ソーシャルコマースの利用が急増し、オンライン小売業者は、成功に導く販売戦略を適応させる必要にせまられている。ただし、このソーシャルコマースという新たなマーケティングプラットフォームでセラーが良い結果を得るためには、ブランドは、従来のeコマースとソーシャルメディアマーケティングが同じではないことを理解しなければならない。
長年の研究により、eコマースのチェックアウトプロセスは最適化された。データマーケターがコンバージョンを最大化できるように、リサーチャーは、顧客体験のあらゆる側面を詳細に調査してきた。しかし、次世代のマーケティングフロンティアであるソーシャルコマースに関してはそうではない。
ソーシャルコマースにおいて、成果を上げるための新たな手法を開発するという戦略を模索しているデータ収集者によれば、ソーシャルコマースで利益を上げる戦略構築において極めて重要なのは、消費者の動機を理解することだという。
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リサーチャーは、ブランドに親近感を持つ消費者の大多数が、ソーシャルメディアプラットフォームで買い物をする可能性が高いことに気付いた。では、TikTokやFacebookで、彼らは、本当に製品を購入したのだろうか。これらのチャネルや類似したチャネルの利用が潜在的購買者を生み出したことは間違いない。その新たなブランド認知が、顧客体験を改善し、購買意欲を刺激したのだ。
米国のソーシャルメディア管理ソフトウェアプロバイダSprout Socialは、ソーシャルコマースへの認識や行動の原動力について、米国の消費者1,000人を対象に調査を行った。その結果、調査対象の65%がすでにソーシャルメディアを通じて直接購入していることが明らかとなった。
Sprout SocialのCMOであるJamie Gilpin氏によると、ソーシャルコマースの急成長は、マーケティング業界を席巻しており、米国の小売ソーシャルコマース売上は、2023年までに560億ドルを超えると予測している。
同氏は、「ソーシャルコマースをまだ活用していないブランドもあるが、10社のうち約8社が今後3年以内にソーシャルコマース機能を利用することになるだろう」と語った。
似て非なるチャネル
ソーシャルコマースから得られるメリットは、ソーシャルメディア、eコマース、ソーシャルコマースの主な違いを示している。Gilpin氏は、ソーシャルコマースでは、従来のeコマースと異なり、ソーシャルプラットフォームでの商品発見から購入までの障壁を完全に排除することができると指摘する。
「これは、あらゆる規模の企業にとって、消費者がすでに時間を費やした場所で熱心なオーディエンスを獲得し、売上につなげることができる素晴らしいメリットだ」と同氏。
実際に、消費者はこれまで以上に多くの時間をソーシャルに費やしている、と同氏は指摘した。この消費者の関心の変化に伴い、もはやeコマースに全面的に依存するだけでは十分ではなくなってきている。
Gilpin氏は、「ソーシャルコマースに注力しないブランドは、売上をあげるチャンスを失う可能性がある。ソーシャルコマースは、今後も続くものであり、小売業者が世界規模で消費者にリーチする素晴らしい機会を与えてくれるものだ」と付け加えた。
社会経済要因
Sprout Socialの調査によると、ソーシャルメディア上でより多くの購買意欲を引き出す鍵は、ブランド認知度であることがわかった。ソーシャルメディアにより多くの時間を費やすようになるにつれて、そこでショッピングをする時間も増えている。消費者の71%が、これまでより2021年のソーシャルメディア利用が増えた、と回答。そのうちの半分近く(34%)が、製品、サービス、ブランドについて知るためにソーシャルメディアを利用しているという。
友人、家族、クリエイターたちからの大量のコンテンツをスクロールしていると、思わず手を止めて買い物したくなるような投稿は、すでに知っているブランドから発信されている可能性が高い。ソーシャルメディアの利用者は、別のチャネルでその製品をすでに知っており、素早くリサーチするために、ソーシャルでの発信を利用する。今や、ソーシャルメディアは、統合的なマーケティング戦略にとって重要な要素の一つである。
消費者は、インフィード広告、最初に表示されたページ、ストーリー広告、インフルエンサーやクリエイターの投稿、ライブストリーム動画投稿、ハッシュタグなどを介してソーシャルコマースで製品を発見している。したがって、ブランドは、ソーシャルコマースでより多くのROIを得るためには、注目を集める必要がある。
そのために、有料とオーガニックのハイブリッドなソーシャル戦略によって、ブランドの発見力を高めることができる。Sprout Socialの分析によると、このアプローチによって、購入する準備ができた時に、関連性が高い見込み客に注目の人気コンテンツを提供することができる。
消費者は、ストレスから解放されたいと思い、自分へのご褒美としてソーシャルコマースを利用するという調査結果がある。ソーシャルコマースは、買い物セラピー(落ち込んだ気分を吹き飛ばすためにするショッピング)に耽る傾向がある。この調査では、消費者の71%がソーシャルから直接購入するのは自分自身のものである場合が一番多いと回答した。
誰が何を買うのか
その項目のトップはアパレルの購入で45%。ソーシャルメディア上で2番目に多く購入されたカテゴリ(26%)は、映画、楽曲、ゲーム、サブスクリプションのアプリといったメディアそのものである。
残りのカテゴリも、購入比率はそれぞれ23~20%の間となり、上位から順に、書籍、食料や飲料、化粧品、ペット用品、美術品や工芸品となった。
性別による購入の傾向を分析したところ、女性は美術品や工芸品、化粧品、ジュエリーを購入することが多いことが明らかとなった。一方で男性は、サブスクリプションアプリや電化製品に大きな関心を示している。
新戦略の立案
