『Web幹事』や『動画幹事』を運営する株式会社ユーティルは、「ECサイトに欠かせない機能、コンテンツの見せ方、集客方法は何か」という観点から、勢いを増す国内D2Cサービス80サイトを独自調査し、「D2C・ECサイトに必要な機能・運用」ポイントをまとめた調査レポート「D2Cサイトの調査レポート&ECサイト運用の心得」をリリースした。その一部を紹介する。
製造から販売まで、仲介業者を挟まずに自社でおこなう「D2C」モデルの市場での需要はますます高まり、アメリカでは1兆円を超えるビジネスとして注目されている。日本でもD2Cモデルを採用したブランドが登場し、EC業界に新たな市場をつくりはじめている。
「オンライン〇〇」という言葉が日常的に使われるほど、ここ数ヶ月で生活スタイルは一変した。オンラインショッピング利用がますます加速していく中、ECビジネスへの参入を考えている企業が増えている。その中で、「D2Cビジネスを始めたいが、どんなサイトを作れば良いか分からない」、「商品価値をどう見せれば良いのか不安」、「ECサイトの運営でどこに力を入れるべき?」などといったECサイト特有な悩みが実状としてある。そこで、第一線で活躍している国内D2Cサービスを独自で調査した。
まず、D2Cサービスのサイト構築について見ていく。
サイト構築に使用しているCMSは、「Shopify」がD2Cサイト全体の4分の1を占める結果となった。サイト構築CMSと言えば「WordPress」をイメージする人が多いだろうが、利用率は全体の1割程度で、直近のShopifyの勢いを感じさせる結果となった。
次に、商品説明について見ていく。
D2Cサービスの61.3%が、ブランドストーリーをサイト内で表現していた。「共感」を呼ぶコミュニケーションは、D2Cサービスの特徴が表れている。数あるECサイトの中から自社商品を選んでもらうには「差別化」が必要であるが、サイト内で表現しているストーリーに共感されることこそが、最も強力な差別化である。よって、ブランド発足から商品化までに込めた想いをサイト内でしっかりと伝えることが大切である。
次に、D2Cサイトで実装されている機能について見ていく。
サイト内検索機能を実装しているD2Cサイトは全体の4割、チャットツール機能の実装は1割程度に留まる結果となった。両機能共に、ファッション系サービスで多く導入されている傾向が見受けられる。
商品レビュー機能の導入率は16.3%で、「みんなが良いと言うから買う」ではなく「私が良いと思ったから買う」を実現するためのコミュニケーションの結果だと思われる。お気に入り登録機能の導入率は22.5%で、ファッション・コスメブランドでの導入が目立った。
同様に、ポイントサービスの導入率も低く、12.5%だった。顧客の囲い込み施策としては有効だが、実装面や会計面でのコスト負担が大きいため気軽に導入へと踏み切れない実状がある。
D2Cサービスが大切にしている「共感」は、顧客との絆を深めるコミュニケーションによって生まれるものである。実利を訴求した販促方法の優先順位は下がるのかもしれない。共感を呼ぶための世界観を表現することはとても大切だが、こだわり過ぎた結果「使い勝手の悪いサイト」になっては本末転倒である。気持ちの良い購入体験を用意した上で、世界観にどれだけ没入してもらえるかを追求するのがポイントである。また、通常の企業サイトと違い、ECサイトは購入完了後の運用も含めたサイト設計を考える必要がある。オペレーションコストをできる限り抑え、商品開発や情報発信に力を注ぐのに最適なサイト構築を行うべきである。
最後に、集客に欠かせないSNSの利用状況を見ていく。
6割近くのD2CサービスがFacebook、Twitterを利用していた。コミュニケーションを大切にしていることからも、D2CとSNSの相性の良さがうかがえる。
Instagramの利用率は86.3%とSNSツールの中で最も高い結果となった。世界観を大切にしているD2Cサービスにとって、Instagramは相性の良い表現方法である。一方、LINE公式アカウントの利用率は3割程度に留まった。
先に紹介したSNSツール(Facebook、Twitter、Instagram、LINE)以外の利用率は3割ほどで、YouTubeやPinterestなど、視覚に訴えるツールの活用が目立った。中には、Spotifyを使い世界観を表現しているユニークなサイトもあった。
どれだけサイトに想いや商品価値を綴っても、届けたい人に見てもらえなければ共感は生まれない。情報は積極的に発信をしていくべきである。共感を生むための伝え方はひとつだけではなく、複数のSNSを各SNSの特性に合わせて使いこなし、情報発信を行うことが大切である。
今回の調査で、「D2Cサイトの6割がブランドストーリーを表現している」、「実装されている機能の導入率が低い」、「Instagramを中心にSNSが利用されている」など国内D2Cサービスの実状がわかった。
ECサイトを運用する上で、ブランド、商品に込めた想いをしっかりと伝え、「見た目」と「実益」を共存させるひと工夫をし、情報発信は各SNSの特性に合わせて「複数のSNS」を積極活用することが大切である。リアルと同様、オンラインでも「ブランドや商品への共感」が大切なことに変わりはない。その共感を生み出すきっかけづくりが情報発信である。