
「我々はプラットフォームにとらわれない。どんなプラットフォームでも利用可能だ。プラットフォームは関係ない。結局のところ、コードの一部とプラグインの単純な統合なのだから」と、Delaney氏は語った。「ベンダーがコンテンツ内プレゼンテーションを活用し、人々の参加に影響を与える方法は、数多く存在する」。
複数の業界にアピール
AiBUYは、ターゲットが1つのマーケティングプラットフォームではなく、ユーザーを1つの業界に限定することもない、とBapst氏は言う。当初は、主にウェアラブルウェア、化粧品、スポーツ用品のベンダーが採用することが多かった。
「どんなものでもよい。つまり、コンテンツや商品、あるいはその両方を持つクリエイターで、収益化したい、商品を売りたい、と考えている人が我が社のプラットフォームを採用している。その人たちがターゲットユーザーなのだ」と同氏は語った。
同社はさまざまな潜在的新規ユーザーと積極的に交渉している、とBapst氏は語る。NFL、ESPN(米国のスポーツ専門チャンネル)、化粧品会社、メーカーなどの団体と交渉中だ。業種や特定の業界に限定していない。
ユーザーを制限することは想像力の欠如に過ぎない、とBapst氏は主張する。Thompson氏も、メタバースプラットフォームの領域での活用も考えている、と同意した。
同氏は、「ゲームの世界やバーチャルな世界のようなマルチメディアにも私たちのプラットフォームが活用できるという、プロセスや考え方がこのコンセプトを面白くしている」と続けた。
Thompson氏は、今後どう発展していくか見守りたいと考えている。同社はまだ本格的にそうした統合を進める段階には至っていない、と彼女は認めた。
「しかし、物事が順調に進んでいることは間違いない」と締めくくった。
統合デモはAiBUYのウェブサイトで公開中。
※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の5/22公開の記事を翻訳・補足したものです。