ソーシャルコマースにおける習慣には人口統計学的な違いがあり、ターゲットオーディエンスのニーズと要求を理解することが重要であると指摘されている。ソーシャルコマースは、発展途上であり、独自のエンゲージメントの基準で固有のトランザクション機能をリリースし続けている。つまり、マーケターは効果的な商品リストが何かを再考しなければならない。
戦略における留意点:ソーシャルプラットフォームでの売り上げを期待するマーケターは、消費者が何を探しているのか、また、その理由をオーディエンスデータから見つけ出さなければならない。
プロのアドバイス:ソーシャルメディア管理ツールを利用して、プラットフォームによるオーディエンスの違いを追跡する。そのデータを利用し、消費者の関心に基づいて、商品リストやプロモーション戦略を立案する。
また、「すべてのソーシャルコマースのユーザー体験は同じではないことを認識しなければならない」とSprout Socialのレポートは指摘している。そして、ブランドは消費者の興味をひくために商品リストを見直す必要がある。
それを効果的に実行するためには、ユーザーが作成したコンテンツの適用方法、製品が実際に使用されているところの見せ方、価格の詳細の提供方法などを十分に検討する必要がある。マーケターは、洗練された写真を提供し、クーポンやプロモーションコードを提供する必要もある、とレポートは示唆している。
コンテンツ、ソーシャルプラットフォームの問題
説得力のあるビジュアルコンテンツは最も重要である。消費者は、ユーザーが作成したコンテンツ、レビュー、ライブ動画などで製品リストの詳細を知りたいと考えている。リストが詳細であればあるほど、ソーシャルメディアの潜在客は、特定の製品が日常生活にもたらす付加価値を理解することができる。
マーケターが視覚的なプロモーションをどこで実行するかは、ソーシャルエコノミーの販路に影響を及ぼす。Sprout Socialのレポートでは、消費者が購入する可能性が最も高いのは圧倒的にFacebookで、回答者の75%が同プラットフォームを選んでいる。
41%のInstagramと40%のYouTubeが、僅差で2位の座を分け合った。TikTokとPinterestは、それぞれ21%で3位となった。
同調査によると、最も好まれないプラットフォームについては、その差は若干開いた。消費者が購入する際に選択することの少ないプラットフォームは以下の通り。
・Twitter 17%
・WhatsApp 10%
・Reddit 8%
・Twitch 6%
この結果を総合的にみると、静止画や文字だけでなく動画や音声も含めたリッチメディアで製品を紹介することが有効であることがわかる。Facebook、Instagram、YouTubeは全てに対応している。
Instagramは、リッチメディアコンテンツに対応しているとはいえないが、ブランドの商品リストに、実際の消費者がタグ付けした投稿を含めることができる。これにより、ユーザーがその製品を気に入った理由をよりリアルに知ることができるとリサーチャーは指摘している。
リサーチャーによると、今回の調査結果は明らかである。コンテンツが豊富な製品リストはソーシャルコマースにおいて重要な役割を果たす。
やってはいけないこと
ソーシャルコマースは、オンライン販売者がオーディエンスとどのようにつながるか、ブランドがどのように収益を上げるかを見直す機会だ。しかし、消費者の購入意欲をなくしてしまうような間違いを犯しがちだ。
企業がソーシャルコマース体験を、つまらないものからシームレスなものへと向上させるためには、どのような工夫をすれば良いか。リサーチャーは、「ソーシャルコマースに関して、ブランドは何を間違えているのだろうか?」というシンプルな質問をした。
ここでは、ソーシャルコマースの問題点トップ3と、それらを回避する方法を紹介する。
1つ目
ソーシャルメディアプラットフォームに投稿された消費者の質問やコメントに回答していない(44%)。eメールや企業のウェブサイトよりも、ソーシャルメディアはカスタマーサービスの問題解決や質問のために好んで利用されるチャネルである。
2つ目
自社のオーディエンスに対して的外れな製品やサービスのプロモーションをする(44%)。間違った優良広告は、広告費やオーディエンスの時間の無駄である。オーディエンス調査は、何をリストに載せ、宣伝するかを決めるための重要な最初の一歩となる。
3つ目
不便なチェックアウト体験を提供している(38%)。消費者が購入を完了するためにソーシャルネットワークを離れる必要がある場合でも、すぐに適切な商品ページに誘導し、購入までの経路を明確かつ容易にすること。
新しい顧客体験チャネルのソーシャルメディアメッセージ
スイスに本社を置き、オムニチャネルコミュニケーションを提供するMittoは、ブランドと消費者のソーシャルメディアメッセージが増加しているとのレポートを発表した。同社の調査によると、米国の消費者の70%が、新型コロナウイルスのパンデミック開始以降、ソーシャルメディアの利用が全体的に増加したと回答した。
これは、ソーシャルコマースの利用が急増していることと大きく関係している。調査対象の消費者の58%が、「ソーシャルメディアを経由したブランドとのやり取りも増加した」と回答した。
MittoのCEOであるAndrea Giacomini氏は「現在、非常に多くのコミュニケーションチャネルが利用できるようになったことで、ブランドは、消費者がどこにいてもメッセージ戦略を適応させることができるようになった」と述べた。
同氏は、「パンデミックが始まってから、ソーシャルメディアの利用が増え、消費者がブランドとのやり取りに、より一層ソーシャルメディアを活用しようとしているのは当然のことだ。また、ソーシャルメディアメッセージを含めたデジタルの顧客体験を進化させるブランドは、効果的な顧客エンゲージメント獲得という利益を得るだろう」と語った。
※当記事は米国メディア「E-Commerce Times」の3/1公開の記事を翻訳・補足したものです。