プログラマティック広告はブランディングにも活用すべき
英マーケティング会社Brainlabsの戦略責任者Grace Kaye氏は、プログラマティックディスプレイ広告をパフォーマンスキャンペーンでのみ利用している企業に向け、視野を広げることを推奨する。
プログラマティック(データに基づき、プラットフォームを介して自動で行われる広告取引)は、コンバージョンだけでなくブランディング戦略においても優れた手法である。
従来、ブランド認知度向上の戦略については、テレビやラジオ、紙媒体などのマスメディアが利用されてきた。幅広いリーチが可能なマスメディアは、購買ファネルの上層部の認知や関心を得るのに有効な手段だからだ。
一方、プログラマティック広告は非常に高性能なターゲティングが可能なため、マスマディア以外の媒体に分類され、コンバージョンを向上させる手法として認知されてきた。
デジタル広告を用いたブランディングでは、PPC(クリック課金型)、SEO、ソーシャルメディアが主に活用される傾向がある。しかし、ブランディングと最適化において、プログラマティックディスプレイ広告がもたらすメリットを生かすためには、ダイレクトディスプレイ広告での戦略をプログラマティックに適用することが不可欠だ。
ターゲティングの改善
企業のブランド認知戦略では、ブランドメッセージを共有するための最大限のリーチを獲得するために、マスメディア広告を利用することが多い。
しかし、プログラマティックの強みを活かせば、非常に効果的なブランディングを実行できる。中小企業はターゲットを絞った戦略をとることにより予算を抑えることができ、最終的にはエンゲージメントやコンバージョンの見込みがあるオーディエンスにリーチすることが可能なのだ。
即導入可能なリアルタイム・ラーニング技術の採用
従来のマスメディア広告では、特にプログラマティックのような短いタイムスパンで有効なインサイト(消費者の心理、行動実態)を得ることが非常に難しかった。
しかし、ブランディングもしくはコンバージョンのどちらに注力しているかに関わらず、あらゆるマーケティング活動においてリアルタイムでオーディエンスインサイトを理解することは、今後の戦略の最適化と開発に有益である。古臭い情報に依存することなく、(リアルタイムで)オーディエンスを理解するために、より幅広いプログラマティックターゲティングを設定することが望ましいだろう。そうすることでインサイトを獲得し、将来のターゲティングアプローチに活かすことが可能だからだ。
ブランディングにも活用するための5つの主要な手法
ブランディングキャンペーンとプロスペクティング広告(潜在顧客を対象に配信する広告)を、次のレベルに引き上げる5つの主要な手法を以下に挙げる。
1. 個々の企業ごとに、適切なKPI(主要業績評価指標)を設定する。
最初のステップは、目標とすべき適切なKPI値を設定し、定量的な方法でこの向上に集中することだ。ブランディング戦略では曖昧なパフォーマンス指標を用いる傾向があるが、系統的アプローチを行うことが重要である。
リーチが重要であることは明白だが、はじめから追跡すべき主要な指標はCTR(クリック率)、ビューアビリティ、サイト訪問数である。GoogleのBrand Lift Surveysツール(YouTube に表示される短いオンライン アンケート)は、効果測定に非常に有効であるが、どの程度エンゲージメントを向上させ有効なオーディエンスにリーチできているかを把握するためには、適切な指標を手動で測定することで十分である(これにより、コストの削減も可能だ)。
2. トップダウンとボトムアップのオーディエンスアプローチに重点を置く。
プログラマティックは、オーディエンスのターゲティングややコンバージョン促進に最適なことは周知の通りだ。しかしブランディングにおいては、より積極的な手法を用いる必要がある。まず、トップダウンアプローチから始めることが望ましい。顧客やターゲットとするオーディエンス、消費者が訪問している競合他社サイトを考慮し、最もエンゲージメントが高いオーディエンスにターゲットを絞り込む方法だ。
次に、ボトムアップアプローチに移行する。最もエンゲージメントの高いオーディエンスをピックアップし、その周辺のセグメントに対し集中的に予算を投下する。ボトムアップアプローチによって、Brainlabs社のクライアントである保険会社のCTRは、業界平均を300%上回り、CPA(コンバージョン1件あたりにかかった費用)は、60%削減された。
3. 新しいターゲティング手法を活用する。
これは当たり前のことだが、繰り返し強調したい点は、どの企業も、急速に進化する広告技術の採用を最優先させるべきだということだ。新機能を試すことで実際にブランディングにプログラマティックを活用できる可能性を見出せるだろう。
DoubleClickのカスタムインテントオーディエンス機能(購買意欲の強いユーザー層に対して広告を使って効果的にアプローチするためのターゲティング機能)を使用すれば、キーワードターゲティング、URLターゲティング、アプリターゲティングを組み合わせ、精度の高いオーディエンスセグメントを構築することが可能だ。たとえば、自社のパフォーマンスが高いオーディエンスが頻繁に訪れる特定のサイト上で、キーワードを用いて、さらに具体的にターゲットを絞ることができるだろう。
4. クリエイティブ開発に投資する。
ブランディング活動に注力する際も、新しいクリエイティブをテストし、新規のサプライヤーとの関係を構築することに前向きであるべきである。「壊れていないのであれば、直す必要はない」という考え方から、従来の方法がうまく機能している場合はそのままの手法を継続してしまいがちである。しかし新しい広告技術を活用する場合と同様に、クリエイティブ開発は常に進行中のプロセスでなければならないのだ。
Brainlabs社が最近研究を進めている分野の1つは、ホームページテイクオーバー(サイト全体をジャックして行う広告キャンペーン)やスキン(サイト周りの余白をバナーで囲むように展開するディスプレイ広告)などの、インパクトが強く、ブランティングに非常に効果的なフォーマットである。数字がその効果を裏付けている。ComScoreの行った調査によると、分析対象企業の半数以上がクリエイティブのクオリティを高めることで売上を伸ばしたのだ。それは、とあるメディアプランのもたらす効果の4倍であった。
リブランド戦略においては、新しいブランド・アイデンティティにエンゲージするユーザー層を特定し、クリエイティブを試すことが極めて重要である。
Brainlabs社の保険会社のクライアントは、ブランド・アイデンティティとメッセージングを変更する際、多チャネルアプローチによってブランド認知を高める必要があった。そのクライアントは、キャンペーンで非常にパーソナライズしたクリエイティブをテスト。異なる業界のプロフェッショナルを描くクリエイティブで、様々なレベルのエンゲージメントが獲得できることがわかった。テストを行うことにより、理想的なオーディエンスに関する多くの情報が明らかになり、動画やソーシャルの戦略に有効な情報を得ることができたのだ。
5. クロスチャネルラーニングを最大限に活用する。
クロスチャネルという考え方はあらゆるマーケティング戦略に効果的であることは明白であるが、マスメディア以外でのブランディング(もしくはリブランディング)においては特に重要である。なぜならば、企業はブランドメッセージを伝えるために幅広くリーチすると同時に、オーディエンスの全体的な理解を深めていく必要があるからだ。
代理店がクライアントのクロスチャネルキャンペーンを実施する場合は、インサイトを共有し、取得した情報をプログラマティック広告戦略に反映させることが重要である。ソーシャル担当チームとのコラボレーションは、エンゲージメントの高いオーディエンスを対象に異なるフォーマットでテストを行い、クライアントにとってパフォーマンスが最も優れたオーディエンスを理解し獲得する上で非常に有益であった。
さらに、多くのデータが適切な人に適切なクリエイティブを提供する方法を導き出すために役立つ。プログラマティックキャンペーンを実施することにより、消費者のエンゲージメントが最も高まる時刻と曜日を知ることができ、ソーシャル戦略をさらに最適化するための情報を得ることもできるだろう。
さらに、プログラマティックによるブランディングは、従来のいくつかの広告チャネルよりはるかに低コストであるため、テストを行う場として非常に適している。たとえば、YouTubeでいくつかの広告を配信し、最もエンゲージメントが高かった広告をテレビで使用することもできるのだ。デジタルで獲得したデータをデジタル以外のチャネルに応用しているマーケターはほとんどおらず、これは重大な機会を損失していると言えよう。
※当記事は米国メディア「Marketing Land」の4/9公開の記事を翻訳・補足したものです。